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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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8.食堂

 


「キアラちゃんの点滴が終わったのなら、ご飯食べに食堂へ行こっか。ちょうど空いてきている時間帯だと思うわ」


 みんなを待たしてしまったキアラは申し訳なくて縮こまるけれど、いい時間になったとフォロー出来るのがアイリーンの凄いところだと思う。


 食堂のシステムは軍と似たようなものなのでキアラには馴染みがあったが、ソフィアにとっては初めてらしく、ラウラの後ろにぴったりついて話を聞いていた。


 軍なら階級ごとにメニューが豪華になるが、ここではそこまで露骨なことは行われておらず、3つの定食の中から好きな物を選べるようだ。

 量も軍と同じで好きなだけ食べられるが、キアラはかなりの少食だ。軍食堂のおばちゃんはキアラが行けば黙っていても小盛にしてくれるが、ここではどうだろうか。


「キアラちゃん、どのくらい食べる? 大盛りにも出来るよ」


 アイリーンはそう言ってくれるが、残念ながら逆だ。


「……すこしが、いいです」


「じゃあ、小盛にしてもらいましょ。おばちゃん、大盛りひとつと小盛ひとつ!」


 よく通る声でアイリーンが注文してくれた。


「あいよっ!」


 カウンターの向こうで盛り付ける威勢のいいおばちゃんの雰囲気も、軍と同じ感じでキアラはなんだか安心できた。


 4人で同じテーブルについて食べ始める。

 軍とシステム的には変わらないけれど、設備は綺麗だし、何よりも活気がある。


「このお肉、初めて食べた味付けですけれど、とっても美味しいです」


 キアラは魚のメニューを選んだけれど、ソフィアが食べている肉も美味しい事を、キアラは知っている。

 軍の食堂でも同じメニューが出るからだ。


 軍の食堂と似ているけれど、キアラにとっての一番の違いは間違いなく『一緒に食べる人が居ること』だろう。


 軍人は基本的に黙って早食いだし、キアラは他人と距離を置きたいのでなるべくすみっこの方で食べる。

 こんな風に、同年代の人がわいわいと話している中でご飯を食べるのは初めてだった。


 食べ進める間にも、アイリーンとラウラが色々と雑談をしてくれて、ソフィアがそれに相槌を打っている。

 どの授業が難しいとか、カフェのどのケーキが美味しいとか、裏庭の猫が可愛いとか。


 些細な話ではあるけれど、それを聞けるのがキアラは楽しい。


 元々引っ込み思案な性格なので話すのは苦手だけれど、誰かの話を聞くのは好きだから、こうして輪の中に入れてもらえているのが嬉しかった。


「明日の予定の説明が無かったのですけれど、何をするんでしょうか。

 9時に教室集合としか言われていないんです」


「明日は2日目でしょう? 朝から学校の設備の話があって、クラスで自己紹介とかすると思うよ。昼前に解散だから、そのあとは基本自由ね。ソフィアちゃんは、友だちいるの?」


「同じ中等科から来ている子と、魔法塾が同じだった子がいます。でも、とっても仲良し、という程かと言われたら……」


 聞いたのはアイリーンだったが、ラウラが話し始める。


「なるほどね。でも同じ学校に来たんだから、ご縁は大切にしておいた方がいいわ。

 向こうもきっと知り合いが欲しいでしょうから、声を掛けてみるだけでもいいんじゃないかしら」


 キアラには知り合い自体ほとんど居ないけれど、ソフィアは普通女の子なので友だちが居るのが少し羨ましい。


 キアラは他人から距離を置いているけれど、それは傷つけるのが怖いからであって、仲良くしている人達を見て『いいなぁ』とは思うのだ。


 ーーーー今まさに、自分が憧れていた『友だちとご飯を食べる』状況だと、キアラはまだ気づいていない。






「食べ終わったら、もう時間も遅いし解散しましょうか。二人共、慣れない環境で疲れたでしょう」


 アイリーンが早々に解散宣言をしてくれたので、キアラは有難く部屋に帰った。

 ソフィアはまだ何か話したそうだったけれど、一日気を使い続けたキアラはもう限界だ。


「疲れた〜!」


 キアラがベッドにダイブするのと同時にアシェも女の人の姿に戻る。


「でも、きあら、楽しそう」


「うん、まあ、楽しかったかな」


 少なくとも、錬金塔の部屋に閉じこもって研究をし、たまに魔境に連れて行かれる生活を続けていたら出来なかったことばかりだ。


 学校に通うこと、試験を受けること、クラスメイトや先輩と話すこと。

 どれも普通の子が何気なくすることだけれど、キアラにとっては特別な体験だ。


「でも、疲れたんだよー。明日から薬増やそうかな」


 点滴は魔力暴走を抑えるためのもので、飲み薬は虚弱な身体を維持するためだ。

 点滴はそのままの量でいいけれど、体への負担が増えるなら飲み薬の量の調節が必要かもしれない。


 そんなことを真剣に考えて、検証用のノートを取り出そうとしたら、アシェの薄青い手に止められた。


「きあら、動きすぎるから、今はだめ。寝てからね。それに、薬増やしても、疲れるよ?

 だから、ちゃんと寝るの。

 精霊は寝ないよ、でもニンゲンは寝るでしょ」


 ぷぅ、とほっぺを膨らませるアシェは、キアラのためを思って言ってくれている。


「うん、確かにその通りだね」


 薬を増やさず出来る範囲で動くべき、それはアシェの言う通りだ。


「そう。だから、きあら、寝て!」


 ぐいぐいと掛け布団を押し付けてくるので、キアラは抵抗せずに布団に潜り込んだ。

 一日動いて疲れきっていたので、待つ程もなく眠気がやってくる。


(……あぁ、でも、これだけは言っておかないと)


「アシェ、」


「うん? なに?」


「一緒に来てくれて、ありがとう」


 そう言うと、アシェはびっくりするほど綺麗に笑ってくれた。


「どういたしまして!」



 大変な任務を引き受けてしまったと思っているし、これからも困ることが沢山あるだろう。


 でも、キアラは今日一日だけでも、この任務を受けて良かったと思えた。

 だから明日からも、頑張ろうと思えるのだった。


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