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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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35.side:魔族



 〔ねぇ、ダン。魔王さま、来てくれるよね?〕


 〔うん、ザン。きっと、来てくれるよ〕


 ザンとダンは、いつも2人で一緒だった。

 ザンは白の髪に黒いドレス、ダンは黒の髪に白いドレス。2人とも髪は腰まであり、髪色と逆の色の長い角が生えている。


 黒いしっぽと真っ赤な瞳は同じだし、顔つきは双子のようにそっくりだけれど、真逆の色合いの2人は、ずっと一緒に生きてきた。


 前回、魔王さまが憎き勇者に討伐されてしまった時。魔族のダンとザンは、また長い眠りについたのだ。

 次こそは、魔王さまが偉大な神となって、自分達の世界を取り戻してくれることを願って。



 人間が出現するよりはるか昔、世界は魔族と精霊のもので、土地は魔力に満ち溢れていた。

 だが、土地の魔力は少しづつ弱まり、魔族や精霊が住めなくなっていってしまった。


 そこに、人間が生まれたのだ。


 人間が出現する前には、魔族の仲間は沢山居た。例え精霊とのナワバリ争いに負けても、すぐ復活できた。

 だけど、今は違う。負けたら、それまで。

 魔族の仲間はどんどん減っていく一方だ。


 人間は栄えたけれど、魔族や精霊にとってなくてはならない魔力はどんどん減ってゆく。

 精霊は姿を変え、少さく弱くなって世界を漂うことを選んだ。


 だが、強い自我を持つ魔族は、魔力の高い所に集まることを望んだ。

 魔族が集まれば、多少なりとも魔力が循環する。それに釣られて来た魔獣も含め、なんとなく集まって生きるようになった。


 魔族は人間と違って群れることを好まないから、国を作ろうとはしない。

 けれど、魔族は『魔王』が欲しい。

 魔王とは、無限の魔力を湧き出させる存在で、魔族にとって神にも等しい。

 それを魔族は求め続けているけれど、世界のことわりは、今、人間の方へと傾いている。


 数に任せてニンゲンの領域を広げているし、魔王を討伐する『勇者』という存在が産み出されてしまうのだ。


 魔王さまは何度も何度も討伐され、その度に魔族も犠牲となって少しづつ数を減らしてしまう。


 それでも。


 〔ねぇ、ザン。今度こそ、魔王さまは、来てくれるよね?〕


 〔うん、ダン。来てくれたよ、きっと。だけど、どこに、居るのかな〕


 産まれたての魔王さまはまだ弱いから、魔族がみんなで守ってあげたい。

 それなのに、魔王さまがどこに居るのか分からないのだ。


 〔ねぇ、ニンゲンの方に、居る気がしない?〕


 〔ザン、そうだね。そうかも、しれない〕


 〔魔王さまが、ニンゲンに、捕まってるよ。それって、大変じゃない?〕


 〔そうだね、探しに行こう〕



 魔族のザンとダンは、2人で魔王さまを探しに行ったけれど、何故か魔王さまの力を感じられない。

 ごくごく稀に、ニンゲンとの境界線辺りに力を感じるだけ。


 その時にはすぐさまそこへ向かって、見に行くのだが。


 〔ねぇ、ダン。あれは、ちがうよ。魔王さまじゃない。ニンゲンだよ〕


 〔そうだね、ニンゲンだ。ザン、帰ろうか〕


 何度見に行っても、居るのはニンゲンだけ。


 〔ねぇ、ダン。魔王さま、居ないね。でも、勇者は、来ちゃうよ〕


 〔そうだね、ザン。もしかしたら、魔王さまは、勇者に封印されちゃってるかもしれないね〕


 昔むかし、そういうこともあったような気がする。

 その時は、次の魔王さまが産まれてくれなくて、ザンとダンは長い長い眠りにつく羽目になった。


 〔じゃあ、ダン。勇者を、ころしに行く?〕


 〔そうだね、ザン。魔王さまの代わりに、勇者を、ころしに行こう〕


 そうして魔境から出てきたザンとダンだったけれど、自分達と同じ種族は、もう2人だけしか残っていないのだ。

 こんなふうに、ニンゲンの世界へ行って、帰って来なかった仲間がたくさん居る。


 もしもどちらかがニンゲンに倒されてしまったら、残された方はひとりぼっちになってしまう。

 それはとてもとても恐ろしいので、出来るだけニンゲンの前に出て行きたくない。


 〔ねぇ、ダン。これで、いいかな〕


 〔いいよ、ザン。やっちゃおう〕


 だから、勇者の飲み物に、こっそりと毒を転移させたのだ。

 それまでは、馬に攻撃してみたり、石を当てようとしたりしたけど、全然上手くいかなかった。

 だから、今回は勇者本体を狙ったのだ。


 〔ねぇ、ダン。まだ、勇者は、自分が勇者だって、気づいてないよね〕


 〔うん、ザン。そうだと思うよ〕


 〔じゃあ、ころすなら、今しかないよね〕


 〔うん、そうだよ、ザン〕


 そうして毒を入れたはずなのに、やっぱり何故か上手くいかない。


 〔ねぇ、ダン。なんで、出来なかったのかな〕


 〔分からないねぇ、ザン。なんでだろうねぇ〕


 けれど、魔族はこれくらいの失敗では諦めない。


 次は勇者の周りのニンゲンを、ザンが作り出した眷属にすり替えたのだ。


 〔ねぇ、ダン。これで、攻撃し放題かな〕


 〔でも、ザン。攻撃したら、僕らが見つかっちゃうよ〕


 〔そうだね、ダン。じゃあ、眷属に、他のニンゲンを操らせよう。

 そしたら、僕らは見つからないよ〕


 〔うん、そうだね。じゃあ、大変だけど、頑張ろうか〕


 〔うん、ダン。がんばろう〕


 魔族なりに、生き残るために必死に考え、手間を掛けて実行した、傀儡化。

 当日は、ザンやダンが知らなかった『結界』に包まれていたので少し焦ったけれど、それはむしろ良いことだった。

 結界は、ニンゲンの魔法とは思えないくらい、とても良く作動してくれて、魔族の魔法との相性がとっても良かった。


 だから、今回は絶対に上手くいくと思っていたのだ。


 でも、突然、全ての術が崩壊した。


 勇者が力を使った時にも、大丈夫だったのに。

 まだ、勇者の卵だから、魔族の術の方が強かったのに。


 何故か、全てが崩れ去ったのだ。


 〔ねぇ、ダン。駄目だよ、無理だよ〕


 しかも、全てを崩す謎の魔法の余波は、ザンとダンの所まで届いた。

 余波のはずなのに、魔族にかなりのダメージを与えるような存在、近づいたらダメだ。


 〔ザン、帰ろう、帰ろう? 怖いよ、怖い〕


 〔ダン、帰ろう。とっても、怖いよ〕


 かつての仲間達のように、ニンゲンに倒されたくない。

 だから、2人の魔族は一目散に逃げ帰って行った。


 これだけ臆病だからこそ、2人は最後まで生き残れたのかもしれない。


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