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銀河連合日本 The Next Era  作者: 柗本保羽
本編
39/89

【第六章・ティ連日本国 -終-】 第三八話 『栄光の復活(上)』 

 ヂラールという生体兵器……

 あ、いや、そもそもの話なぜにヂラールを『兵器』というか、そこからの話なのだが、正直なところをいえばティ連がヂラールを『生体兵器』と認識しているのも、あるところ『体裁』のような部分もなきにしもあらずといった話なのである。

 まず、ヂラールをなぜにティ連は生体兵器としたか? という点でいえば、やはりかの『悠遠の王国』惑星サルカス・ハイラ王国における『ヂラール戦争』当時の『ふそう』クルーが初めて目撃したヂラールの生体や、ハイラ王国国王でフェルパパであるガイデル達の認識に基づくところが大きい。

 所謂ヂラール動物型には、艦艇型や機動兵器型に兵隊型といったような種類が、半知性体の性質を持って高度な自律性と、ある程度組織的に、また頻繁に独立性をもって戦えて、更には機能的なものとして、シールドやエネルギー兵器に広域破壊兵器などに近い武器兵器を使うことができる『性能』をもっているという判断から、ヂラールを『生体兵器』と認識したのである……このあたりの概念は、ゼスタールも大なり小なり似たようなものらしい。というよりも、あんなのと対峙したらだれでもそう思うに違いない。

 更に……サルカス戦当時のヂラールといえば、現在のティ連でいう『動物型ヂラール』という認識だった。

 惑星サルカスで起こった、あの時の戦争の敵発生地点である『惑星イルナット』とティ連から命名された、絶滅した惑星の住民が、何らかの経緯で捕獲したヂラールを改造して、彼らの戦争の道具として利用していた個体が、時の柏木達が戦った個体であった。従ってヂラールが『生体兵器』という概念で統一されてしまったという理由もここにある。 

 その後、この死の星となった惑星イルナットで新たに発見された個体。植物型ヂラール……この個体が、戦略兵器や拠点防衛兵器のような振る舞いをするために、益々ヂラールは『戦闘生物』という危険な存在であり一体だれがどこで造って好き放題にばらまいている『存在』なのか? という疑念が当然高まっていく。

 この点はまだ不明な点が多く……というか何もわかってない状況だが、この植物型ヂラールの登場により、動物型にはない『広域破壊性』をもったヂラールも登場したというワケで、所謂『兵器』の兵科用兵区分がそのまま動植物になったような異様な存在がヂラールという化物であるわけで、このような経緯があって、現在では『生体兵器』という存在として認識されているという経緯がある。


 で、この生体兵器の目的は何か? という事を、当然誰しもが考えて普通である。


 今とりあえず安定した政局にある『惑星サージャル大公領・グロウム星間帝国臨時政府』

 その摂政であるサージャル大公や、ファール首相の復興事業のお手伝いをしている日本国外務大臣兼副総理のフェルさん。彼女もそんなところを考えているワケだが……


 摂政サージャル大公は語る。


『普通に考えるならば、もしあのバルター(ヂラール)どもが、空想作品に出てくるような宇宙のバケモノであるならば、あそこまで宇宙艦艇のような能力を持ったものや、陸上兵器のような能力を持ったもの。機動兵器のような能力を持ったものなど、我々が知る兵器の用兵形態を模倣したような生物というのもおかしな話だと思う。しかも本来なら、我々とは種としての縁もゆかりもない異質の存在であるフェルフェリア殿達異星人の方々にも共通する、兵器用兵形態の有り様を模倣するような生物兵器を創造する存在とは……』


 その後の言葉に呼応するはフェル。


『私達と同じような知的生命体ト考えるのが妥当というワケでスね』

『左様』


 ファール首相も、


『当初は……そうですね、端的に言えば、宇宙規模の不気味な生物災害ではないかと私達も思ったものですが、この今に至るまでの戦いの中で私達もバルターを研究していくうちに、そのような考えを持つに至ったのです』


 フムフムと聴くフェル外務大臣。


『フェルフェリア殿はどう思われますか? 貴方がたは、ヂラールとの接触と研究に関しては、私達よりも進んでいるはずです。私達の研究結果などは、今のような敗戦濃厚時のにわか研究に近いものですから』


 と問うファールにフェルは、

 

『今この場所にゼスタール人サンがいれば、もっと正確なお話を聴けると思うのデスけど、まあゼスタール人サンのヂラールに関する研究資料も私達は提示してもらっていまスので、その概要も含めて、というお話で申し上げますと、私達もそのような結論にならざるを得ないとは思っております。ただ……』


 フェルが言うには、もしヂラールを造った大本の第三の存在がいるとするのならば、恐らくその存在はサルカス戦での惑星イルナット文明のようにヂラールに滅ぼされたか、もしくは制御できずに文明ごとどこかに逃げたか、そんなところではないかとフェルは話す。


『ふむ、なるほど……』とサージャルは頷き、『そのイルナット……ですか? その文明が滅んだ経緯が、それを証明していると?』

『ハイですね。イルナット文明の科学レベルは、分析するに皆様方グロウム帝国に近いものでした……超光速技術を持ち、医学レベルも恐らくほぼほぼ不治の病を克服し、物質変換の技術も初期技術ながら所有して、恒星エネルギーを利用する初期の技術も持つ。そんな世界が制御できないほどの生物兵器技術です。そう見るのが妥当と思うですよ』


 確かにその通りである。

 ヂラールの存在は、数の少ない状態であれば、そんなに脅威ではないのかもしれない。実際、ティ連の対探知偽装を見破る能力もないし、シールドを張るというトンデモ能力を生物として体得していても、あくまでそれは生物ゆえの耐久力の低さをリカバーしているものに過ぎないわけで無敵というほどのものでもない。

 ではそんなヂラールの何が怖いのかと言えば……『数』を展開させる速度と、供給する能力、即ち繁殖力である。それは月丘和輝とシビアがヂラールコロニーの中で垣間見た『アレ』である。


 ただフェルは、その【創造した側が、滅ぼされた論】や【文明ごと逃げた論】にはまだちょっと違和感があると語る。


『と仰いますと?』と問うサージャル。

『イエ、もし貴国や、我が連合でもソウですけど……そんな制御もできないような、もしくは制御できないと予想できるようなものを普通使おうと思いますデスか?』

『うーむ、それは難しい質問ですな……実際そのイルナットという文明は、使用したために滅んだのでしょう?』

『ハイです。そう考えられていますけど、現在いろいろ調べれば調べるほど、ちょっと単純にそれだけでは説明がつかないような研究結果も出て来ているのですよ』

『といいますと? できればお教えいただきたいですが……』


 核兵器でもそうだが、人類はその歴史において、たった二回しか『実戦』で使った事がない。それは言うに及ばず広島と長崎だ。

 兵器というものは、その威力を知るためには使ってみないとわからない。特に戦時中であれば新型兵器の使用は、そうそう躊躇されるものではない。で、使ってみて、核兵器の威力の凄まじさを人類は知った。なのでそれ以降実戦で使ったことがないわけである。その理由は、使ったら最後、地球の文明社会を滅ぼしかねないからである。『度が過ぎた兵器』だということだ。なので『使おうとは思わない』

 フェルが言うのはこの理屈である。普通ならヂラールのような制御が難しい生体兵器を使おうとは思わないと思考して普通と思うところがあるので、これを造った連中は、なんでまたこれを使おうと思ったのか、その点が甚だ疑問であったという話。

 これはフェルに限らず、ニーラもそう思っていると話していた。

 で、外務大臣ではなく、科学者としてのフェルが考える見解として答えるは……


『可能性としてのお話デスけど……もしかしたらあのヂラールを造った人々そのものが、ヂラールなのではないかト……』

『な! なんですって!?』


 フェルが話すその真意。これはニーラのような優秀な科学者ともいろいろ話し合った、ある種の可能性であるという。

 フェルの言葉の真意はどういうものなのか? ただ……今現在はそれどころではない状況がグロウム帝国本星で展開している。


 この話は状況が落ち着いたアトで、ということになるのだろう……


    *    *


「まさかこっちのヂラールコロニーがまだ稼働していたとはなっ!」


 特危自衛隊陸上科司令で、今作戦の陸上部隊指揮官でもある大見健。機動重護衛戦闘母艦『やましろ』のブリッジで、グロウム帝国が破壊したと思われたヂラールコロニーの残骸から這い出てきた残党とも思われるヂラール群の迎撃を受けていた。

 航空兵器型ヂラールに、あの薔薇の花のバケモノのような対空攻撃型植物ヂラール。そんな輩の攻撃を集中的に受けるやましろであった。

 というのも、これも意図した事で、現在、ティ連やグロウム軍の惑星強襲揚陸艦が降下している真っ最中である。

 惑星強襲揚陸艦という艦種は、この時狙われるのが一番マズイのだ……普通なら、制空権取って、敵の砲台や陣地潰してから揚陸部隊の上陸となるのだが、この戦いではそんな悠長なこと言ってられないわけで、まさしく第二次大戦中のノルマンディー上陸作戦ではないが、戦火の真っ只中に部隊を降ろさなければならない。

 特危やティ連軍も、グロウムが核兵器使って潰したと聞いていただけに、基本破壊されている状態とはいえ、ヂラールがここまでしぶといとは思っていなかった。つまり、ここまでの迎撃を受けるとは予想していなかったわけで、


「この星に残っているグロウム人達も、こりゃどうなっているかわかったものじゃないな」


 と大見は少々ネガティブな見解を漏らす。


『デも、希望は持っていないと……敵も稼働しているとはいえ、満身創痍です。これから逆転なんてことは考えられないでしょうし』


 と、ニヨッタが前向きな発言。大見も確かにそれはそうだと頷く。これがまだ健在のコロニーと戦う。即ち先のサージャル大公領戦での『ヂラールコロニー鹵獲作戦』みたいな戦闘をここでもやるというなら、こりゃ大変な話となるが、今回は基本、ヂラールの生き残りを潰すだけである。だが、ここでも厄介なのがその『数の多さ』だ……残党とはいえ、相手は生物兵器である。どうにもやはり、ファール達グロウム帝国の脱出艦隊がサージャル大公領に退避して、再度攻撃をかける今に至るその短期間で、ヂラールは生きている繁殖能力をフルに使って、ここまでの戦力を回復したと考えられた。

 特に植物型ヂラールは厄介だ。これの繁殖能力は、惑星イルナットで体験済である。そして更に予想できるのは……


「お呼びですか、一佐」『何か御用ですか? カーシェル』

「ああ、月丘君にプリル君。すまないな」

「いえ」

「で、ご両人。早速だが、現状は把握しているな?」

「はい。ま、簡潔に言えば……思ったより状況は悪いと言うヤツですね」

「はは、まあ端的に言えばそんなところだ。だが総合的にいえば現状我々が有利なのは間違いないが……」

「被害を大きくしたくないということですね」


 頷く大見。その被害とは、彼ら部隊も勿論だが、この惑星グロウムに残された人々も含めてという事である。


「で、この現状を見て……どう思う? ご両人は」

『あ、ハイ……恐らくですけどっ、あの「マスターヂラール」って中枢が生きてるんだと思いますっ!』

 とプリルが発言すると、

「ええ、プリちゃんに同意ですね。私はアイツと接触するまでの過程を垣間見ましたから。今でもあまり思い出したくないですよ」

 と、月丘も答える。

 まあ当然だろう。言ってみればヂラールコロニーがどういう機構で稼働しているのかを暴き出した張本人が、この月丘・プリルと、今は恒星方面で戦っているシビアだ。特に月丘とシビアは、その存在を突き止めた点で評価が高い……と、二人がそんな回答をすると、大見はもっともだという表情で、


「まあそう普通は答えるわな。で、そのとおりご両人の言うとおりだ……あのヂラールコロニーのマスターヂラールが生きている」


 と、大見が眦を真剣にして答えると、


「やっぱりそうですか……植物型のヂラールは、言ってみれば連中の活動領域を守る縄張り防衛兵器みたいなものですから、ヂラールコロニーが落ちた時点で、まあ多分その種子が拡散なりして二次被害が出るだろうなとは思っていましたから……」


 月丘の言葉の後にプリルも、


『ですねぇ。動物型の活動が残党みたいなものだとはいえ、妙に組織的だというのが気にかかっていましたが、まさかマスターヂラールが生きていたとは……』


 大見は、流石この二人は白木の部下で、総諜対エージェントだと思う。

 普通なら『えええ!? ますたーぢらーるがいきていたってえええ!』とでも言いそうなところを『そうですか、ふーん』みたいな感じで落ち着いたものだからだ。


「フッ、さすがというかなんというか……」と大見がポソっと漏らすと、

「え? なんですか一佐」

「ん? あ、いやいや……で、君達を呼んだのは、此度のこの情報をもたらした人々と接触をしてほしいという次第でね」

「えっ! ではこの情報って……」


 そう、この情報はどうやらこのグロウム帝国に残された人々が突き止めた情報なのだそうだ。

 やはり相当な数のグロウム人が、この本星に取り残され、地下対核都市ともいうべきシェルター型都市に避難していたらしい。つまり、サージャル大公領に脱出してきた人々は、予めグロウム帝国内で、最悪の存亡危機に遭遇した際に、種の存続を目的に本星からの脱出を義務付けられた、所謂『選ばれた人々』という人物達だったそうだ。

 まあ、こればかりはそういうものだろうと思う月丘にプリル。人権や差別云々以前の問題であるからして、納得するしかないと思う。勿論賛同はしたくないが……そこは大見も同じである。

 実際、現在の『連合日本国』も、イゼイラ本星のあるセタール恒星系に、日本国領の惑星を一つ所有している。そこに住む資格のある人々は、地球で『選ばれた人々』になる予定となっているわけで、そこのところは言ってみれば究極の安全保障を求められるわけで、『種の最悪の事態』を想定した場合、こういう選択をしなければならないのは必然なのである。

 とはいえ……


「できれば可能な限り可及的速やかに、グロウムの残存勢力と接触を図り、マスターヂラールを排除したい。で、我々の敵は現在このコロニー墜落地点周域のヂラールであり、その殲滅が目下の目的だ。更にかなりの数のグロウム市民の生存も確認できている」

「すみません一佐、ちょっと待ってください。その残存グロウム市民とのコンタクトはどうやって?」

「そこは簡単な話だ。グロウム国民の地下組織と、ネリナ艦隊が通信に成功したそうだ。今はかなりこの惑星の現状がわかってきている。まあレジスタンスではないが、地下都市単位で防衛組織を組んで、なんとか踏ん張っていたみたいだな。ネリナ提督達グロウム艦隊が増援連れて戻ってきてくれたと歓喜していたそうだ」


 なるほどと、ニコリ笑って頷く月丘にプリル。で、話をもとに戻して……


「でだ、あのマスターヂラールとかいう奴は、先の鹵獲作戦でも、メル君曰く、『アホのヂラール』の中で、唯一考える能力がある司令塔だ。なので、ヤツの裏をかきたい……我々特危にメルヴェン、ティ連機兵科空挺団、USSTCが正面から盛大に総攻撃をかける。恐らく敵も数に物を言わせて、対応してくるだろう」


 すると月丘も大見の話そうとする続きを先取りして、


「……そこで、そのグロウムの防衛隊と接触して、中枢のマスターヂラールを探し出して……まあ、『暗殺』しろってことですか? はは」

「はは、そういうことだ。マスターヂラールの居場所と経路は、そのグロウム防衛隊が既に割り出しているそうだ。彼らと接触すれば……な」


 そう大見がいうと、プリ子は、


「暗殺っていいますけどカーシェルぅ……あのマスターヂラールってデカイんですよぉ? 暗殺なんてもんじゃなくて、結局前みたいにトンデモなドンパチするしかないんじゃないかと思うんですけどっ?」

「ま、そこは、あの鹵獲作戦で、アレを抑え込んだ君達の腕前に期待するよ、マスターヂラールハンターのお二人にね」


 大見はまるで二人の活躍を、フェルの大好きなアノゲームみたいな感覚とノリで命令する。ま、でも敵中枢の場所がわかってるなら、その方法で中枢を潰して敵軍勢を混乱させ、各軍の仕事をやりやすくするのは確かに最良の策である。プリルとお互い顔を見合わせて頷き、大見の命令を受領する二人。早速仕事にとりかかる。

 ま、こういう点、この二人も毎度の事ながらプロである。そして総諜対のスタッフとしても最も得意とする作戦分野である。そこはおまかせといったところだ……


    *    *


『ヂラールコロニーシールド突破。現在のカルバレータ兵器損耗率一二パーセント。有効戦力は維持』


 さて、場所は変わって恒星ベイルラの軌道上に展開する、恒星エネルギー変換システム群。即ち『ダイソン・スフィアシステム群』

 勿論軌道上といっても、恒星、即ち地球でいう太陽の軌道上に展開する構造物群であるからして、恒星ベイルラからは相当な距離があるわけだが、現在の戦場は、そんな光り輝く恒星をバックに展開しているわけで、今この場所は、ティ連の艦隊でもなかなか経験した事のない戦域となっているのであった。


 そんな中、このダイソンスフィア群を制御するエネルギー中央配信システムに取り付き、一体化してしまっているヂラールコロニー。その必殺の一撃ともいうべき、かの粒子ビーム砲の斉射をくらってしまったダル艦隊……かなりの被害を艦隊自体は受けたのだが、その被害を受けた艦艇のほとんどが、ビーム攻撃から身を呈して庇ってくれたゼスタールの無人ドーラ母艦で、ティ連の有人艦艇はおかげで最小限の被害で済んでいた。

 シビアとネメアは、ゼスタール特有の性質。即ち彼女らは基本、ゼスタールの仮想生命体を維持するコアに憑依している量子的なエネルギー人格生命体であるからして、今ここでコアを破壊されても、そのスールと呼ばれる人格生命が、彼らの本来在るところである『ナーシャ・エンデ』に帰還するだけなので……所謂『特攻攻撃が可能だ』という話で、今現在、シビアとネメアを合体させた人型攻撃艦『ヤシャ級』と、配下の対艦ドーラに対人ドーラ、そしてゼスタールの人型機動兵器『ギムス・カルバレータ』の残存勢力を伴って、ダイソンスフィア化したヂラールコロニーの粒子ビーム発射口破壊のため、突撃を敢行している最中なのであった……


『ネメア・カルバレータ。本艦の制御に問題はないか?』

『現状特に問題はない。兵装システムも順調に稼働中。各ドーラ型、ギムス型カルバレータ兵器の自律攻撃システムにも問題はない……どうしたシビア・カルバレ……いやシビア』

『今、ナヨ・カルバレータから意識の同調があった。惑星グロウムの、残存敵性体01、ヂラールに総攻撃をかけたようだ』

『そうか。ではメル生体も……』

『肯定。先鋒を切っているという情報だ』

『シビアの共同体である、ツキオカ生体とプリ子生体は?』

『否定。本総攻撃には参加していない。別行動とある。詳細は不明』

『心配か?』

『否定はしない。だが、あの二人であれば支障はない事は論理的に予測できる』


 コクと頷くネメア。


『どちらにせよ、我々の部隊が、このヂラール中枢を確実に処理しなければ、メル生体達の努力も無駄に終わる。任務に集中せよ』

『了解』


 こんな会話、ティ連と敵対していた時のゼスタールであれば、まずなかった光景だ。それは彼女達もそう感じている。やはり情緒ある知的生命体との接触が、彼女達の在りし日に持っていた感情を揺り起こしているのであろうか?


 と、そんな話をしている最中にも、味方のドーラやギムス兵器はヤシャ級を護衛しなからマスターヂラール巨大粒子ビーム発射口に接近する。

 マスターヂラールのシールドを突破した時点で、基本ヂラール機動兵器の追撃は免れている。これはヂラールコロニーにとっても盲点で、こいつの強力な障壁シールドは、外界からの物理、エネルギー遮断力が強力であるだけに味方の進入も阻害してしまうという状況ができてしまう。

 これがティ連だけ相手なら強力な兵器として稼働するのだが、相手がゼスタールだというのが悪かった。

 ゼスタール技術は、この手のエネルギー兵器や防御力場の無効化はお手の物である。なんせナーシャ・エンデに居を構えていればそうもなる。ということで、


『ネメア・カルバ……いや、ネメア。先ほどのシールド突破処理に少し時間がかかった。タイムスケジュールに遅れが生じている』

『理解している。可能な限り迅速に処理を行う』


 粒子ビーム砲口部に最接近したヤシャ級。ここまでくればこちらのものである。


『シビア・カルバレータは攻撃態勢に入る。上部左右アーム、下部左右アーム部主砲発射体制。照準を合わせる』

『ネメア・カルバレータは攻撃態勢に入る。中部メインマニピュレータ型副砲発射体制』

『シビア・カルバレータ了解。翼部粒子爆弾搭載ドーラポッド準備完了。ネメア、ゼル端子の展開はどうするか? 回答せよ』

『今任務は敵の完全破壊が肝要である。敵を制御下に置くことはあまり意味がない。対機動兵器戦闘時の予備兵器として確保しておく』

『了解した』


 ネメアにシビアの駆るヤシャ級は攻撃準備完了。他のドーラギムス兵器は彼らに向かって発射されるヂラールコロニーのチマチマと鬱陶しい対機火器を潰しにかかっている。

 背後ではダル艦隊の援護攻撃で吹き飛ばされていくヂラール機動兵器。と、同時に同じく吹っ飛ぶヴァズラーやマージェン・ツァーレ(旭龍)。

 シールドに干渉して、ガードレールに突っ込んでしまったバイクのように、火花を散らしながら粉砕されていく……ヂラールはともかく、ティ連の有人兵器はそこらじゅうで脱出者が宇宙空間に浮き、残骸等を隠れ蓑にして身を潜めている。なぜならヂラールは脱出者にも容赦ないからだ。見つかったら最後、惨殺されるか食われるか。そんな運命となる。なので、ティ連艦隊も脱出者の転送回収に必死である。


『ネメア・カルバレータ。ヤシャ級全兵装攻撃準備完了。ディルフィルドゲート開放。転移攻撃開始』

『シビア・カルバレータ了解。ディルフィルド転移ゲート展開』


 冷静かつ淡々と作業をこなすシビアにネメア。作業をこなすといっても二人ともコアの状態で、このヤシャ級に憑依しているので、状況としては自分の肉体を動かす感覚。要は現在のヤシャ級は人格が二人分ある巨人のようなものである。

 アーム部の主砲にメインマニピュレータ状の副砲を目標へロックする。と同時に、直前でディルフィルドゲートが展開。無論そこに打ち込んで、かのときのヂラールフラワーの要領で、敵超大型粒子ビーム発射口を内部から破壊しようという次第。


『攻撃システム同期、全兵装発射』


 ネメアの淡々とした一声で、全兵装が一斉射された! 更にヤシャ級を護衛していたドーラとギムス兵器も粒子ビーム砲をゲートめがけて放つ。

 ヤシャ級翼状のハードポイントからは限界まで積み込んだドーラポッドが発射される。このドーラポッドには粒子爆弾が満載されている、所謂ミサイルである。

 

『ディルフィルドゲート収束。時間だネメア。後退せよ』

『了解』


 搭載されている全ての兵装を打ち尽くして後退するヤシャ級。護衛の機動兵器達もヤシャ級の挙動に合わせ、後ろに下がる。


 しばし後……

 

 ヂラールコロニー粒子ビーム発射口となる、巨大な水晶状の目玉にも見えるその部分に亀裂が入り、火柱が上がる。

 内部の大気が周囲に放出されているせいもあるのだろうか、部分的に炎上する様子も伺える。と同時に水晶状のそれも砕け散り、破片が宇宙空間に放出され、内部のダイソン・スフィアシステムの機材鋼材などといっしょに有機的な物体……肉片にもみえる何かが大量に散乱する。


 ……その様子を見るダル艦隊旗艦『ドルステル』ブリッジ。


『よっしゃぁぁ!!』


 ブリッジクルー全員が、遠方に見える巨大なダイソン・スフィア憑きヂラールコロニーの様を見て歓喜の声を上げる。


『ヨクヤッタ! ネメア、シビア。流石ダ!』


 ダルも久々のこの逆転劇を演じている戦況に興奮を隠しきれない。


『ヨシ、ヤシャ級オヨビ、仮想生命兵器群ハスグニソノ場ヲ退避シロ。戦線カラ離脱シテカマワン。アトハコチラデ対処デキル』


 あの鬱陶しい超大型ビーム兵器さえ封じてしまえば、あとはこちらのものだ……と言いたいところだが……


『ダル提督! ヂラールコロニーの領域シールドが消えています!』と、イゼイラ人センサー担当兵が報告。

『ナニ?』と、ダルは直感的にその言葉をマズイと感じる。


 同時にダルの直感を代弁するようにドルステル艦長が、


『提督。マズイゾ……ヂラールコロニーノシールドガ消エレバ、我々ガ押シテイタ、ヂラール機動兵器群ガ、後方ヘ下ガルコトガデキルヨウニナル……』


 するとどうなるか? 先程までは、ヂラールコロニーの展開していた強力なシールドが、幸いネメア達にとっても壁となって背後からの攻撃を遮断してくれていたわけである。が、ヤシャ級がビーム砲口部を吹き飛ばした瞬間、その強力なシールドが解けた。即ち、ネメア達は彼女達から見ればヂラール機動兵器型の大群を背にしてビームを無効化したが、これは言い換えれば戦闘継続がまだ可能なヂラールコロニー本体を正面に挟み撃ち状態になってしまっているのである。

 このシールドが解けた現象は、ヤシャ級の攻撃がヂラールコロニーの何かに反応して、連鎖的にシールドも解けてしまったという不運か、それともこのコロニーのマスターヂラールが意図的、いや、戦術的に解除して、この挟み撃ち状態を作り上げたのか? 正直そのどちらかはわからないが……


『提督。今ノ「ヤシャ級」ハ、先程ノ転移攻撃デ、戦闘継続デキルホドノパワーハ残ッテイマイ。アノ数ノ敵ニ襲イカカラレタラ即座ニ撃沈ダゾ!』


 悪い状況には、悪い状況が重なるもので……


『マスターヂラール内部から、三個中隊規模の敵増援発進を確認!』


 即ち、マスターヂラール内部で繁殖していたか、内部に残っていた敵が出てきたという事。これで完全にヤシャ級は逃げ場を失った!


『チッ! ヤシャ級を援護できる部隊はイナイノカ!?』


 とダルは問うと、


『落ち着いて欲しい。ダル生体』


 ネメアがVMCモニターを起ち上げて、通信をドルステルに入れてきた。でも今はヤシャ級自体がネメアににシビアなので、SOUND ONLYというやつである。


『ネメア合議体!』

『我々のことは心配いらない。もとよりこのような状況も想定の上で、我々は「トッコウ」を行った』


 すると、シビアも


『ネメアに肯定。我々はスールである。即ち現状このヤシャ級が破壊されても、我々のスールは、ナーシャ・エンデに帰還するだけである。再会には少々時間を必要とするが、我々は消滅するわけではない』


 とそんな会話をしている最中にも、


『ヂラール部隊、ヤシャ級及び、ドーラ兵器、ギムス兵器と交戦! ……圧倒的に不利です……』


 とブリッジクルーが報告する。

 実際、相当な攻撃を受けているのか、サウンドオンリーのVMCモニターにもノイズが走りだす。


『ネメア合議体、シビア合議体。オマエタチトモ、共ニココデ勝利ヲ喜ビアイタカッタガ……』

『ダル生体。戦争とは勝たねば意味がない。現在の状況は、勝つための一つの手段にすぎない』


 とネメアが言うと、シビアは、


『ダル生体の現在の心情は理解するが、悲観するような状況ではない。我々は一旦先んじて戦線を離脱する。あとの状況処理に期待する』 


 とこれまた淡々と話す。というか、もとよりネメアにシビアは、最悪こうなることはわかって、この特攻攻撃をやったわけであるからして、『そこまで残念がられても……』というトコロなのではあるが、客観的に、そうわかってはいてもヂラールになぶり殺しにされるヤシャ級をみてるのもこれなかなかつらいものがある。 

 更にはシビア達がナーシャ・エンデに戻っても、かの効率最優先の権化みたいなゼスタール人のことである。シビアにネメアが、また同じ任務に着けるとも限らないわけで、もしかしたら第一人格体が別のスールに入れ替わって、彼女達は一介のイチ合議体にすぎないような状態になることも考えられるわけである。そうなれば、次の再会もどうなるかわかったものではない……


 そんなところをシビアにネメアもわかっているようで、


『これで我々……いや、私のカウサを使用した任務が終了するかもしれない』


 ポツリと漏らすシビア……上部アームに下部アームの主砲を制御中。だが、右上部主砲が現在大破。


『メル生体に、任務終了の報告を伝えることができなかった……』

 

 残念という感覚を、八〇〇年ぶりに喚起するネメア……今、メインマニピュレータの左腕部を吹き飛ばされた。


『ツキオカ生体とプリ子生体の作戦結果も知りたかったが、現状ではそれも叶わない。やむをえないか』


 シビアも残念という感覚を喚起する……敵の粒子ビームが右脚部を吹き飛ばした。


『シビア、このままでは無駄にこの艦の武装を損耗するだけである。あのヂラールコロニーの中枢で、自爆処理することを提案する』

『提案を了承する。では、本艦縮退機関を臨界値に設定する。ネメアは残存パワーで、可能な限りの速度をもって、敵機動兵器型発進口へ侵入せよ』

『了解』


 ヤシャ級は、もう数が少なくなった残存するドーラ・ギムス兵器を自艦周囲に呼び寄せて盾とし、残ったパワーを振り絞って最大船速で、敵ヂラールコロニーに突っ込もうとする………………


 ……が!!


『ネメア、重力振反応確認!』


 いつも冷静なシビアの口調が少し強くなる。


『何? 転移反応だと!? この重力振パターンは……ディルフィルド転移反応! これは!』


 ネメアの口調も、それまで話したことがない感情的な叫びになる。すると!


 ヤシャ級をとりまいていたヂラールが、粒子ビームに、イオン化された物理攻撃、即ちレールガンを食らって吹き飛び、フェイザーやディスラプターの広域斉射を受け、瞬く間に消滅していく。

 その状況に『何だ!?』と思うシビアにネメア。

 すると、その攻撃の正体から通信が入った。


 ここにもしBGMが入るなら、猛禽類の名を関する宇宙艦艇のテーマを流したいところ。

 

『シビアさん、それにネメアさんでしたか? はやまっちゃダメですよ!』

『お前は誰か!』

『はいはい説明します! 私は特危自衛隊海上宙間科の香坂裕です!』

『コウサカユタカ……検索完了。トッキジエイタイ、航宙重護衛艦ふそう艦長』

『はいそうです……って、今は別の航宙巡洋艦副長代理にされてますけどね! はは』


 ヤシャ級の頭部をかすめる、地球生活の経験があるシビアも初めて見るデザインの艦。

 シビアにネメアの視界に入るは、大きな星条旗が一つあって、更に『LNIF』と書かれた文字の下に、英国、フランス、ドイツ、イタリア等のEU諸国に、カナダ、メキシコ、台湾、ニュージーランド、豪州などなど、そんな自由主義諸国の国旗がズラリと描かれ、更に大きく描かれるは、『サマルカ統一連帯群国』の連合旗。


 颯爽と現れるその航宙艦。艦体に刻まれるその名は、『米国USSTC管理、LNIF多国籍軍所属、航宙巡洋艦ニール・アームストロング』であった!


 というわけで、連絡を入れてきたのは、かの就航式からオブザーバーで、なんか副長みたいなことをやらされている香坂裕一佐。

 で、更に援軍としてやってきてくれたのはアームストロング級だけではなかった。

 アームストロング級の後を追いかけるように顕現するは、特危自衛隊航宙重護衛艦『ふそう』。

 更には、ガーグデーラ母艦一隻、正式名称『58号母艦』というそっけない名前だそうだが、まあそれ。

 で、その58号母艦を指揮する唯一のゼスタール人は……


『シビア・ルーラ合議体。ネメア・ハモル合議体。状況は共有している。現状の状況を構築した成果を極めて高く評価する』


 なんと、ゼスタール月面基地司令のゲルナー・バント合議体閣下であった。


『お前達の制御する人型攻撃艦を牽引、保護する。直ちに機関臨界を中止せよ』


 その言葉に、シビアとネメアもなんとなくホッとしたようなところ……ヤシャ級と一体化しているので、表情はわからないが、そんな気持ちで機関を停止させ、その艦体をゲルナーの58号母艦に委ねる。そりゃ、誰だって自爆なんてできればしたくはない。

 ヤシャ級を保護した58号ゲルナー艦は、即座に相当数の作業用ドーラを発艦させて破壊されたヤシャ級の欠損部分に取り付く。すると途端にドーラは仮想本体構成を変化させてヤシャ級の脚部やアーム部に変化していく。もちろん応急処置なのでその形容はガラクタがくっついたような不恰好なものだが、とりあえずはこれで作戦を継続できる。但し一部武装は使用不可だが。


『ゲルナー司令! 直ちに対艦ドーラの発艦をお願いします!』

『了解。大型“ドーラ”カルバレータ兵器、全機発艦。敵性体01機動兵器型を迎撃する』


 その言葉に呼応して、58号母艦から大量の対艦ドーラが次々と発艦。ちょうど今現在の敵から見て背後を取られたカタチになる戦況に対し、一気攻勢の迎撃をかける。

 もちろんゼスタール軍ばかりに働かせるわけではなく、航宙重護衛艦ふそうからも、数機ではあるが、旭光Ⅱ型を発艦させて戦況に合わせて対艦ドーラを制御指揮するリーダー機となる。


 さて、連合日本国の誇る『ふそう』に先んじて先頭を切るニール・アームストロング級航宙巡洋艦。

 相変わらず猛禽類のSFテーマソングをバックに奏でながら……


「多目的カタパルトに『トマホークⅡ』装填。急げ!」


 ニール・アームストロング艦長、ジェフリー・マーカス艦長が叫ぶ。

 多目的カタパルトとは、この艦の左右に大きく備わる機動兵器発着甲板に備え付けられた、カタパルトの事だ。

 

「焦るなよ! 冷静にな! VR訓練の通りにやればいい! あのコバヤシマルシチュエーションに比べればまだマシだ」

「トマホークⅡ、カタパルトに固定完了!」

「弾頭は!?」

「弾頭はW100核弾頭確認!」

「目標、前方ヂラール生命体開口部!」


 アームストロングブリッジに緊張が走る。なんせここにいるUSSTC隊員に、LNIF多国籍軍の隊員は、当たり前だが、こんな航宙間戦闘の実戦は初めてとなる。が、ヤルバーンや、OGH施設での実戦さながらのVR訓練は、時の『夢魔作戦』の如く決死の訓練というほどのものを死ぬほど受けてきているので、あとは実際にタマが当たったら本当に死ぬか死なないかの違いぐらいで、その対応は早い。


「よし発射っ!」


 マーカス艦長が叫ぶと、アームストロング級の両端発艦口のスタッフが無重力空間で体を固定させて、腕をL字状に振り、ステルス形状なデザインのUSSTC最新型多目的巡航ミサイル『トマホークⅡ』を打ち出す。

 ここは地球の施政権なんざ及ばない遥か彼方の宇宙空間だ。核兵器を使うにも、大統領の認証コードなんざ必要ない。USSTCには、こういった場合の核兵器使用の権限が現場指揮官に任されている。


 トマホークⅡの主要推進機関は、所謂連合日本以外の軍事力として製造された兵器なので、基本は化学ロケット推進だ。更には宇宙で使用される場合は、キネティック推進で変幻自在に方向転換が可能である。

 キネティック推進とはなんぞや? というと、要するに『白いチートな機動兵器』のアニメに登場する、脳波で操る誘導兵器に使用されている、あんな感じで動く推進方法である。現実の世界では、弾道弾迎撃ミサイルの推進方向制御に使われている技術である。

 で、このミサイル、大気圏内で使用される場合は、この推進機関がジェット推進になり、主翼をつけて飛ぶ、かのおなじみのトマホークミサイルみたいに飛翔する。


 推進剤を点火した二機のトマホークⅡは、軌道をキレイに描きながら、設定されたヂラールの機動兵器を放出する発艦口らしき場所へ突っ込んでいく。トーラルシステムほどではないが、ゼスタールから技術供与を受けた量子演算機の制御するトマホークⅡは、スポッという音が聞こえてきそうなほど正確に、目標地点へ命中する。

 

 しばし後、


 音なんぞは聞こえてこないが、ヂラールコロニーの内部で核弾頭が炸裂した!

 ヂラールコロニーの中には幾分の大気もあり、更にこやつは『生体兵器』である。相当な水分も有しているわけで、宇宙空間では高熱を一瞬だけ放つ線香花火の核兵器も、大気や水分といった膨張する媒体があれば、その破壊力はいつもの核兵器であるわけで……

 

 グロウムのダイソン・スフィア中央配信システムを乗っ取った形の、巨大にすぎるヂラールコロニーは、アームストロング級の放った核弾頭搭載巡航ミサイルの一撃二撃を受け、大爆発を起こし、肉片とも装甲板ともつかない物質をぶちまけて、体液のようなものを凍らせて大穴をあける。

 その瞬間、コロニー近辺に展開する大量のヂラール機動兵器型に艦艇型は、それまでの統率が取れた『バカ』ではないヂラールではなく、毎度のメルフェリア推薦のバカみたいなヂラールへと急激に変貌し、統率も何もあったものではない挙動で暴走し始める。


「な、なんだ? あのバケモノども、まるでメチャクチャになったじゃないか」


 トマホークⅡ命中に歓喜するブリッジ内。地球世界で初めて、核兵器が使用されて『喜ばれる』状況。グロウム帝国でも核兵器は決戦兵器として使用されてはいるが、なんだかんだでやはりこの兵器の威力はすさまじいものである。

 ティ連の決戦兵器と言えば、おなじみの『収縮系』の広域重力子系兵器だが、所謂『爆発モノ』でいえば、やはり熱核兵器は使う場所が最適ならば最強クラスといってもいいかもしれない。

 で、その核兵器の恐ろしさと言えば、爆発もさることながら、付随する『中性子線』所謂放射線である。これが生物には確実に致命的ダメージを与える要素であり、相手が生体兵器であるヂラールには効果テキメンなのである。実際、現在グロウム帝国で撃ち堕とされたもう一つのヂラールコロニーも、この放射線が効いて半壊状態にあるのである。

 つまり……


『やりましたね、ケラー。マーカス』


 アームストロングブリッジに入ってくる異星人さん。パチパチと手を叩いている。

 で、USSTCにLNIFで異星人といえば、


「どうも、ミス・セルカッツ。貴方の助言どおり、核弾頭付きのアレを搭載しておいて正解でした」

『ウフフ、チキュウでは色々と最初は言われていましたけど、宇宙空間戦闘ではこれでもまだまだ「通常兵器」の域をデません。トドメも考えて、というコトですよ』

「ですが、日本でこんなこと言ってたら、どえらいことになりますな」

『でもケラー・コウサカ、これが現実ですからネ』

「は、確かに」


 宇宙時代、そして宇宙戦争時代では、核兵器もこのレベルである。とすると、核兵器もかつての地球水準では、『時代を飛び越えた通常兵器』という事なのかもしれない……と考えると、これも地球人が『発達過程文明』の申し子故か、とも思えてしまう香坂。


 ニール・アームストロングの核弾頭攻撃は、打ち込んだ場所も幸いしたのか、確実に効果を上げていたようだ。

 全長二〇〇キロメートル級の、ダイソン・スフィアシステムを取り込んだ生体兵器である。このたった二発の核攻撃でも、こやつのシールドが効いている状態なら、まだまだ効果は薄いところだったかもしれない。実際グロウム帝国に今現在まだ稼働しているヂラールコロニーに打ち込まれた核兵器の数は、こんなものではない。で、まだ稼働状態である。なのでやはり敵の内部にぶち込めたのが幸いしたようだ。


『香坂艦長、マーカス艦長、ヂラールコロニーの状態が変化しているようです』


 随伴の重護衛艦ふそう艦長代理から連絡が入る。マーカスはVMCモニターを拡大モードにして、ヂラールコロニーを観察する。

 すると、それまでの生々しい容姿のこやつが、段々と白い色へ変化していくのが見えた。

 まるでサンゴ礁が死に絶えていく『白化現象』を定点観察でもして早送り映像にしているようだ。


「こ、これは……」


 マーカスが身を乗り出してその映像を凝視する。

 すると、艦隊司令のダルがアームストロングに通信を入れてきた。


『コチラ艦隊司令ノダルダ。先程ノヂレール弾頭兵器ノ攻撃、オ見事ダッタ』

「香坂大佐、この方は?」

「今回の作戦指揮官の一人である、ダストール人のダル提督ですよ、マーカス艦長」

「そうですか」


 とマーカスはダルに米国式の敬礼を姿勢正しく行う。艦内のブリッジクルーも同じく。

 ダルもダストール式敬礼で返す。で、香坂がマーカス艦長を紹介した。


「……ダル中将とも随分お久しぶりになります」

『アア、オマエモ元気ソウデナニヨリダ。アレハタシカ、イゼイラデノ防衛協議会以来ニナルカ」


 と、香坂とダルも、ダルが火星開拓をしていたころからの知り合いである。

 積もる話もあるが、現状の戦況を互いに確認して……


『……トイウコトデ、諸君ラノ放ッタアノ一撃デ、ナントモ彼奴ニトドメヲ刺セタヨウナノダ。アノ粒子ビーム兵器ヲ無効化シタ、ゼスタールノ二人ト、LNIFノ貴官ラニハ、後デ報イナケレバナランナ。ハハハ』


 すると香坂が念押しの確認をするように、


「ではダル提督、我々もゲルナー司令が、あの人型艦を操艦していた二人から情報を共有していたおかげで現状を把握でき、この戦場へ奇襲的に顕現できましたが……」


 そう、アームストロング級にふそう、そして58号母艦がこの場に突如としてディルフィルドアウトして顕現し、作戦に参加できたのは、シビアにネメア、そしてゲルナー司令らゼスタール人のおかげなのである。

 これは言わずもがな、彼らは個々のスールが体験する情報を、即座に100%共有できる。したがってゲルナーのアドバイスを受けた各艦が、ネメア達の窮地に駆けつけたという次第。


『ナルホド、流石ゼスタールダ。ゲルナー司令モ重畳ダッタ。感謝スル』


 すると、ゲルナーもVMCを立ち上げて、


『ダル生体の対応を評価する』


 と一言。そして、


『カーシェル・マーカス。コチラノ索敵部隊ガ、ヂラールコロニーノ機能停止ヲ再度確認シタ。現状、配下ノ艦艇型ヤ、機動兵器型ヂラールガ暴走シテイル状態ダ。体制ヲ組ミナオス。コチラヘ合流シテモライタイ』

「アイアイサー。よし全艦に通達。我々にとって幸先の良い形で初陣の勝利を手にすることができた。だがまだ残存する化物を掃討する任務が残っている。全員気を抜くなよ。訓練どおりにやればいい」


 ブリッジ諸氏、USSTCとLNIF軍隊員イェッサーと眦鋭くうなずく。

 で、香坂が、


「ダル提督。連絡はいっていると思いますが、あとの部隊は」

『ウム、了解している。ソチラニ関シテハ、ジェルダー・タガワニ任セル。コチラノ状況ガ片付キ次第、転進シヨウ』


 と、こちらの戦況をまずは沈静化させたダル艦隊。これであのダイソン・スフィアと一体化したヂラールコロニーの強烈な一撃を恐れずにすむ。即ちこの戦況は好転している状態である。

 あとは、グロウム帝国本星でまだ活動しているあのヂラールコロニーの処理だ。そちらの方は……


    *    *


 さて、場所は変わって惑星グロウム。こちらは先のダル艦隊のような真正面からのガチンコ勝負というよりは、敵にトドメを刺しに来たような状況である。

 そして最も重要な任務として、この星に残された人々を守るという任務もある。

 いかんせんファール達は、法で定められた使命とはいえ、この星の住民の多くを置き去りにしてしまった負い目もないわけではない。なのでこの星を見捨てたわけではない意思を示す必要もある。

 従ってその戦闘もプロパガンダ的なものにならざるを得ないところはあるにせよ、それでも相手はあのヂラールコロニーに、それを統括するマスターヂラールである。従ってここは『本気の戦争』をしなければならないわけであるからして、『ヂラールの残党刈り』といった程度の生易しいものではないのは確かであった……

    *    *

『騎士団! 前進ぜんしーん! 私達の日頃の訓練を見せてやれ! やぁやぁ我こそはっ!』


 と、でっかい斬馬刀振りかざして、ここが我ら騎士団の本懐とばかりに前線でヂラール歩兵型をぶった切りまくるメルフェリア御大。そして騎士団のみなさん。


「敵前方四〇〇! 弾種HE! 照準よし!」「よし打て打て! ファイアファイア!」

「お前ら派手に行けって命令だ! わかってんな!」「Yeahーー!」


 モーガン上級曹長指揮のもと、こちらも敵の真正面から進撃するUSSTC部隊。虎の子M4A1機動戦車を十数台程前に出し、襲い来るヂラールを派手に吹き飛ばす。


「上級軍曹殿!」

「なんだ!?」

「マァムの姿が見えませんが!?」

「ああ、彼女は別任務だ」

「そうでありますか、せっかくあのサムライソードの舞を見れると期待したのでありますが」


 と、先程までUSSTCの指揮を状況とノリで採ってしまっていた元皇帝陛下。あの優雅な武の舞を見れなくて残念と兵はみなしてブー垂れる……と、こっちも派手に真正面から進撃する。


『コチラリアッサ。敵モンスターフラワー乙型ニ接近。心臓部の探索を開始スル』


 リアッサ率いるコマンドトルーパー部隊。ローラースケートの如く疾走し、背面や肩部にぶらさげたL型コマンドローダーを下車させる。その様、戦車に兵を乗せて進撃する『タンクデサント(戦車跨乗)』戦法ならぬ、コマンドトルーパーデサント戦法といえば良いか。そんなところ。


「よし、リアッサ一佐、我々の大型陸戦ヂラールからの援護をお願いします」

『コンナトコロデマデ、敬語ナンテツカワナクテイイダロ、アキノリ』

「そういうわけにはいかないだろぅ、他の兵も見てるんだしさぁ」


 こっちもシンシエコンビ同様、今は夫婦で作戦中のリアッサ一佐と樫本二佐。で、旦那の方が階級が下なので、その夫婦の様子に、他の隊員のニヨニヨ度も増す。


「今はシャルリ大佐の部隊も預かっているんだ。早急に事を片付けないと、上の多川さんご夫妻達や、例の『サクラ型』も援護できないからな。となると、月丘君達の作戦にも支障が出る」

『ワカッテイルワ。デハ、当初ノ予定通リ、私達コマンドトルーパー部隊ハ前ニ出テ、取リ巻キヲ片付ケル。アキノリ達ハ、突入シテ探索ヲ』

「了解だ。では状況開始!」


 散開する樫本のコマンドローダー部隊に、本来ならシャルリが指揮するヤルバーン州メルヴェン隊と、防衛総省本部の機兵化空挺戦闘団。

 今、上空を飛ぶ艦隊に、シンシエコンビが指揮する航空機動兵器部隊が攻略しあぐねている薔薇型のモンスターフラワー乙型の心臓部探索に向かう彼ら。

 これさえ潰せば大規模戦力の投入を期待できるので、相当数残るヂラール動物型残存兵力に植物型のトラップ攻撃を円滑に排除することができる。


 で、これだけのお膳立てをしてもらって、この作戦全体の本丸はというと……


「いやぁすみません。でも大丈夫ですか? USSTCさんの方は」


 現在、例の如く銀ピカコマンドローダーの月丘和輝。サイドカー転がしているワケだが、本来寝そべって乗る隣の側車側に、キチンと正座して乗っているのは、


『問題ありませン。妾が鍛えた部隊です。もーがんも妾が言付けた作戦通りに動いているでしょウ』


 と、なんと、ナヨ閣下がご同行あそばされていた。なんでもこの三人チームのシビアが今回はいないという話を大見から聞いて、『では』というワケで、存在の特性がシビアに近いナヨ閣下が同行してくれたという次第……って、なんだかんだで流石にプリルと月丘二人と、グロウムのレジスタンスだけでは戦力的に心配だということ。

 でもナヨさん、ニーラー型サイドカーに正座して乗って、この不整地走っているのにバランス感覚が異常に良いという……大したお方である。

 そんでもって……


『あたし達の精鋭も、リアッサとカシモトにまかせておけば大丈夫だよ。それに元々優秀な連中だしさ』


 と、ナヨと同じような理由で自主的に付いてきてくれた『武器女』こと、シャルリ大佐。

 プリルが駆る『むせる型コマンドトルーパー』に跨乗している。その姿は脚部の取っ手に捕まって、『サイレンの音を高らかにならす』男女カップルのヒーローのごとし。

 此度の月丘達の任務は、言ってみれば、要するに『中核部奇襲破壊作戦』という、『暗殺作戦』ともいうべき此度の作戦だが、恐らくナヨとシャルリ。この二人がいるといないとでは、その作戦成功率は雲泥の差というところであろう。


「でさ、プリちゃん。そのコマンドトルーパーだけど、特危の19式借りられなかったの?」

『え? いいじゃないですかっ、これ私のお気に入りですよっ』


 此度の『むせる型』。ゼル造成ではなく、立派な本物官給品。というか、ヤル研が倉庫に隠して……しまってあったモスボール品を総諜対にくれたそうで、その逸品を持ち出してきたという次第。プリ子のお気に入りだそうである。なので、先の鹵獲作戦時にプリルがデータ装備としてPVMCGのパワーを食うにもかかわらずコレと同じものを造成できたのは、オリジナルのこの機体のデータを取っていたからである。


 で、しばし走ると、約束の会合地点に到着する。

 到着早々、武装したグロウム人がいきなり飛び出てきて、「隠れろ!」と叫ぶ……ナヨはその声に反応すると、そのグロウム人の腕を掴み、サイドカーに引き寄せて、


『月丘や!』『了解です』


 対探知偽装シールドを周囲にかけた。これをやれば隠れる必要などない。ヂラールはコレを見破れないのだ。

 ただ、あくまで『見えない』だけなので、音を出したり動いたりはなるべくしないほうがいいわけで……


『(あ、あれは……何だ?)』


 月丘が小声でそう言うと、ナヨに腕を掴まれて、サイドカーに密着させられているグロウム人男性は、


「(あのでかい飛翔生物型バルターは、こうやってこのあたりを度々偵察に来るんだ……)」


 月丘達のいる地点を大きく周回する翼竜のようなヂラール……しばしそやつの偵察行動? につきあわされるが、何事もなく飛び去ってくれたようだ……

 探知偽装を解く月丘達。


「ふぅ……しかし素晴らしいなその技術は。ネリナ提督から『すごい人達が行く』という話は聞いていたが」

『では、貴方が?』

「ああ、グロウム防衛隊首都本部所属の『ベルゼ・バウル』大尉だ。よろしくな」


 とベルゼなる男性と握手する月丘。放射能汚染がひどいこのあたり。なので月丘も銀ピカヘルメットを取ることができない。失礼を詫びる彼。

「しっかし……異星人とこんな形で出会うとは」

『サージャル大公殿下も、同じようなこと仰ってましたよ、ははは』

「ああ、まあ我々が最初に異星生物と邂逅したのが、あのクソバルターとだから、あんた達のような異星人がいてくれて、嬉しいのは確かだけどね」


 普通なら、かつての日本人がヤルバーンと出会ったときのように、最初は好奇心のみが先行して口をあんぐり開けて驚くような場面が飛び抜けて発現するところなのであろうが、事こんな種族存亡の時にあっては、こういう状況も、既に驚くほどの対象ではなくなっているのかもしれない。

 これはある意味、文明同士の接触を考えると、悲しいことでもある。


『で、ベルゼ大尉。現在我軍は、この状況を早期に終わらせるために、このヂラールコロニー……あなた方の言葉でバルターの親玉に対して、総攻撃を敢行中です。できれば今すぐにでも、そのバルターの中心部に案内してほしいのですが。時間をかければかけるほど、我々も消耗しますので』




 恒星ベイルラのダイソン・スフィアに取り憑いたヂラールコロニーは破壊した。

 あとは、このグロウム本星に残された、ヂラールの生き残りを駆逐するのみ。



 『グロウム戦争』の顛末、最終局面である……








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