そもそも俺らが強かったら勇者は要らないんじゃね?
「そもそも俺らが強かったら勇者は要らないんじゃね?」
そう言ったのは帝国騎士団長である。少ない時間の昼休みに騎士団の同期と駄弁っていた。彼は一番統率力が取れていて、熱血のナイスガイなので、慕う後輩がたくさんいる
「そりゃそうっスよ。俺らが魔王を倒せないから勇者召喚なんてするんですって」
副団長が言う。彼は騎士団の中でも魔法が得意なさわやかなスポーツマン気質の青年である。
「というか、魔王ってどんなヤツなんですかね?」
小柄な青年が言う。騎士には珍しい弓を使う人物である。物腰が柔らかく、後輩の面倒見もよく親近感の湧く先輩である。
「そりゃあ、鬼のような恐ろしい形相をしているんだろ? それで大きな口を開けて人をガブリと」
「ちょ団長、少しイメージが古すぎませんスか!」
「副団、俺もそう思っていたなぁ。そういえばもう時間だぁ。午後は勇者の稽古じゃなかったっけ?」
召喚されてきた勇者を鍛えるのも騎士団の役目でもある。
「あんな初心者、本当に魔王を倒せるんスか? 俺の魔法一つも防げない奴が本当に出来んスかね」
「伝説になっているくらいだから大丈夫じゃね?」
「団長は甘く見すぎ。あれくらいで倒せるんだったら俺らでも倒せますよぉ」
「じゃあ、今夜倒しに行ってみるか」
「良いっスね! 俺ら三人で行ってみるか」
「ここが魔王城!」
目の前にそびえるは
「意外と小さいお屋敷だな……」
「もしかして魔王も財政難っスか?」
「そう見えて実は迷路とかになってんじゃね?」
「そりゃないやぁ」
「装備は備品しか付けていないからかなりやばい状態。マジで」
「マジか。じゃ、連携確認していきますか。俺は魔法だから後ろで剣でも振っているっス」
「俺は弓だから適当に支援しときますねぇ」
「前衛俺だけかよ」
「奇襲だ! 何をする! おい、おぬしら勝手に余の城に入るとは、何という狼藉」
キィーキィーと甲高い声で言うのは魔王。
「ヤバい、団長の言った容姿そのままっス。鬼のような顔で口も大きいけどあの声マジでウケる」
「今、余の姿を見て馬鹿にしたとは、処刑する!」
「シリアス感が全くないねぇ」
「騎士団、行きますか」
――結局。
「魔王弱ぇな」
「一発だったっスね」
「呆気無かったね」
「これが世界を震撼させた原因?」
「これが小ボスで大ボスが居るとかパターン?」
「違うだろ。見ろ、暗雲が消えていく。平和が来たんじゃね?」
「来たっスー!」
「勇者どうする?」
「俺たちは知らん!」
事実、魔王は国中が束になっても倒せなかったと思う。だが、この騎士団三人組は、規格外だった。勇者よりもハイスペックだったことは言うまでもない。ただ一つ言いたいことは、転生者や転移者がチートを持っているとは限らないのである。本人が気づかないだけで実は……。