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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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28.武闘大会へ向けて



 あれだけ頑張って勉強した中間テストが、ついに終わった。


 のだが。


「……ぁの、エルデ君……?」


「どうした?」


 教室でエルデに話しかけることなんてほとんど無いのに、珍しく口を開いた。


「……今日、生徒会、だよね……?」


「ああ、そうだけど」


 いつもと違うキアラに、エルデは不思議そうだ。


「……今日、補習があるから、遅れる、って、伝えてもらえるかな」


「お前、マジかよ。座学が壊滅的だとは思ってたけど、補習になるほどだったのか?

 何の科目がダメだったんだ」


「……ぇっと……術式学、魔力論、詠唱学、魔法学史、魔法陣学、かな……」


「マジでか!? 多すぎるだろ。

 でも、キアラはちゃんと勉強してたしめちゃくちゃ頑張ってたのにな。

 分かった、生徒会には言っておくから頑張って来いよ」


「……ぅん」


 エルデが、キアラの頑張りをちゃんと見ていてくれた上で応援してくれることが、嬉しかった。




「……す、すみません……遅くなり、ました……」


 今日の分の補習が終わって急いで生徒会室へ行くと、もうそれぞれの仕事は始まっていた。


「キアラ君、久しぶり。テストが出来なくて補習になったんだってね。

 そこまで大変な状況だと知らずに仕事をさせて、申し訳なかったよ。

 期末テストは全力で協力するからね」


 ルーレストはそうして理解を示してくれているが、キアラとしては申し訳ないばかりだ。


「それで、補習が終わったなら一緒に行くか?」


 キアラと同じ書記のウェブはまだ出て行かずに待っていてくれたらしい。


「……ぁの、書記って、何を、するんですか……?」


 分からないことはすぐに聞く、というのが最近習慣化されつつあるキアラは、ウェブに訊ねる。


「書記の役目は諸々の調整役だな。俺は三年連続やっているから、もう慣れている。

 来年はキアラがすることになるだろうから、きちんと見ておいてくれ」


「……はぃ」


 3回目ともなると流れがよく分かっているようなので頼りになる。ウェブが生徒会室から出て迷いなくどこかへ行くので、ついて行く。


 そして、そんなキアラにはもう一つ気になることが。


「……ぁの、なんで、ウェブ先輩が、会長じゃないん、ですか……?」


 今までずっと疑問だったけれど、訊く機会がなかったのだ。


「それはだな、俺よりも、ルーレスト殿下の方が、会長に適任だと思ったからだ」


 キアラからすれば、ウェブは三年だし、ルーレストは二年だ。

 今年はウェブがやって、来年ルーレストでも良いように思うのだが。


「ルーレスト殿下は、素晴らしい人だ。

 特に、まだ学生だというのに外交面でも成果を上げているし、魔法の使い方も抜群に上手い。

 魔力量の多い天才とは違って、使い方が繊細で滑らかなんだ。

 それだけ努力出来る秀才で、だからこそ俺らのことを、よく分かってくれる。

 そういう人が上に立つべきだと、俺は思ったのさ」


 饒舌に語るウェブは、ルーレストのことを心の底から尊敬しているのだろう。

 それがキアラにも充分伝わるような、熱い瞳をしていた。



「よし、じゃあ団体戦のスケジュールを組んで、発表するぞ」


 各団体の代表が集められていて、みんなの前で平等にくじ引きを行うのだ。

 ウェブが仕切ってくれるので、キアラは後ろで表に名前を書き入れていく。


 そして時間が合わなければ調整していくウェブの仕事の進め方は、キアラの一番苦手な分野だから、見ていて参考になる。


「よぉし、これで決定だ! 来れなかったら相手の不戦勝だからな! 遅刻すんじゃねぇぞ!」

「うぉおおー!」


 大声でウェブが宣言すると、各団体の代表たちは雄叫びを上げる。

 キアラにとって、それは軍でよく見る光景だけれど、こんな所でも同じなのだと思うと妙に面白かった。



 そして、テスト直後の魔法実習の授業では、もちろん武闘大会の個人予選が行われた。

 辞退も出来るがAクラスに入るような面々はほとんどが軍の魔法兵団を目指す人なので、活躍の機会に目を輝かせている。


 キアラももちろんそのうちの一人で、最近何もいい所がないけれど、戦闘なら自分の領分だと息巻いている。


「次! ソフィア・シュタール対キアラ! 始めっ!」


 初戦の相手は入試の順位で決められて、教師の合図で試合が始まる。


 だが、キアラは魔法を使おうとして、そのまま身体が固まってしまった。


 頭では、分かっている。

 ここは試合用の結界の中で、相手に怪我をさせることはありえない。


 けれど、人間に向かって魔法を放とうとするのは、キアラの深いところにあるトラウマをフラッシュバックさせてくる。


 例えば、魔力暴走で酷い火傷を負わせてしまった隣家のお姉ちゃん。


 例えば、魔境で炎に呑み込まれて消えてゆく魔獣。

 もし、あの魔獣が、ソフィアだったら……?


 そういうひとつひとつの記憶が渦となってキアラを恐怖に引き摺り込む。


 魔法を使うことが、怖い、こわいっ……!


 そう思っているうちに、目の前がソフィアの竜巻で覆い尽くされる。


 軽減されたとはいえそこそこの痛みが身体を襲うが、それよりも、心が痛い。


 その痛みを三度食らった所で、ダメージが重なりノックダウンとなった。


「……よかった、こわかった……」


 その場で膝から崩れ落ち、震えるキアラにソフィアが駆け寄る。


「キアラちゃん、どうしましたの!? 全然魔法を使えていなかったけれど、大丈夫かしら?

 って、ええっ!? 震えてるじゃない、どうしたの?」


 怖がるキアラの肩を抱いて立ち上がらせてくれ、結界の外へと連れて行ってくれる。


「……ご、ごめんなさい……こわかった、だけ……」


「対人戦に慣れていないと、そうなるのかしら。

 でも、なんだかキアラちゃんらしいわ。

 だって、あなたはとっても優しいひとだから、戦いには向いていないのかもしれないわね」


 ちがう、違う。

 自分は、これ以上ないほど戦いに向いているのに。


 ただ、怖がっているだけなのに。


「キアラ!どしたのよ!大丈夫?」


 カリナまで、心配して来てくれた。


「もう、しょうがないわねぇ。

 でも、的に当てるのと人に向かって撃つのはだいぶ違うでしょ? 仕方ないわよ。

 それより、次はエルデの試合よ? あいつの対人戦は面白みはないけど凄いから、見ておいたら?」


 カリナは慰めるだけじゃなくて、キアラの気を逸らすように、次の試合を見るのも勧めてくれる。

 その気遣いが嬉しくてたまらない。


「……ぅん。……ぁ、ありがと」


 カリナとソフィアに挟まれて次の試合を見ていると、少しづつ心が落ち着いてきた。


「……すごいね、エルデ君」


 入学試験の時に見た、特大の炎の球。

 それを相手よりも速く生み出すことで、抵抗する術もなく一撃で倒すのは圧巻のひと言だ。

 カリナが『面白みは無いが凄い』と言うのがよく分かる。


 魔導六師と呼ばれて高い地位を貰っておきながら、何も出来ない自分とは違う。

 そうして自己嫌悪に陥りそうなキアラに。


「いいじゃないの、人には向き不向きがあるのよ。エルデは対人戦に向いてるけど、キアラは違うことで向いてることがきっとあるから。

 ね?」


 そうして慰めてくれる優しい友だちの存在が、キアラにはとっても嬉しかった。




 結局各学年の予選の結果、生徒会からはルーレスト、イヴ、ウェブ、エルデが本選出場となった。

 王族でもシードはないので、完全実力主義だ。


 ルチアは対人戦が苦手らしく、元々出場を辞退したそうだ。次からはキアラもそうしようと、固く心に誓う。


「では、これから忙しくなるが、各自頑張ってほしい」


「はいっ!」


 こういう時、ルーレストの言葉は何か人を惹きつける力があると思う。

 みんなが自然と頑張りたいと思えるような、そんな空気感があるのだ。


「それで、本戦に出場しない二人には、結界維持の魔力供給を頼みたいんだ。

 特にキアラ君は、入学試験の時点ですら、かなり高い値を出しているだろう?

 よろしく頼むよ」


「……はぃっ!」


 普通は3人でひとつを受け持つそうだが、キアラなら一人で充分だ。

 それに、最近では魔力操作が上手くなったので魔導具を壊す心配もない。

 自分の成長具合に、少しだけ心が軽くなるキアラだった。


 ちなみに。


「お兄ちゃん、来てくれるんだって!」

「そうか。よかったな」


 ウェブは大して興味が無さそうな返事だったが、イヴ先輩がとてもとても嬉しそうだったので、工作した甲斐があった、とキアラも喜んだとか。


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