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銀河連合日本 The Next Era  作者: 柗本保羽
本編
59/89

【第九章・奪還】第五八話 『大戦(中)』

 ナヨクァラグヤ・ヘイル・サーミッサ……彼女は一〇〇〇年前に生きた、同じ名前の本人の遺志であり、その具現化である。勿論この世界の日本では、有名なお伽噺の主人公のモデルであることが知られている。

 但し彼女は、その本人の『遺志』であってその本人自身かどうかは定かではない。

 その出自は、かの優秀な科学者でもあったナヨクァラグヤ帝が遺した、彼女の頭脳の中に張り巡らされた脳ニューロンネットワークのデータ化。その膨大な『寸分たがわぬ頭脳の中身』を100%データ複製したものに自我がやどり、かつてのナヨクァラグヤの遺志が自意識を持って復活した……とそういう事になっている。

 なので再誕したナヨクァラグヤ自身も『自分は写し身である』と称しているが、最近の研究では果たしてそうなのか? という疑問も出てきている。

 それは量子力学的な考え方、即ち量子論から見た量子の重ね合わせのような現象が、この場合発生しているのではないか? という疑問だ。というのも一〇〇〇年前に逝去したナヨクァラグヤは勿論本人であることは間違いないワケだが、この再誕したナヨクァラグヤも、人工的な並行同位体であり本人であるとして良いのではないか? という理論だ。この説は、日本の理論物理学者らから出てきた話である。

 現在でも脳のニューロンと自我意識は、量子力学的に関係があるのではないか? という『脳量子論』なる学説が登場しており、研究されている。

 実のところこのトーラルシステムが影響したニューロンデータの自我の発生という現象は、ティ連でも過去に例がない現象で、彼らにとっても未知の領域の話なのだ。ティ連でもその研究レベルは実のところ日本や地球の学者がやっている研究のレベルと大して変わらないのである。従ってその研究が進み、結果がどう出るかというのは、この時代のナヨクァラグヤ自身も大いに気にかけているところだが……まあとはいえ、そんな小難しいことを今更考えても詮無き事と、このナヨクァラグヤは、自らを『遊び人のナヨさん』などとおどけて、今はフェルの従姉妹の『ナヨ・ヘイル・カセリア』を名乗っている頼もしき人物である。


 そして、『マルセア・ハイドル』なる人物……この人物も豊かな感情と表現力を持っている美しき白毛褐色肌でエメラルド眼のゼスタール美人な女性政治家だ。

 そう、確かにそのように見える人物だが、この人物はナヨとは違い、所謂『自我』というものは持ち合わせていない。

 ゼスタールダンクコロニーの中央統括議長府に鎮座するトーラル型システムである、『マルセア・システム』。その自律型対人対話アバターにすぎないのが、このマルセア・ハイドルを名乗る人物である。

 だが、そのアバターの対人対話処理能力は、流石トーラルシステムといおうか、という代物で、柏木達がイゼイラで見た、かのフェルの両親を模したニューロンデータ再現機能の感情表現を反映したような、まるで感情をもつ人間のように振る舞い、対応するアバターであった。


『貴方は、只今分析しましたところ、有機生命体ではありませんね?』


 とダイレクトに問いかけてくるマルセア。初対面でいきなり分析結果である。それはナヨが相手だからだ。つまりマルセアの同類と判断したのだろう。

 システムがシステムにスキャンを掛けた。とすれば……


『そういう問いになるということは……ですね、ニーラや?』

『という事ですね、ナヨサマ』


 やはりシステムの疑似人格であると再確認するナヨとニーラ。だがその反応パターンが、システムアバターにしてはかなりのデータ量であると察したナヨは、このトーラルシステムの、前の持ち主であろうと思われる『ミニャール・メリテ・ミーヴィ』なる人物が、かなり使い込んでいたシステムなのだろうと思った。

 

『主は、今現在この星の民を守り導く存在です。例えトーラルのシステムであっても、主には敬意を表さねばなりませぬ。ですので、主の事を妾は「マルセア議長」と呼びましょう』

『感謝いたします』

『うむ、では自己紹介ですね……妾の名は……』と、ナヨさんは少し考えた後、『ナヨ・ヘイル・カセリアと申します。先の質問通り、確かに妾は、有機生命体ではありませぬ。一般的には『仮想生命体』やら、『データ生命体』などと呼ばれている存在です……そして、隣におるこの者の名は、我がティ連でもその有能な頭脳で名前が通っておる、ニーラ・ダーズ・メムル教授といいます。よろしく見知り置きをな』


 ナヨさん、ナヨクァラグヤの名を名乗らずに、今の気に入っている生活を反映して、ナヨさんの方の名を名乗った。で、ニーラ大先生は先輩創造主に、教授紹介されて嬉しかったり。


『データ生命体ですか……私のデータベースにはないカテゴリーの生命体です』


 と話すマルセア。

 スール・ゼスタール人はそうではないのか? となるが、彼らは無機的ではあるが、データではない。では何か? その存在を問われれば、それは『エネルギー』なのであろう。そのあたりは別個に扱わないといけない。


『妾も元をといえば、そちと同じく、元はトーラルシステムに接続された、ニューロンデータであった。だが……何が原因かは今もって解明されてはおらぬが、妾はそのニューロンデータが自我を持った故人の遺志として、再誕した存在なのです。まあ言ってみれば「ユーレイ」みたいなものですか、オホホ』


 とおどけて話すが、残念なことにマルセアには幽霊がなにかわかろうはずがないし、ニーラタンも、イマイチそっち方面には疎い……残念ながらナヨさんのジョークは空振りである。


『オ、オホン……妾の言葉の意味、そちはわかりますか?』

『貴方の言う「ユーレイ」の存在は、この星の文化に準拠する、宗教的超自然現象に由来する存在に似た、非科学的な精神発現形態の比喩表現であることは理解いたしました。ですが、トーラルに記録された有機生命体の脳ニューロンネットワークデータが、知的生命体のような情緒的自我を形成するという現象は、私も聞いた事がございません。どのようなものか情報を提供していただきたい件ではあります』


 頷くナヨとニーラ。かなり高性能なトーラルシステムであると益々感じ入る。

 で、次に切り出すはニーラ。


『では、もう先に訪れた訪問団の方からの要望でお聞きになってるとおもいますけどぉ、お話のあったプロテクトがかかっているという、貴方自身にも解除が困難な、貴方のデータバンクに格納されているデータの解析とかぁ、貴方の元々のマスターであった、そのケラー・ミニャールのご遺体から、脳のニューロンデータを取らせていただく件なんかをよろしくご許可して欲しいのですけどぉ、どうですかぁ?』


 ニーラの問いに、マルセアも、委細承知といたっところで、


『はい、わかりました。お約束どおり許可いたします。但し現在は有事下にありますので、その範囲を超えないようにお願いいたします』


 そこはニーラ大先生も合点承知である。


『それとマルセア議長。後ほどこのコロニーで共闘しておる我々の同胞を激励してやりたいのですが、よろしいか?』

『畏まりました、ナヨ議会進行長閣下。後ほど軍の者に案内させましょう』

『うむ、よろしくお願いしますね』


 そういうとナヨとニーラは互いに頷き合って、早速作業にとりかかる。

 マルセアも此度は自らのトーラルシステムの内部構造をニーラ達に晒す事になる。

 本来なら国家安全保障の点から見ても、たとえ同盟軍が信用できるとはいえ、本来こんなことをするものではないのだろうが、マルセア、いや、マルセア・システムはいとも安易にこういった判断を行った。

 自我や自意識がないトーラルシステムのアバターとはいえ、自律型の超高度な人工知能システムではある。

 彼女のプログラムに、ナヨやニーラを関わらせることで得ることができる『何か』でもあるのだろうか……?


    *    *


 大気圏内、つまり居住可能惑星内での大型ディルフィルドゲートを使った、別宇宙との接続による次元突破転移。しかも目標地点の海上と海上を繋ぐという、ティ連においても、何万年もという誇るべき彼らの文明時間の中において、実のところ初めて行うディルフィルド転移方法であるわけだが、先に放ったハワイ沖からのテスト艦である海上自衛隊所属輸送艦『おおすみ』の転移成功の報を受けて、現在地球ではハワイ沖に設置されたディルフィルドゲートより続々とゲートに進入、出撃していく国際連邦艦隊群の姿がある。


 さて、ティ連では数々の転移技術を、それはまるで地球人がエスカレーターやエレベーター、はては新幹線に乗るかのごとく、ごく普通に普段から使用している。

 軍や探査艦など公共機関が使う代表的なものとしては、『任意転送装置』がある。どこからでもバイタルデータを追うことができればキャッチアンドリリースが可能な照射型転送機能だ。

 そして個人所有のものでは、プリルやフェルに多川家が頻繁によく使用する簡易転送装置。つまり転送機と転送機の間を転移させることができるタイプのものがある。

 実のところ、この日常で使う転送技術と、ディルフィルドジャンプの技術は、その使用する技術からして同じであり、転送装置はディルフィルドジャンプと同じことを小規模でやっているだけの話なのである。

 艦内間転送や惑星内移動用転送などは、その転送速度があまりにも一瞬である。

 亜空間回廊をくぐってやってきた、という意識感覚がないほどに一瞬で場所を移動する。

 転送するその瞬間に、人体に悪影響がないようにシールドを照射されながら、超超超短距離ジャンプをしているのが、転送装置の理屈である。従って、フェルやシエ達が個人所有している簡易転送装置は、あれはあれでトンデモないパワーソースを扱えるえげつないデバイスなのである。

 それぐらいにティ連では、このディルフィルドジャンプには相当の自信を持っている。なので、この海上転送ネットワークが成功した場合、ハワイにも臨時の同盟軍基地を設営し、事実上としてこのゼスタール諸島とハワイ沖を一体化させてしまおうという作戦で、この計画は進んでいる。

 そうすることで、例えばグロウム帝国戦や、サルカス戦などでやっていた宇宙空間から大気圏突入しての空挺作戦で敵の領内に侵攻するというやり方よりも、大きな敵中ど真ん中の大舞台に大戦力を直接送り込めるこの作戦のほうが、惑星内での作戦展開が優位に行えると、同盟軍は判断したわけである。


 ……ということで、海上自衛隊輸送艦『おおすみ』のテストジャンプで顕現した時から三日後である。

 サルカス戦、グロウム戦からの一連の出来事で、ヂラールには正体不明の情報共有機能があることと、それによるトップダウンの指令伝達方式で、一応戦略、戦術的な思考で何らかの作戦のようなものを行える事がわかったティ連同盟軍は、この惑星ゼスタールの制圧を可及的速やかに行えるよう、かの海上艦艇群をこのゼスタールへ向けて出撃させた。


「……つまり、あの軌道上であぐらをかいているマスター・ヂラールどもの裏をかいて、この惑星ゼスタールの海上を、我々の軍で埋め尽くしてやろうと、そういうことですな。いやはや痛快ですパウル提督」


 特危の大見がパウルの座乗艦『人型機動特重護衛艦やまと』のブリッジへお邪魔して、そんな話なんぞ。


『そそ。ハルマの地域国家の海上艦艇って、空を飛べないだけで武装は結構強力ってのも私達は認識しています。粒子兵器や重力子兵器なんかはないけど、化学反応型兵器の威力や、質量兵器の威力はむしろ生体兵器のあの連中を駆逐するには良い武器かもしれないからね……あ、ジュンヤ、ありがと』


 高雄副長がトレイにマグカップ三つもってやってくる。彼ご自慢のコーヒーを淹れて、パウルや大見にふるまう。

 大見も匂いをひとかぎして、マグカップをすする。


「んー、うまいですな、高雄さん。これは海自仕込みですか?」

「はは、まあそんなところですか」

『ジュンヤの淹れたこーひーに、私はだまされたみたいなもんだもんね~。ズズ……』

「ああもう、艦長、あまりこういうところでですな」


 自分達の関係をネタにジョークとは、パウルの春も本物かと思わず笑ってしまう大見。この二人の馴れ初めも、そのうち部隊内の間者どもがあばいて噂で流すのだろう。ま、そのあたりの情報は、そのうち寝てても耳に入ると余計な詮索話はしない大見。高雄の淹れたコーヒーの味と香りを楽しむ。


 すると、高雄のPVMCGに連絡が入る。『フォルフォル』制御部隊からのようだ。


「……わかった。では受け入れ体制を万全に頼むぞ。私も後でそちらへ行く……パウル艦長、国際連邦軍と、海上自衛隊の艦隊が、ディルフィルドアウトするようです」

『わかったわ、予定通りね。よーし、んじゃそのディルフィルドアウトの様子を見学しますか!』


 とパウル達三人はやまとの指揮管制ブリッジの前方大型モニターの方へ行くと、大型モニターが壁ごと上へスライドして、正味の大きな『窓』へと変貌する。

 勿論、これだけの戦闘艦の『窓』ともいえるモノであるからして、その素材は『透明化装甲』と呼ばれる種類の金属素材でできたものである。

 全高三〇〇メートルから見下ろす景色はなかなかのもので、丁度諸島右手の深い深度の場所に、ゲート艦『フォルフォル』が設置されている。

 そのフォルフォルが次元境界面を形成して、海洋からゲートへ侵入しようとする海水をシールドでせき止めている状況になった!


 ……しばし待つ……すると境界面から横一列に複数のゲートアウト現象が発生する。

 宇宙空間では、澄み切った湖面に岩をブチ込むようなイメージの画でディルフィルドアウトしてくる航宙艦艇達であるが、ここは大気圏内である。

 水蒸気爆発の如く大きな轟音が鳴り響き、水しぶきとも水蒸気の塊ともいえるモノが衝撃波の如く海面を走ると……


 米国海軍『USS BB-61A4 アイオワA4型』が顕現した!


 更に続くは、原子力空母ロナルド・レーガンと、原子力空母ジョージ・H・W・ブッシュ。

 戦艦と空母計三隻が堂々と顕現したのであった。

 ヒリュウ甲板では、その自国軍艦の勇姿に気勢を上げるUSSTCの特殊部隊兵士達。

 しかも彼らを興奮させているのは、その『アイオワA4型』という戦艦だ。

 見た目はかの勇名を馳せた戦艦アイオワなのだが、砲の全て、即ち前部三連装砲塔二基と、後部一基が巨大なAGS三連装レールガンに変更されている代物である。

 原子力空母の大統領閣下二隻は、基本特に改造は受けていないが、艦載機に『FAHM-50サラマンダー 機動多目的戦闘機』を多数搭載している。

 その三隻を皮切りに、続々となだれ込むように惑星ゼスタール海上へ地球のハワイから到達する艦艇達。

 米軍駆逐艦や強襲揚陸艦、イージス艦、ロシアのキーロフ級二隻に空母、戦略原子力潜水艦群と、とめどなく水蒸気をもうもうと立ち上げながら次々と到来する海上艦艇に、冷静に眺めていたパウルもいつの間にか目をむいて、海上艦艇で埋め尽くされていくその洋上を眺め見る。

 でもって先程から高雄のPVMCGもコールが鳴りっぱなしだ。


「ああ、わかったわかった。すぐ行く……パウル艦長?」


 と声かけるが、パウルはその海上艦艇のリムパックも負けそうな状態になった様子に釘付け状態で……


「パウル艦長、……おいおい、パウルって」と、パウルの腰のあたりを人差し指でつつくと、

『え!? あ、な、なになに?』

「ちょっちこのままだと交通渋滞だ……俺、フォルフォルに行って段取りつけてくるよ」

『あ、そ、そうね、お願いジュンヤ』


 そういうと高雄は、


「すみません大見さん、私そういうことで、ちょっと行ってきます」

「そりゃご苦労さまですな。頑張ってください」


 とダッシュしてブリッジを出ていく高雄を見送る大見。

 だが、その忙しさも理解できるわけで、この一時間半ほどで、ゼスタールの諸島域が一気に軍港化していくわけなので、この大気圏内ディルフィルドジャンプ戦法は成功かな? とも思う大見であった。

 続々とゲートから雪崩込んで来る地球の海上艦艇。ロシアの次はアジア諸国に、その次はEU。

 そして丁度今、殿を努めていた海上自衛隊の護衛艦群が、艦隊旗艦の多目的母艦を称する『航空母艦いずも』を中核に、そのいずもより巨大な、臨時機動兵器母艦『あかぎ』を従えてやってきた。

 後に続くイージス艦や、通常型護衛艦に、潜水艦群……


 これで一応打ち止めである。

 

 見ればゼスタールの海を埋め尽くすような地球、国際連邦軍の海上艦艇群。


『これは……想像以上に荘厳ね……』

「ですな、しかもあの艦艇群と行動を共にする、ヒリュウにティ連の機動艦艇、そしてこの艦や、あそこの艦みたいな『人型艦艇』ときますからな……どこの資本の映画撮影ですかね? パウル艦長」


 と肩をすくめて笑う大見に、よくよく考えたら前にどっかで見たような映画的な情景に思わず笑ってしまうパウル。


 さて……惑星上の準備は整った。


    *    *


 さて、場所は変わって火星宙域の『ティ連防衛総省軍特危自衛隊太陽系方面軍火星司令部』のマーズ・アルケステーション。

 にわかに慌ただしくなってきた火星基地。地球から送り込んだ国際連邦軍と海上自衛隊が、惑星ゼスタールへの到着を確認したのとほぼ同時に、惑星ゼスタール軌道上のヂラール群体の動きも大きく、目立つようになってきた。

 つまり、彼奴らも国際連邦軍艦隊の、惑星到達を認識したということだろう。

 パウル達ゼスタール地上作戦軍は、この清潔な海のある諸島群でまだ会敵の情報はないため、恐らく軌道上からヂラールの『偵察衛星』のような役割を担う機能か個体をもってして、現在のパウル達がいる場所での大規模な活動に、ヂラールなりに慌てたのだろうと推察できた。


『ジェルダー・ゼルエ!』

 

 惑星ゼスタールの対探知偽装をかけた惑星監視網の大きな反応に、監視担当の兵が少々焦りの声色でゼルエを呼ぶ。


『なんだ!』

『惑星ゼスタールに大規模な動きが見えました。軌道上のコロニー型各々から、かなりの規模の降下部隊と思しき群体が、惑星に降下を開始。一部は地上のヂラール前線コロニーに集結しようとしているようです!』


 その言葉を聞いたゼルエは、


『バカのヂラールというのとは、かなり違う動きになってきましたな、カシワギの旦那』

「ですね……やはりマスターヂラールが近くにいて、前線部隊を統括できる距離範囲にいる連中は、きちんと考えて攻撃してくる個体……と考えたほうが良さそうですね」

『ですな。ここに来て、こうまでの大規模なヂラールどもの動きを観察していると、やはり星や文明を滅ぼせるだけのポテンシャルのある連中だと実感させられますな』

「ただ、ヂラールが我々の攻撃手段や、軍事規模などを、もし以前の戦闘から学んでいるとなれば、さらに厄介な状況になる可能性があります。実際先のグロウム帝国戦の時でも、ヂラールがダイソン・スフィアシステムの管理施設と同化した状況や、グロウムに着床してしまったコロニーの抵抗状況など、サルカスやイルナットでの戦いと比較して我々の戦力に対し、随分対応できていたような感じがしますし……その感じから言うと……」

『なるほど……』


 腕を組むゼルエ。言われてみれば確かにそうである。戦力となるヂラール種の存在も、いろんな種類が会敵する度に増え、この宇宙の防人として時空間を見張ってくれていたスール・ゼスタール人すらも会敵した経験がないヂラール種も出てきている。

 敵は宇宙怪獣というわけではない。色々と謎が多い存在ではあるが、どこかの誰かが創造した人工物、つまり『兵器』だと言う事ははっきりしている。つまり相応にそういった戦況や戦術を共用する術も持っていて普通と考えるべきモノであるのだ。


『ただな旦那、そうなると事はヂラールだけの話じゃ済まなくなる。連中が兵器だと定義すれば、使役する主権があって然るべきだ。その大元を叩かないことにはどうにもならんぜ。そこがウチュウカイジュウってのと違うところじゃないかい?』

「まあそうなのですがねぇ……」


 しばし話の流れが止まってしまう。その間を区切りに、ゼルエは次の攻略作戦の話に流れを変える。


『でよ旦那、あの惑星ゼスタールに陣取ってるヂラールの軌道都市みたいな巣窟だがよ、本部から「ディルフィルド・ゲート砲の使用はマズい」って回答が来てるぜ』

「ああ、回答来ましたか……やっぱりな。そう言ってくると思ってましたが……」

『まあそこんところは俺も同意だ。アレはちょっと威力が強すぎるわ』


 つまり、サルカス戦ばりにこのヂラール軌道巣窟をディルフィルドゲート砲で吹っ飛ばしたら、その亜空間波動の影響が惑星ゼスタールにも及んでしまい、下手すれば未曾有の空間災害が発生して、大被害をもたらしてしまう可能性があるということである。

 そんな事になったら元も子もないので、論外だ。


「スール・ゼスさんのドリル戦艦を大量に突っ込ませてゼル端子で機能停止させる方法は?」

『アルド・レムラーの親爺さんが、「厳しい」ってよ』

「数ですか?」

『ああ、グロウム戦は、あのコロニー鹵獲が目的だったからあの数で済んで、更に内部でマスター・ヂラールを拘束する作戦に出たからなんとかなったが、アレと同じ事を今度の軌道巣窟でやるとなったらな。まあ普通に考えて数的に無理がある』

「となれば……私の考えたあの方法しかないですか……」

『あの方法も俺はどうかと思うぜぇ旦那ぁ……まあ前々から旦那の突拍子もない作戦には色々付き合わされてきたけど……』

「でも、本部のメイントーラルシステムさんは、一番可能性が高い作戦って言ってくれてるんでしょ?」

『まあそうだけどよぅ……前例がさぁ……まあ初めての事に前例なんてないけどよぅ、比較参考になるもんもねーし、もちょっと考えようや旦那』

「あまり時間もなさそうですよ、今のヂラールの動き見たら……とにかく地上を安定した勢力圏に置いて、軌道上のアレに対して挟撃できる体制を早く整えないと」


 頷くゼルエ。

 で、また柏木先生が突拍子もないこと言ってるみたいで、ゼルエや本部もどうなるか思案中と言ったところみたいである。

 柏木の突拍子もないアイディアは、齢四〇を越えてもまだまだ健在のようだ。ま、今に始まった話ではないが……


    *    *


『指定ポイントに到着。シビア、偽装機能展開を確認せよ』

『シビア了解。対探知偽装展開。光学迷彩機能も併せて展開……展開完了。これで敵性体ゼ……いや、ヂラールの探知能力にはかからない状況になった』

『ネメア了解。では警戒しつつ微速でこの方向へ前進する……ツキオカから指示のあった偵察目標は、この場所だったな』


 対探知偽装を展開し、単機で敵の勢力圏に着陸するシビアとネメアが駆る、スール・ゼスタール製機動兵器、『ギムス・カルバレータ』

 この機動兵器には、ネメアとシビアが搭乗しているが、コクピットに座って操縦桿を握っているわけではない。仮想生命体であるシビアにネメアのコアをこの兵器へ同化させているわけで、今現在の彼女ら二人の『体』が、この兵器というわけである。

 なので、『操縦する』兵器よりも生物的かつ、なめらかに動き回る事ができるギムス・カルバレータ。特危では略称で『ギムス兵器』と呼んでいる。


 全高は一八メートル程で比較的大きいが、ギムス兵器は腹這いの匍匐状態になって、山岳の木々をワシャワシャと倒しながら背を低くしてとある場所へ視線をやり、覗きこむ。

 対探知偽装をかけているので、歪な形に大地の木々がへし折られ、何かが這ったような跡といった感じになっている。

 小高い丘の稜線から顔を出して覗きこむギムス。客観的に見ると、モヤッとした透明の物体が丘から浮き出るような感じに見える……


『敵索敵型生体兵器を確認……ふむ、本当にこちら側には気づかないようだ。このティ連の偽装技術は極めて評価できる』


 とネメアがこの機能を誉めると、


『かつての我々は、この機能の再現が適わずに次元断層への退避で対抗していた。そのティ連が我々の戦法に対してかなり手こずっていたそうだが、興味深い話だ』


 とシビア。スールさん二人して昔話とは、かなりこのお二方も地球で生活するようになって、そういう情緒も戻ってきたのかなと。


『光学望遠機能拡大……認知できた。これは……』


 とネメアは拡大して目にした、情緒の薄いスール・ゼスタールでも不快感を催すその光景に眉を顰める。


『ゲル状有機物質によるヂラール環境エリアを確認……かなり毒性が高い。だが、この物質はヂラールにとって適正環境になる状況のようだ』


 とシビアもネメアの不快感を肯定する。

 ネメアはそれをゲル状物質と喩えたが、そのなんとも言えぬスライム状の物質が、森の木々を飲み込み、更に飲み込まれた木々には、血管ともなんともいえぬものが這うように覆っていき、ヂラールの安定した生息圏を形成していく。

 そこに巣とも言えるような有機建築物を何らかのヂラール個体が変態するかのような映像で、見る見る間に構築されていく……その結果が今、シビアやネメアの前に広がる風景であった。


『あのゲル状物質や、植生に寄生する物体の解析はできるか? シビア』

『サンプルが欲しいが、接近は……やめたほうがいいと判断する。ネメア提案の件は、やむを得ないが却下だ』

『ネメア了解。今後のサンプルとして入手したいところだが、仕方ないか』

『今はこの敵コロニーを無力化する方が先決だ。そろそろいいだろう、座標を送信するぞ』


    *    *


 ゼスタール海上ディルフィルドゲート『フォルフォル』から最初に出てきたのは、ゲート突破テストの任を負った海上自衛隊輸送艦『おおすみ』なのだが、地球での対外的なプロパガンダとしては、米国海軍の改装改良戦艦『アイオワA4型』という事になっている。

 姿カタチこそアイオワではあるが、火薬発射式40.6センチ主砲に変わって、一門の砲身自身が、深く二股に分かれた、その40センチクラスの『砲のようなもの』

 これこそがこの『A4』という番号を末尾につけた改良改修型アイオワの、ティ連型火砲にも負けない必殺兵装であった。


「ギムス・ガールズより座標入電! ゼスタール地図と照合!」

「着弾目標、3476 7658 7868 9865!」

「3476 7658 7868 9865 座標入力確認アイ!」

「ファイアリングキャパシター装填!」


 アイオワの化け物じみた大きさのレールガン砲塔内。

 その薬室にAGS砲弾が自動化された砲塔内で砲身に込められていく。だが、自動化したといっても、何も自動装填装置を付けたわけではない。サマルカの協力も得て、砲身に砲弾を装填する作業は、ワークドロイド、即ち、作業用ロボットがやっているのであった!

 このアイオワ型A4は、実のところかなり急造でデッチあげた戦艦で、航行用のパワーソースは、なんと元々の機関である重油を焚く蒸気タービンである。だが、そのタービンを回す重油をVMC―ゼル装置で仮想物質として随時作り出している。煙突から出るガスも、結果仮想物質なので、霧散しては無害になる。なかなかにエコである。

 そういった元々からあるものをそのままできる限り利用し、性能効率を上げるところにドロイドや、ゼル技術といったものを併せて使っているため、言い得て妙だが、『大戦中のアナログ技術をティ連技術が使用している』といった運用をしている。

 言い換えれば、『クラシックカーをアンドロイドが運転している自動運転自動車』のような感じで動かされている艦が、このアイオワである。

 地球の既存技術の無人効率化を図った前例になるものであった。

 だが、武装は現在の米国が、サマルカ技術や協定で供与されたゼスタール技術も活用して搭載した地球製としては最新鋭の兵器である。

 アイオワの砲システムをそのまま流用しているので、AGS砲弾装填後は、砲弾発射の装薬となる、レールガン砲弾発射用パワーソース、『ファイアリングキャパシター』というバカでかい電池のようなものをワークドロイドは砲身に装填する。


「発射用意よし!」

「艦長、ご命令を」

「よし、全砲AGS一斉発射開始しろ」

「アイサー! 全砲門一斉射開始! ファイア!」


 アイオワの巨大なレールガンが、砲身に青白い閃光を迸らせて、一斉に口径40センチもある化け物じみたAGS砲弾を九発一斉射する!

 かつての装薬式主砲であれば、トンキン湾あたりでここは轟音と砲煙に砲炎ぶちかまして主砲弾を発射といった絵面になるが、今この瞬間は、強力な電磁発射音に、その巨大な砲弾を瞬間初速で音速域の何倍といった速度でぶちかますイオン化された大気の閃光と空間の波紋が目に見えて、炸薬発射に負けじ劣らずの迫力で砲弾がすっ飛んでいく。しかもその弾道射程は一〇〇〇キロメートルに達する距離だ。

「よし! 発射成功! どんどんといくぞ! 全砲次弾装填!」「次弾装填開始! アイ!」


 アイオワはその飛躍的に威力を向上させた主砲を、空母他護衛の艦艇を従えて、ゆっくり移動しながら一人芝居よろしくバカスカとっぶっ放している。

  

 国際連邦軍の攻撃開始である。全海上艦艇は予定されたコースを各艦隊旗艦に同乗しているスール・ゼスタール人を航行水先案内人として、ヂラール殲滅のための内陸部進攻に有効な水路を突き進んでいく。

 この艦隊を空から守るは、パウル艦長の人型機動戦艦『やまと』に、宇宙空母ヒリュウ、そして、リアッサやシンシエコンビに、尾崎、垂井、小川の駆る、変な機動兵器部隊。

 ゆっくりではあるが、重厚に進撃する海上艦隊と、空中機動部隊で、空海一体の立体機動部隊を形成する……


    *    *


『ネメア、攻撃信号を受信。チキュウの海上艦艇が艦砲射撃を開始した。ガイド・レーザーの発振は可能か?』

『ヂラールはこちらの対探知機能を感知できないが、それ以外の波動や電磁波を探知可能だ。それで警戒態勢に入られた事例はいくつもある。アメリカ政体の砲弾は、上空の衛星ヴァルメが誘導するのではなかったのか? シビア』

『誘導用位置信号の発振を探知されたようだ。光学迷彩をかけていたが、ヂラールの不規則な警戒行動に遭い、偶然だが撃墜されたそうだ。現状では無誘導で散布界が大きくなり、効果的な着弾効果を得られない。まずは確実にあの建造物を破壊しなければ』

『理解した……ならば我々が誘導しなければ、どこに着弾するかわからない状況という事か……了解だシビア。着弾まで時間は?』

『850ケレス』

『ネメア了解』


 この2つのカウサ、即ちコアで動くギムス・カルバレータ兵器。ネメアが操縦で、シビアがコパイを担っている。

 シビアの制御が頭部のセンサーハッチをパカパカと開け、そのいくつものハッチからピーと放射状に赤外線レーザーを発振する。

 レーザーは、シビアが選んだヂラールの、この基地の如き巣窟の建造物に照射される。

 だが、案の定その赤外線に小型の警戒型ヂラールが反応し、巣から飛び出て、周囲を飛び回りはじめた。

 シビア達のギムス兵器は光学迷彩を展開中なので、今はギリースーツを着込んだ狙撃兵のような状態だ。

 距離は相当開いているし、もし仮に見つかったとしても撤退は容易である。なのでさほど心配する必要はないのだが、物事とはなかなか思った通りには進まないもので、数機の警戒ヂラールがギムス兵器の赤外線ガイドレーザーを探知したようだ。

 何匹もの仲間を呼び寄せ、数匹で編隊を組んで、レーザービーコンに沿ってネメア達の方角へ飛んで来るヂラール。

 

『こうなることは想定の範囲内だが、もうすぐ砲弾が着弾する。動けないぞ、シビア』


 ガイドレーザーは、通常、地球の兵器で地上部隊がレーザー誘導する時、レーザーを目標に照射し続けなければならない。そのレーザーの当たっている末端を目標として、誘導兵器は突っ込んでいくのだ。

 

『大丈夫だ。ぎりぎり間に合ったようだ……5・4・3・2・1・着弾』


 ヒュルルル……という独特の音はしばしの間を置き、その後、有機的な気色の悪いヂラール生産施設に何かが貫通したかと見えた刹那、大きな火柱を上げ、施設は肉塊となって吹き飛んだ。

 その画を皮切りに、アイオワの第一斉射九発分の砲弾が一斉に飛来して、レーザーを照射した建造物を確実に射抜き吹き飛ばす。

 間をおかず第二斉射分、第三斉射分が飛来。ネメアは吹きとんだ当初目標からレーザー発振を止めて、背部に装着していた粒子ライフル砲を取り出し構え、こっちに来る警戒型ヂラールをラピッドファイアモードで、全機撃ち落とした。

 と同時に、攻撃行為を行ったために光学迷彩が解除され、ギムス兵器はその姿をヂラールの前に単機で晒す。その存在を認識したリバイタ型や戦車型は、ギムスの方へ襲いかかろうとするが……


『ネメア、後退だ。予定していたよりも砲撃回数が多い。ガイド・ビーコンを外した今では、ここにも砲弾が飛来する可能性がある』

『ネメア了解。後退を開始する』


 その決断の刹那、第四斉射第五斉射分の砲弾が飛来して、めくらめっぽうに着弾しはじめる。

 ガイド・ビーコンがない現状では、一〇〇〇キロメートル離れた場所からの通常艦砲射撃となってしまっているので、砲弾着弾の散布界がめちゃくちゃ広くなっているのである。

 ただこれが幸いしてか、ネメア達のギムス兵器を追おうとしていたヂラールのリバイタ型や戦車型にAGS砲弾の着弾爆風が直撃! その数機は一瞬にして吹き飛んだのであった。


『こちらコードネーム、ギムス・ガールズのシビア・ルーラである。司令部に報告。指定位置のヂラール敵性体拠点壊滅を確認。コクサイレンポウ軍の艦砲射撃が効果的に命中。衛星ヴァルメ型ドローンの不慮の撃墜という事故はあったが、我々のサポートにより目標は達成した。だが現在砲撃の散布界から逃れた個体、ないしは砲撃以前に製造され、進撃を開始済の個体があり、それらは未だ健在である。残存勢力の掃討には砲撃は効果がない。機動兵力の展開を要請する。繰り返す……』


    *    *


「団長! シビア殿と、ネメア殿の機械巨人が、ヂラール巣窟の焼き討ちに成功したそうです!」

「だぁかぁらぁ~、機械巨人じゃなくて、キドーヘイキで、焼き討ちじゃなくて……なんだっけ?」

「は、ここは『壊滅』が適当かと。団長」

「そうそうそれ。もー、我がハイラ王国も自前でキドーヘイキの製造に成功したんだから、もっとハイカラにいかなきゃだめじゃん~」


 部下とそんなへんちくりんな会話をしているのは、我らがハイラ王国騎士団団長閣下の、メルフェリア・ヤーマ・カセリア殿下。今日は18式自動甲騎もパイラ号もおらずに、10人ほどの少数精鋭。

 いつもの着慣れた軽装鎧と違う本日のファッションは、皆なんとなく第二次世界大戦っぽいイメージのパイロットスーツ、というか雰囲気はまだそれよりも手縫い感覚で古そう……なのだが、生命維持装置関係の機材は最新であったりする。


 ここは国際連邦軍艦隊のロシア軍部隊、ロシア海軍所属の『アドミラル・クズネツォフ』型航空母艦上である。

 マルセア・システムの治めるゼスタールダンクコロニー近郊の海上に防衛戦を張るこの艦隊。

 この艦が旗艦となって、キーロフ級や他駆逐艦、巡洋艦を従えている。

 さて、この空母『アドミラル・クズネツォフ』にはロシアが誇る機動戦闘機『スホーイ・ラボチキンSuLa -01メテオール機動戦闘機』や、『スホーイSu-33』などが並べられている。

 だがその中に、変わったロボット型機動兵器の姿があった。

 なんとも有機的なデザインに、『時空と時空を貫いた時、俺は戦士』のようなデザインの、ハイラ王国独自設計で疑似サイボーグ型機動兵器『53型クヴァール式機動兵器』が駐機してあったのだ!

 バーン、みたいな。ってか、ロシア兵で手の空いている連中が、さっきから撫で回したりコクピット覗いてたり。

 まあメル達はあんまりそういうのは細かいこと言わない方なので、気にしていない。てか、部品が盗まれでもすりゃ警報が鳴り響くので、ロシア人もオイタはできない。


 今回、ハイラ王国工房のみなさんが必死の徹夜仕事で、当初五機しかなかったこのクヴァールは、なんとか一〇機まで調達することができた。

 機動兵器としては、旭龍や、ヴァズラーよりも小型で、コマンドトルーパーよりは大きい兵器である。

 今回、ロシア海軍機動部隊は、ネメア達が誘導して壊滅させた先のヂラールコロニーからすでに出撃した群体を殲滅する任務を担っている。

 そこに司令部母艦から出撃したメル達のクヴァール部隊も加勢して、ロシア軍艦隊の任務を手伝おうという次第である。


「あのー、団長……」

「なに? ザビー」


 部隊では常にメルの傍らにいる、年配のハイラ人男性。ベテラン騎士の副団長、ザビー・ゼルラ副団長である」


「団長、アレ……」


 指差す愛機となるクヴァールに、なんかロシア人が段々群れなしてる状態。なんか


『アニメだアニメ』


 とか騒いでいる奴もいる。


「あーもう! ちょっとほっといたら……カシワギのおっちゃんの言ったとおりだなぁ。あー、どいてどいて! だわいだわい!」

 

 メルはこの艦に来た時、親善腕相撲バトルで、ロシア兵のマッチョ三人ほど葬ったので、その実力はこの艦でも知れ渡っている。

 この華奢な体にどこからそんなパワーが出てくるのかと。

 ズンズン歩行で指揮棒振ってロシア人を追い払うメル。カシワギのおっちゃんは、メルに一体ロシア人をなんと教えたのだろうか?


「むははは!」と豪快に笑うザビー副団長。我が騎士団の頼りになる使徒団長を頼もしく眺める。

 すると、もうひとりの使徒……ってか、こっちはマジな使徒どころか神サンみたいなお方で、


『ザビー副団長、準備はどうですか?』

「これはナヨ使徒隊長殿」


 そう、ニコニコ顔でザビーに話しかけるは、ナヨ閣下であった。

 ナヨさん此度は軍事顧問という体裁で、メル達騎士団を含めた部隊の隊長という役を担っている。

 今この空母にいるのは騎士団の他に、クヴァールを調整する特危の整備班も乗っている。その中に一人、ヤル研からの出向者が一人いる。そんなスタッフ全員の隊長が此度のナヨさん。

 

「いつでも出撃できる状態であります。隊長殿」

『よろしい……メルフェリアや!』

「あ、ナヨおば……じゃなかった、おねーちゃん!」


 おば……のところで、若干目尻がヒクつくナヨであったが、まあ気にしない。

 ゼスタールダンクコロニーでの、マルセアのプロテクトデータ取得と、ニューロンデータ取得の準備を終えて、あとの作業はニーラ大先生に任せてこちらにやってきたナヨさん。

 

『今、司令部より作戦開始の報がありました。この艦の提督殿と今作戦行動について話し合ってきましたが、この艦の艦載機は、一気呵成にヂラールの侵攻群体を爆撃してしまおうという作戦に出るようです』


 ふむふむとナヨの話を聞く騎士団の衆。


『あの“めておる”という機体が重爆装で出撃し、“すほい”という機体が迎撃に上がってくる空戦型ヂラールを迎え撃つというのですが……』


 とナヨが言うと、メルが不思議そうな顔で、


「ちょっとまってよナヨねーちゃん。え? たしか「だわい」の軍って、あの“めておる”の方が、新型で強いキドーヘイキだったよね? なんでそれを空の戦いに使わないの? あの“すほい”は古い機械なんでしょ?」

『ふむ、メルフェリアはなかなか良いところをついてきますね。実は……』


 そう、問題はこの空母である。

 この『アドミラル・クズネツォフ』はスキージャンプ式の空母だ。中国が使っている『遼寧』などと同じ形態の空母である。従って通常型航空機では、フル爆装した機体の発艦が難しい。なので最新鋭のゼスタール技術のエンジンを積んだメテオールでなければ、フル爆装の出撃が厳しいのである。

 そういう事があって、本来なら、スホーイの方が攻撃機となってフル爆装し、メテオールが制空戦闘しなければならないわけなのに、こういう矛盾した状態にならざるをえなくなってくる。


『……ということでじゃな、我々はクヴァールを使って、“すほい”の部隊と共同で、制空権確保の任にあたる。クヴァールでの空対空戦闘はできるな、メルや』

「空対空戦闘って、空の格闘戦の事? もちろん! 騎士団でも一番訓練するやつだよ。大丈夫!」

『うむ……では、妾も此度は主らとともに戦闘に参加するかの。人手は多いほうがよいだろうて』

「え? でもナヨねーちゃん、きどうへいきもってないじゃないか。どうすんのさ」

『フフ、心配はいらぬよメル。妾は仮想生命ゆえ、できることは色々ありますからね』


 仮想生命の意味をメルやハイラ人はわかっているのかという事だが、まあその点は文明昇華教育も受けている騎士団員達である。ハイラの古い神話に出てくる幻獣や神々に例えて理解はさせている。なのでハイラ人もナヨの事は一目置いているのである。文明昇華教育を受けているとはいえ、ナヨのような存在はハイラ人から見ればオカルトの類の存在である。地球人的にいえばSCP扱いされてもおかしくない存在な訳であるからして。


 さて、そんな段取りでこのロシア艦隊も作戦開始の時間となる。

 スキージャンプ甲板からは、スホーイ33型戦闘機が制空権確保のために発艦していく。

 ただこれらの機体は、本体中央部に増槽のようなデザインの機械を装備している。

 これは特危から貸与された『シールド発生装置』である。あのダストールで多川がF-15Cに装着していたヤツの事象可変シールドのみのタイプの物だ。流石にHM装置付きは訓練も相当しなきゃならないので、オミットしていた。

 だが、ヂラール相手ではこの装備がないとかなり厳しい戦いが強いられる。多川も経験したヂラールの戦い方で、連中の機動性で接近戦に持ち込まれた場合、素の状態の戦闘機では一撃でクラッシュだからだ。

 そこのところは日本も色々と各国の兵力に気を遣っている。勿論日本だけでは各国分の貸与装備を賄えないので、ヤルバーン自治国にも手伝ってもらってはいる。


 スホーイSuー33が全機飛び立った後、フル爆装のメテオールが垂直離陸していく。

 ロシアはゼスタールから供与された熱変換機構を利用したイオンパルスエンジンを使用してメテオールを製造している。このエンジンも強力で、普通のジェットエンジンなら燃料効率の悪い垂直離陸も難なくこなし、フル爆装での離陸が可能だ。

 次々と垂直離陸し、加速をつけて発進していく。


 さて、お次はメル達ハイラ人がお手製で造った匠の機動兵器、クヴァールだ。

 特危スタッフとロシア兵の誘導で、斥力機関を青白く光らせて、まるでガーゴイルが羽ばたくように、蝙蝠の羽のような翼も広げて垂直離陸していく。

 

「ナヨねーちゃーん! 先に行くよー!」


 とコクピットハッチ開けて叫ぶはメル。


『あい! 妾もすぐに追いつきます!』


 でもナヨは機動兵器なんて持って来てないのに、どうするんだろと思うメル。まさか毎度の如くあの姿で、生身で戦う気では? なんて思ったりもする。


「ナヨさん! お待たせしました!」


 と声をかけるは、このナヨの部隊の技術スタッフであるヤル研技師。


『あい、例のものの調整はできましたか?』

「はい、間に合わせましたよ。これをどうぞ」


 頷いてナヨが左腕に装着してもらうは、ちょいと大きめのガントレット(手甲)のような道具。どうも防具ではないようだ。

 

「これを装着すれば、ヒリュウや、やまと等の艦からエネルギーをリンク転送させることができます。そして対戦した敵機動兵器の特徴などをメモリーに蓄積して、VMC機能を使って再現させることができます。ご注文通りの品ですよ。研究室のみんながナヨさんの話を聞いて、これ作るの張り切ってましたからね、ハハ」

『おうおう、ありがたや。かたじけありませぬな、技師殿』

「いえいえ。でもまさかナヨさんが、あのSFドラマのファンだったなんて、みんな驚いてましたよ」

『あの“どらま”からの発想ですよ、オホホ。妾なら可能かと思いましてね。でもあの大きさになるには少々妾独自のパワーソースでは時間が長続きしませんから』

 

 委細承知とそのデバイス装着と調整を完了させるヤル研技師。


「んじゃ、容姿のデザインは打ち合わせどりの奴で」

『あい、大義でした。では早速使わせてもらいますよ』


 そういうとナヨは、


『フッ、久しぶりに血が騒ぎますね』と、カメラ目線でナヨさんがファンの偉大なる魔人剣士のセリフを言ったりしながら、そのデバイスを作動させる。

 すると、ナヨの顔面にアーマー状のフェイスマスクとバイザーが形成され、なんだかナヨさんのお体が、ナヨさんの雰囲気に見合ったあの和装っぽいアーマー状の姿に、ガショガショと変形し、右手に愛刀小烏丸を持ち、さらに『フンッ!』と一つ呼吸をやると、ナヨの体全体が光って……


 なんと、全長17メートルぐらいにまで巨大化してしまったのだった!


 その姿を見たロシア兵どもは、マジで腰を抜かし、何事かと!

 巨大化したナヨの足元で、ガッツポーズするは、ヤル研技師と特危スタッフ。


 そう、先程のデバイスは言わずもがなの、ナヨの仮想生命素体の機能をフルに活かした、ナヨ自身が機動兵器化するための物であったのだ!

 当然、ナヨの頭部VMCユニットのエネルギーソースだけでは、こんな芸当はちと難しい。できてもそれこそ何分間の話になってしまうので、エネルギーを湯水のように使える艦のパワーを転送リンクで都合してもらいながら、このような形態で戦う事を、ナヨは考えたのであった。

 ナヨ自身も優秀な科学者である故、そういう発想もできるわけである……が、その発想の元がテレビネタというのが、発達過程文明を研究していた一〇〇〇年女帝のお考えであったりなかったり。


『ハッ!』と腰をかがめて勢い良く飛び立つ機動兵器化ナヨさんこと『アーマードナヨ』。

 制式名称なんてないので、そのうちこんな愛称で呼ばれるのだろう。


「へ?! ナヨねーちゃん! どっからそんなキドーヘイキもってきたの?!」


 後ろから追っかけてきたでっかいアーマー化したナヨさんに驚くメル。


『オホホ、妾の変化した姿ですよ、メルや」

「はあ?! な、何言ってんの? ナヨねーちゃん」


 事態が飲み込めないメル。まあその説明もかいつまんで道中おいおいと……


    *    *


 そして地上・海上部隊の宇宙に対する反撃の総仕上げとも言える作戦がまた別の場所で進行していた。

 ヂラールが海中にはいないというこの事実。

 これは同盟軍からすれば、本当にありがたい話で、海中から敵に対する攻撃への絶対的な先制権をこちらが得ることができるからである。

 

 軌道上には、イゼイラの軌道都市群の如き、蔓延るヂラールの生息域。

 その中枢部が集まる宙域、そう、ヂラールの使用するゲートや、中央コロニーのようなものが集まり、分厚い防衛体制で固められている箇所が、ちょうど惑星ゼスタールの北極上空あたりにある。

 その北極海へ向かうのは、国際連邦軍各国の、かつて国連常任理事国と言われた国家に所属する『戦略原子力潜水艦艦隊』

 護衛するは、対艦、対空装備を施した各国の攻撃型潜水艦に、海上自衛隊の誇る旭龍海自仕様のM型である。

 別名『花火隊』と愛称されているこの潜水艦隊は、この星に巣食うヂラールどもへの決定的な反抗の意思を打ち込む名刺がわりの一撃を穿つ艦隊となる。


 その後に柏木達火星司令部が考えた、航宙部隊の作戦。


 ゼスタール星を取り戻す戦いは、確実に進行していくのであった……



 


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― 新着の感想 ―
[一言] 例のタイマー残り一分になると迫り出してくるのかな?
[一言] いくらティ連の技術がすごくてレールガンのエネルギー重点は素早く出来ても砲塔冷却が間に合わなくて連射すえると砲身が持たないと思うんですが。
[良い点] 何時も楽しく読ませていただいています! [気になる点] この世界の護衛艦はティ連技術で弾数無制限ですか? [一言] これからも楽しみにしています!
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