母親探し-3
「じゃあ、おっさんも食ったことだし、ラッドをどうするか考えようぜ。ここで住んでも良いけど、お前は帰りたいんだろ?」
ラッドはこくこくと頷いている。昨日ラッドが話したわずかな情報では、獣人というのは必ず群れで生活しており、ラッドのいた群れは他のイヌの群れにすみかを追われてしまったらしい。混乱の中で、母親とはぐれたのだろう。
「やっぱ獣人の事情に詳しいやつがいねえと……お前、東の森から来たんだよな?」
「そうだよ。ボクのいた群れは、おいちゃんがものおもいしてた海岸から見て小屋と反対の方にずっといったとこに住んでた。なのに、後からきたやつらがリーダーを……」
言い切ることなく、ラッドは口をつぐんで下を向いてしまう。覗きこむと大きな目が濡れていた。もういいよ、と言う代わりに頭にそっと手を置いた。
獣人のしきたりは分からないけれど、こんなに小さな心にキズをつけるのはむごい仕打ちだ。だからといって、そいつらに報復するのも、何か違う気がした。第一、今すべきことはラッドの群れを見つけることだ。
「サカキ、何か心当たりは無いのかい? 獣人の知り合いとか……いないか」
「いや、いるな」
「へえ!……意外だな」
「何言ってんだ。あんたも知ってるだろ。猫又だよ、猫又のばあさん」
「……猫又さんって獣人なのか?」
猫又といえば、妖怪じゃないのか? いや、猫も獣ではあるが。
「よっし、ラッド! オトコがいつまでも泣いてんじゃねえ。猫又のとこに行くぞ」
「……うん!」
僕は少しめまいがしそうだったが、まあラッドが顔を上げたから良しとするか。猫又は獣人……猫又は…………いや、やはり妖怪だろう。