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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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41.王宮パーティー

 


 補習がようやく終わった今週末は、王官で盛大なパーティーがある。

 隣国の王子が外交訪問で来ているので、交渉も兼ねた場が用意されるのだ。


 そもそも、ガレス王国は魔境に接している。

 それは魔族や魔獣の常に隣り合わせの危険な条件だが、逆に言えば魔石の産地だとも言える。


 魔石を貿易で他国に輸出し、そのお金で防衛をする。そうやって生きてきたガレス王国にとって、魔石貿易はなくてはならないものだ。


 だが、魔石が欲しい隣国にとってもそれは同じ。

 むしろエネルギー資源をガレスに頼る形になっているので、こちら側に決定権がある。


 魔王復活に伴って防衛費の値上がりが予想される今、魔石を値上げしたいガレスとしては交渉が正念場を迎えている。


 特に、外交担当のルーレストにとってはかなりの難問だ。

 王族は、王や王太子が内政全般を管轄し、王弟達はそれぞれ軍事や外交といった大臣に割り振られる。

 キアラが苦手としているどこぞの元帥閣下も王弟のひとりだ。


 そんな中、今の第2王子は軍務、第3王子は外交担当なので、今回のパーティーはルーレストにとって重要なものだ。


 しかし、キアラにとっては雲の上の話で、自分には関係ないと思っている。


 というか、ルーレストが出るのは確定なので、会うとまずいので行きたくない。

 フードを目深に被り、更に口元を覆う布をつけているけれど、気づかれやしないかとヒヤヒヤするのは嫌だ。


 ルーレストが居なくても、面倒なので行きたくないのに。


 でもキアラは国内の魔石採取量がぶっちぎりのトップなので、魔導六師《殲滅の魔女》として呼ばれている。

 その建前だけでなく、ルーレストの護衛としても、参加しないという選択肢はないのだが。


「……ねぇ、やっぱり、行きたくない」


「レンツァー師、立場上断れないのはご存知でしょう。行きますよ」


 時間ギリギリになってもなお、アズーラ中尉にダダを捏ねてみたけれど、やっぱり連れて行かれてしまった。


(仕方ないかぁ……。でも、新歓パーティーの時みたいに、美味しいご飯があるかも!

 時間的に点滴打ったばかりだし、食べようっと!)


 そう思うと、少しは気分が上がるキアラだった。


 彼女が今着ているのは学園の制服ではなく、魔導六師専用の公式ローブだ。

 制服と同様、結界の魔法陣を固定化したかったのだけれど、時間も手間もかかる。


 ということで、攻撃魔法陣のついでにこれも学園の手芸部に依頼した。

 ローブが届いた時、キアラも手芸部に居たけれど、お祭り騒ぎどころではないほどの盛り上がりだった。


 魔導六師《殲滅の魔女》といえばそれほどみんなの憧れで、そのお方が公式に着用するローブに魔法陣を刺繍出来るなんて!と、大興奮だ。

 刺繍がしたいという人が多すぎて、順番に交代制でそれぞれ少しずつ刺繍して、数日間であっという間に出来てしまった。

 キアラは丸々2日かかったのに、放課後の数時間で出来るなんてすごい、と感動したし、とてもとても丁寧に刺繍してくれたので感謝している。


 そんな想いの詰まったローブを着ていても、パーティーには行きたくない。

 なるべく目立たないよう、見つからないようにフードを目深にかぶり、壁際に沿って移動する。


 だが、どうせならということで美味しそうなご飯のあるテーブルを目指して移動していると、後ろをついてくるアズーラ中尉が呆れ顔をしていた。


「お食事中、失礼します。《殲滅の魔女》殿、少しお話よろしいでしょうか」


 鮮やかな緑の髪をしたキラッキラのイケメンが話しかけてきた。

 今回のパーティーの主賓、隣国からの使節団のリーダーである王子様だ。


「…………」


(この人も王子様だから、きっとめちゃくちゃ腹黒いんだっ! 一緒にお話なんて、まっぴら御免だ)


 最近、王子様に対して全くいいイメージのないキアラは逃げようとするが。


「はじめまして、僕はシシュト・レスティリスタ、レスティス王国の第4王子です。

 そちらの川魚の揚げ物は、この国でしか食べられないのですが、とても美味しいですよね。

 だから、僕はこの国に来るのがいつも楽しみです」


「……ぁっ、はぃ……」


 ちらちらとアズーラ中尉に助けを求めるが、普通に会話するのも立派な仕事なので遮ってはくれない。

 話もせずにご飯を食べているだけのキアラの方が、怒られる振る舞いだ。


「ミス・レンツァー、あちらのバルコニーからの眺めがとても綺麗でした。見に行きませんか」


 美味しいご飯の話から、いつの間にかそう誘われた。しかも、頼みのアズーラ中尉はレスティリスタの連れている男と話をしている。


「……ぁっ、」


「では、どうぞ」


 エスコートの腕を差し出されると、キアラは断りきれないので渋々ながらもついて行った。


 バルコニーへつくと、王子は防音結界の魔導具を使った。

 ついてきているアズーラ中尉やレスティリスタの副官の姿は見えるが、音は遮断されている。


「ミス・レンツァー、失礼とは思うが、俺の話を聞いてくれないか。

 これは、レスティス王国としてではなく、シシュト個人としての話だ」


 急に態度が変わった相手に対して、キアラは身構える。

 しかも、視線の雰囲気がなんだか普通と違う感じで、それも警戒対象だ。


「我が国へ、来てくれないか」


 その言葉は、フードに隠れるのに必死だったキアラですら、はっと顔を上げるほど、真摯な色を含んでいた。


「ここは、武術を身につけてもいないような少女を、魔獣の蠢く魔境へ行かせるような国だろう。

 我が国であれば、そんな事はさせないし、もっと良い待遇を保障する。

 だから、来てくれないか」


(……ちょっと、何言ってるか分からない)


 急なスカウトに困惑するしかない。


 しかも、キアラは自身の長所を『魔獣をいっぱい狩れるところ』だと思っている。

 魔境へ行かないキアラなんて、ただの虚弱体質な子どもだ。


 ふるふる、と精一杯首を振って拒否の意思を示す。


「なぜだ? 危険な仕事には就かず、学校へ通える生活を保障する。それに、魔力量が多いのだからその後の人生についても心配はいらない。

 俺と一緒に、国へ来てくれないか」


 その瞳は驚くほどの色香を含んでいて、完全に口説きにきているのに、キアラはそんな事には全く気づかない。


(私には、守りたい人がいる。ルーレスト先輩だけじゃなくて、カリナや、ソフィアちゃんや、生徒会や手芸部の先輩達も。

 だから、魔境へ行かないことが良いとは思えないし、他の国へ行きたいとも思ってない)


 少し前の、錬金塔に閉じこもっていたキアラなら、魔境任務が無くて誰とも会わなくていい、と言われたらついて行ったかもしれない。


 でも、今は違う。


 自分から進んで討伐任務に行くし、学園での活動は護衛任務だけれど、楽しんでいる部分も沢山ある。


 だから。


「私は、この国に居ます。レスティス王国へは、行きません」


 はっきりと断った。


「……そうか」


 シシュトはかなり残念そうだが、キアラとしては急すぎる話が理解出来ない。


 ルーレスト先輩によると、交渉ごとというのは事前情報で決まるそうだ。

 どれだけ相手の情報を集め、本当に欲しがっているものを知れるかで、成果が決まる、と。


 その言葉の意味が、今ならよく分かる。


 相手の事を知らずに話すと、自分勝手でよく分からない奴、と思われてしまうのだ。

 今まさに、キアラがシシュトに感じているように。


(どうしても私の魔力が欲しいなら、ルーレスト先輩がやってるくらい、ちゃんと調べてから来てほしいな)


「ミス・レンツァー。せめて最後に、フードと口元の布を外して素顔を見せては貰えないだろうか」


「…………」


 今度こそ、本当に意味が分からない。

 膨大な魔力を持つキアラを自国にスカウトするのはまだ理解出来るが、自分の顔を見てどうしようと言うのだ。


 もう話す価値がないな、と思ったキアラは、自分を見つめる視線を捨ておいてくるりと向きを変える。


 そのままアズーラ中尉のところまで行くと、防音結界の範囲から外れて周りの喧噪が聞こえるようになった。


「よろしいので?」


 アズーラ中尉は心配そうだが、


「……帰ります」


 キアラとしては、一刻も早くここから離れたい。

 でも、護衛の仕事があるので部屋へは帰れないが、シシュトに見つからないようにホールの人混みに紛れるくらいのことはしたかった。


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