40.補習
そんな、みんなの憧れ《殲滅の魔女》キアラ・レンツァーは、補習に追われていた。実技と魔力量は学年2位なのに。
補習は学年ごとにひとクラスに集められ、該当科目のプリントを解いてからテストをして、そのテストが満点になれば帰れる、というシステムだ。
ひと科目3日なので、終わった人は来なくなる。
初日には25人ほど居て、一割弱が赤点取ったのなら自分も仕方ないか、と思ったのに、一科目が終わった4日目にはガクッと人が減っていて、暗い気持ちになった。
そして、補習開始から一週間以上が経った今日は、たった5人しか居ない。
キアラは5科目中3科目が終わるところだからまだ折り返したばかりだというのに。
「やったー!おわり!」
合格を貰って喜んでいる女の子を見て、キアラは羨ましくなる。ついに女子は自分だけになってしまった。
しかも、話を聞いているとほかにも3人は今日で終わるらしい。
いいなぁ、と思いながらそちらを見ていると。
「なぁ、お前あと何科目あるんだ?」
今日で終わらない、と言っていた男子に話しかけられた。
「……ぇっと、あと、2科目ある……」
「えっ? 学年2位だよな? 生徒会だし、途中来れなかったとかそういうやつ?」
学年2位なのはあくまで実技だけ、とキアラは思っているが、普通座学の理論を知らずに魔法を使うことは不可能なので、実技が出来る=座学も出来る、はずなのだ。
「……ずっと、来てる……全部で、5科目……」
「えーっ! やば〜い! グレイより下じゃん!」
合格を貰って喜んでいた女子にまでそう言われてしまった。
「俺はグレイ・スカー、赤点は4個。グレイって呼んでくれよ。よろしくな!」
自己紹介内容が赤点数、というのも物悲しいが、本人は至って元気そうだ。
というかこういう気にしない性格だからこそ、赤点を取りまくっているのかもしれない。
「……ぇっと、、キアラ、です……赤点は、5個……よろしく……」
なんだか仲間な気がしたので、たどたどしいながらも自己紹介を返したら。
「黙って補習をするように! 成績が悪いなんて理由で仲間意識を持つなど、言語道断だ! 次は絶対に赤点を取らず、補習を受けないようにしろ!」
前で監督をしていた先生に怒られてしまった。
「特に、スカー! お前は授業中の態度も含め、悪すぎる! 反省しろ!」
名指しで怒られても尚、キアラに向かってペロリと舌を出すような奴だからこそ、補習になっているのだろう。
故郷の村の初等学校にもこういう男子が居たな、と懐かしくなる。
そして次の日には、グレイと二人だけになってしまった。
昨日とは別の教師は怒るのを通り越して、最早呆れ顔だ。
「お前ら、補習何教科あるんだ? 早く終わらしてくれよ」
「俺は4科目だけどな〜」
意味深に笑うグレイが、ちらりとキアラを見る。
「……5科目、です……」
「はあっ!? キアラ、お前はどうやって魔法を使っているんだ??」
心底不思議そうに教師が訊くが、キアラにも分からないので黙り込む。
補習は罰の意味もあるので1日にプリント1枚ずつ進め、最低でも3日間拘束されるが、それではキアラはまだまだ終わらない。
「あとの日程は俺の担当なんだが、キアラ一人のために来るのはめんどくせぇ。
今日から1日2枚渡すから、3日で終わらせろ」
「……はぃ、す、すみません……」
自分のために手間をかけさせて、申し訳なくて縮こまるキアラに、
「じゃあ一緒に終われるな! 良かったじゃん!」
そう言って自分の事のように喜ぶグレイは、やっぱり故郷の村の男子のようだと思った。
「……ぁの、グレイは、どこのクラス……?」
今日の分のテストが終わり、とっとと先生は居なくなったので、勇気を出してグレイに聞いてみる。
「俺はDクラスだぜ。というか成績順でクラス分けされてるから、補習に来ているのはほぼDクラスだな。
ちょっとだけCクラスの奴もいたけど、Aはキアラだけじゃね?」
「……ぅん。座学、分からなくて。でも、がんばる」
「おう! 一緒に頑張ろうな!」
ぐっ、と握りこぶしを差し出されたから、それに自分の拳をぶつける。
魔法兵団で見かけたことはあったけれど、自分がやるのは初めてで、グレイと仲間になれた気がした。
他のクラスの友だちが出来たのなら、補習も悪くなかったかも、と純粋に喜ぶキアラだった。




