27.魔導六師命令
中間テストまで残り数日、という週末。
相も変わらず魔法兵団に帰り、アズーラ中尉との勉強会をしていた。
もはや中尉は週末の方が仕事が忙しいのではないかという有り様だ。
「あの、アズーラ中尉。
武闘大会、来てくれませんか……?」
どういう予定をしているか分からないので恐る恐るそう聞くと。
「いえ、当日は部外者の出入りもありますから、自分は兵団で待機しています。
軍の上層部の人事も観戦に行きますので、滅多なことは無いでしょうが、備える必要はあります」
(ううむ……頑なだ……)
イヴ先輩もそうだが、アズーラ兄妹は真面目過ぎやしないか。
それでもキアラは諦めずに考える。
(そうだ、ベルクフォル元帥閣下ならどうするかな……あんな感じで……断れないように……)
キアラが苦手とする元帥だが、こういう時には非常に参考になる人だ。
「……ぇっと……魔導六師、キアラ・レンツァーの、命令です……。
武闘大会当日は、人の出入りが多いですから、警護任務に応援を、要請します……。
しかし、極秘任務のため、表立った行動は慎むべきです。
カモフラージュとして、妹の晴れ舞台を見に行ってくださいっ!」
めちゃくちゃ考えながらゆっくり話したが、ギリギリ通るような言い分だったんじゃないだろうか。
キアラとしては最後の一文の後半だけ言えればそれで良かったともいえるが。
キアラは自分の発言に満足しているが、実際の所上官命令だけで事情説明まではせずとも良かったのだが、そんなことは彼女は知らない。
「はっ!」
命令です、と自分で言ったのに、アズーラ中尉に敬礼をされることには慣れなくて、少し居心地悪くなるキアラだった。
でも、心做しかアズーラ中尉も嬉しそうなので。
(兄妹の仲が良いって、いいよね……)
キアラはなんだかほっこりした。
「あと、アズーラ中尉、これは全然別のお願いなんですが」
「はい、どうしました?」
「中尉がこの前やってくれた、私の魔力暴走に反応して結界を出すやつあるじゃないですか、あれを魔法陣にすることって、出来ますか?」
手芸部で考えたことを、実際やってもらおうと思っているのだ。
「理論上は出来ますが、どう使うおつもりですか?」
「私の服のどこかに刺繍で刻みこんでおいて、いつでも発動出来るようにしたいんです。
刺繍での固定化は自分で出来るので、それ以外の所をして欲しいです。
イヴ先輩から、魔法陣に詳しいって聞きましたけれど、出来そうですか?」
「なるほど。妹と仲良くしてくれているようで、兄としては嬉しいですね。
しかし、魔法陣が得意なのは自分ではなく自分の兄ですので、作成には少し時間を頂けますか。
大きな魔法は維持に魔力を食うのですが、レンツァー師が運用するのならば、考慮しなくても大丈夫ですよね」
「はい、私の魔力が足りないことは、たぶんないと思うので。できるだけ早く、お願いします」
「もちろん。ついでに、魔法陣学の復習もしますか?」
お願いは聞いてくれるが、やっぱりアズーラ中尉は厳しい先生だと思う。
その後もみっちり教えてもらったけれど、テスト範囲まではまだ進めていない。
キアラは諦めてできる範囲で頑張ろうと思った。
ちなみに後日、めちゃくちゃ大きな魔法陣の図案がアズーラ中尉の兄から送られてきたので、ローブの裏地に刺繍しようと頑張るキアラだった。




