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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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33.事情聴取



 大事件で幕を閉じた武闘大会の翌日は、当然のごとく緊急休日となっていた。


 今のところ犯人は不明だが、一番疑わしいのは学園内部犯だから、教師も含め、外出禁止令が出されて各自寮の自室で待機している。


 だが、キアラはもちろん重要参考人として魔法兵団からの呼び出しを受けていた。

 件の試合を間近で見ていたし、当事者であるルーレストやエルデと直接の関わりがある。

 更に、軍の事情にも理解があるので呼び出してもなんの問題も無い。


 と、いうことでキアラはベルクフォル元帥閣下とグライナー魔法兵団長という豪華すぎるメンバーに事情聴取をされることになった。


 (……良かったあぁ! 屁理屈こねてでも、アズーラ中尉を呼んでおいて!)


 そう。

 今回取り調べを受けるのはキアラ一人ではない。


 当日、曲がりなりにもキアラ・レンツァーの応援として武闘大会に行っていた、アズーラ中尉も対象だ。

 本来なら1人ずつの事情聴取だろうが、団長が気を回したのか、キアラが喋りやすいように2人にしてくれたので、心の重さは少しだけマシだ。



 元帥閣下のアイスブルーの瞳の前でも、ひとりぼっちじゃなければいい、というキアラと違って、アズーラ中尉は大変足取りが重い。


 それもそのはず、キアラは結構高い地位があるので元帥閣下と話す機会はよくあるが、アズーラ中尉にとってはまさに雲の上の存在。

 そんな相手からの事情聴取とあれば、胃も痛くなろうというものだ。


「では、今回の魔法学園武闘大会における不審事件について、ご説明致します。まず……」


 それでもアズーラ中尉は有能な軍人なので、過不足なく上官への報告を行う。

 隣で聞き役しかしないキアラとはえらい違いだ。


 その場に居た人間として中尉が一通りの説明をしたので、より詳細な内容をキアラが補足する。

 これでも、キアラの証言は、事件の当事者に直接関わった者として、かなりの重要度があるのだ。


「……ぇっと、以上が、ルーレスト殿下並びにコンラート・エルデの、大会中の動きです」


 アイスブルーの瞳に貫かれながら、何とか報告を終えたキアラはその場にへたりこみたいくらい疲れていた。


 ちなみに、精霊ヴィルヘルムのことは報告していない。キアラも、アシェのことを誰かに言われると困るのでお互い様だと思っている。

 それに、新入生歓迎パーティーで、飲み物に毒を入れられていた事も、言うべきか迷ったけれど結局は言わなかった。

 アシェのことを言わずに報告する言い訳が思いつかなかったので、黙ることを選んだのだ。


 (……バレたら、怒られるんだろうなぁ〜)


 社会人として失格どころか、軍人としては職務怠慢で懲罰ものだが、バレたらバレた時のこと、とキアラは思うことにした。


 秘密が多いのはキアラだけじゃない。

 ルーレストも、きっと隠していることが沢山あるのだろう。


 でも手の甲が光ったのは誰の目にも隠しようが無かったので、アズーラ中尉が報告していた。

 そのせいでヴィルヘルムの存在がバレても私のせいじゃないから、と自分に言い聞かせる。


 キアラがどうにか話し終えたので、元帥閣下が重い口を開く。


「ふむ。任務報告ご苦労。それにしても、不審な点の多い事件だ。

 事情聴取によると、ルーレスト殿下に過剰な攻撃をしたコンラート・エルデには全く記憶が無かった。団体予選の時点から既に記憶が曖昧だということだが、ルーレスト殿下を狙うとすれば、1年の優勝が決定してから魔法を掛けたことになる。

 それでは、効果が出るのがあまりに早いし、そもそも既知の魔法にそのような効果のものはない」


 さすがの元帥閣下でも見当がつかないようで、額に手のひらを当てている。


「……ぁあ、そういえば」


 ちょうどその時思い出した事があったので呟くと、ただでさえ苛立っている元帥閣下の視線に殺されそうになった。


「……ご、ご、ごごごめんなさぃっ……」


 怖くて怖くて仕方がないので出来るだけ小さくなるように背中を丸めるキアラ。


「キアラ・レンツァー魔導師。報告に不足があれば、即座に補足するよう」


 (……ぁあ、めっちゃ怒ってるぅ)


 怖いけれど、ここで黙っていてもいい事はない。

 元帥閣下の機嫌が悪くなるだけだ。


「……ぇっと、ルーレスト殿下の、個人戦の1回戦の相手、少し、変だったと思います……」


「変、とはどのように?」


「……ぁの、魔力が、ちょっと、変わった感じがして、ぇっと、、魔境みたいな、魔力が、あったような気が……」


「魔境のような魔力を感じたと? そういう重要な事は先に報告しろ!」


「……ご、ご、ごごごごめんなさいっ!」


 キアラとしては隠したつもりではなく単にうっかり忘れていただけなので、とりあえず全力で謝っておく。


「しかし、レンツァー魔導師が魔境の魔力を感じるということは……。

 いや、とにかく該当者を集中的に調査することとしよう。

 他に、変わったことは無かったか?」


「……たぶん……。エルデ君も、同じ感じでしたよ」


「レンツァー魔導師、貴殿はもう少し報告の必要性というものを理解せよ。

 1回戦の相手だけなのか、コンラート・エルデも同じだったのかで、調査は変わるだろうが!」


「ひぇえええ、……ごめんなさぃっ!」


 元帥閣下、かなりお怒りである。

 隣のアズーラ中尉をちらっと見たら、今にも卒倒しそうなほど真っ青な顔色で、最早目を開けたまま気を失ってるんじゃないかというほどだ。


 そんな中尉を見ると、キアラは何故かちょっとだけ元気になった。

 人間、自分より追い詰められている人が身近に居ると、何となく安心するものだ。例えそれが自分のせいだとしても。


「しかし、本当に謎の多い事件だ。

 そもそも何故あのタイミングでエルデへの魔法が解けたのだろうか。

 しかも、教師ガングの傀儡化がいつ実行されたのかも分からぬ。本物は調査中だが、生きて見つけるのは難しいと予想されておるな……。

 両者への魔法が一斉に解けたと考えると、術者の魔力不足と考えられるが、そこまで間抜けなことがあるだろうか。最後の一撃の分だけ魔力が足りないなど、それこそ学生でも起こらない。

 ……レンツァー魔導師、何かしたか?」


 不審な点を列挙しまくった元帥閣下は、案の定と言うべきか、キアラの所業を疑っているらしい。


「……なにも、してないですぅ……ぇっと、強いて言うなら、叫んだくらいですかねぇ……」


 アイスブルーの視線が怖いので、出来る限り思い出しながら話す。


「ううむ。何か影響した可能性はゼロではないが、魔法への干渉は難しいだろう。

 レンツァー魔導師が自覚なく魔法を行使したのだとしたら、それは操られているのと同じだ。

 もしもレンツァー魔導師を操れるのならば、コンラート・エルデではなく貴殿を使う。

 そもそも貴殿は魔力が多く魔法抵抗が高すぎるので、操られることは流石にないだろう」


 ベルクフォル元帥閣下は長々と喋るが、何も判明していないも同然だ。


「しかし、この一件は、ルーレスト殿下の命を狙う者の仕業だ。一連の事件と黒幕は同じと考えるべきで、それを阻止したという点でレンツァー魔導師の行動は評価されるものだ」


 (おっ、珍しく元帥閣下が褒めてくれた)

 キアラは軍人で、魔境の最前線で戦っているといっても、普通に16歳の女の子なので、褒められると嬉しい。


 (元帥閣下の言う通り、ルーレスト殿下は誰かにめちゃくちゃ命を狙われてるんだよね……。

 私が任務に就く前に何があったのかは知らないけど、この数ヶ月で2回も狙われてるんだから、大変だよ)


「キアラ・レンツァー魔導師は、引き続き任務を続行するように。

 くれぐれも存在が露見しないよう、最大限の注意を払うよう。

 ルーレスト殿下はもちろん、殿下を狙う連中にも、決して正体に気づかれぬよう活動せよ」


「……はぃっ!」


 元帥閣下の命令は、軍人としてかなり大切なものだと思う。


 だからちゃんと返事をしたし、慣れない敬礼もしておいた。

 ちょっと不格好かな、と自分でも思うけれど、アズーラ中尉はキアラの敬礼の出来栄えを気にする余裕も無さそうだからいいや、と思うのだった。


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