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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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39.手芸部



 魔法陣の話をしたのも忘れかけていた翌週半ば、カリナとソフィアと一緒に食堂の列に並んでいた時のこと。


「あら、キアラちゃん、ソフィアちゃん!

 今日の放課後はお時間あるかしら?

 是非とも手芸部へ来て欲しいのだけど!」


 信じられないくらいにハイテンションなルチアに話しかけられた。


「はい、わたくしは時間がありますから、元々行かせてもらおうと思っていましたけれど、キアラちゃんは生徒会の活動がありますの」


 ソフィアが、キアラの予定も一緒に返事をしてくれた。


「私も生徒会だけれど、今日の活動日はお休みするの。だって、本当に信じられないくらい素晴らしい仕事があるのよ!!

 生徒会なんて、行ってられないわ!」


 放っておけば踊り出しそうな勢いで話すルチアを見て、ようやくキアラは思い出した。


 (あっ、もしかして、魔法陣の作成依頼の話かな。アズーラ中尉、もう通してくれたんだ)


 裏側を知っているキアラとしては納得できたが、知らないソフィアは不思議そうを通り越して不審な視線を送っている。


「それに、作業量もものすごいから、そちらのお友達も、ぜひ来ていだだけますこと?

 もちろん、ほかのお友達も誘っていらしてね! とても良いことがあるのは、保証致しますから!」


 歌うように言い切って、ルチアは去って行った。

 と、思ったら少し後ろに並ぶ人へ向かって同じ話をしている。


「……何があるのかしらね? カリナちゃん、どうしますの?」


「生徒会の会計の先輩よね。あれだけの勢いで誘われたから、とりあえず行くわ。

 キアラも行くよね?」


 訊かれたのでコクコクと頷く。

 自分で使う物なんだから、なるべく参加しようとは思っているので。



 そうして3人で行った手芸部の部室は、今までに見た事がないほど人がぎゅうぎゅう詰めだった。

 いつもは20人弱しか居ないのに、今日は倍以上居るだろう。


 しかも、事情を知っているとみられる上層部の辺りに異様な熱気が漂っているので、益々狭く感じる。


 キアラ達がなんとか部屋に入れたところで、部長が話し始めた。


「皆様、お集まりいただき誠にありがとうございます。

 今回の活動は、他でもない魔導六師《殲滅の魔女》キアラ・レンツァー魔導師様から、直接頂いた指名依頼ですの!!」


「ええっ!?」

「《殲滅の魔女》様からの?」

「指名依頼って、どういうこと?」

「《殲滅の魔女》様が?」


 ざわざわする室内に、キアラは居た堪れない気持ちになる。


 (私、そこまで言われるほどの人間じゃないって!!)


「そうなのです、信じ難いかもしれませんが、《殲滅の魔女》様が直々に、我が手芸部に指名依頼をしてくださいました。

 その内容が、こちらです!」


 バッ、と広げられたのは大きすぎる魔法陣。


「こちらは、《殲滅の魔女》様がお作りになった、魔境防衛専用の魔法陣ですの。

 こちらの図案を解読するだけでも大変なくらいのもので、素晴らしい作品ですわ。

 これが、あればあるだけ欲しいということですの。しかも、この大きな魔法陣以外にも、補助魔法陣が4枚必要です。

 それを、当面の目標として、12拠点に3組ずつ、計36組欲しいとのことですわ」


「《殲滅の魔女》様の魔法陣? もっと良く見たいわ!」

「あれを36組ですって? 途方もないわね」


 口々に感想を言う横で、キアラは縮こまっていた。


 (アズーラ中尉、一組で良いって言ったじゃん!作るのが絶望的に大変な物を36組って、頼んでいい仕事量じゃないって!)


「先の見えないほどの作業量ですから、心配になる気持ちは分かりますわ。

 ですが、期日は決められておりませんの。

 出来たものから納品しますから、不安なく手を動かすだけでよろしいのよ。

 わたくし達が作ったものが、魔境防衛任務に実際に活用される。

 そんな素晴らしいお仕事、しない訳には行きませんわよね!」


「やりましょう!」

「《殲滅の魔女》さまの指名なんて、こんなに名誉なことがあるかしら」

「明日からは、クラスメイトも誘ってきますわ」


 《殲滅の魔女》の名前はここまでの効果があるか、とキアラが怖くなるほどの熱量だ。

 隣に座るカリナまでも、


「魔境防衛に使われるなら、私の故郷を守ることにも繋がるわ。しばらくバトルクラブはお休みして、手芸部に来よう」


 そう言うから、キアラとしてはなんだか申し訳ない。


「皆さま、不安にはならなくてよいですが、とにかく丁寧にお仕事を進めましょうね。

 《殲滅の魔女》さまがわたくし達の腕を見込んで依頼して下さったのですから、そのご期待に応えられる仕事をしなければなりませんわ。

 しかも、《殲滅の魔女》様の部下の方が、定期的に視察に来られるそうですの。

 魔法兵団の方に、自分の実力を見ていただくチャンスもありますわよ」


「そんな良いことも!」

「わたくし、毎日来ますわ」

「《殲滅の魔女》様のために!」


 キアラの思いつきが、ここまでの熱量になるとは思いもよらなかった。

 アズーラ中尉の依頼の仕方と、手芸部の先輩方の人の集め方の上手さだろう。


 自分達に依頼が来たというだけでこんなに喜んで貰えるとは思わなくて、その熱量にキアラは少し引き気味だ。

 でも、それはそれだけ《殲滅の魔女》に人気があり、みんなから認められているという証でもある。

 そう思うと、居た堪れなさはあるものの、少しだけ嬉しい気持ちになれた。



 大型魔法陣を固定化するのには、それなりの手法がきちんとあるらしく、四隅から手分けして、整然と刺繍を進めてゆく。

 キアラは一人で丸2日以上かかったけれど、手分けしたら放課後の時間だけでも出来上がるだろう。


 でもそんな先輩達と違って、集団作業の苦手なキアラは、補助魔法陣の小さい図案と布を貰って作業を進める。


 カリナ、ソフィアも補助魔法陣の組に入ったので、3人で並んでちくちくと裁縫を進める。

 2人の話を聞きながらの作業は、キアラにとっても楽しかった。


「出来たものから、週末にまとめて提出しますから、なるべく皆さま来てくださいね」


「もちろんですわ!」

「《殲滅の魔女》様の魔法陣なんて、とても名誉なことですもの」

「明日は、友人も連れてきます」


 そう言って解散する人を見ていると、《殲滅の魔女》がみんなの憧れの的だということを改めて実感できた。

 居心地が悪い気もするけれど、それはこれだけの人の想いを背負っているということ。


 心新たに、頑張ろうと思えたのだった。


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