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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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25.絶望的な座学



 今日も今日とて、授業についていけないキアラは放課後一人教室に居残って勉強をしていた。


「わっ、まだ居たのか」


 ガラガラと大きな音をたてて教室のドアが開き、エルデが入ってきた。


「……」


「お前、まだ勉強してんのか。そんなにガリ勉っぽくないのにな。

 俺は忘れ物取りに来ただけなんだけど、課外活動には行かないのか?

 勉強もいいけど、実地訓練として課外活動は結構いいぞ」


 さすが優等生らしいアドバイスをくれたが、キアラはそれどころではないのだ。


「……勉強、分からないから……他のことは、出来ないかな……」


「そうなのか。んー、確かにそのテキスト、中等部でもかなり前半に使う物だな。

 平民出身だからか?」


「……ぅん、そぅ。学校、行ってないから」


「はっ? マジかよ」


 唖然とするエルデに、キアラはテキストを読みながら続ける。


「……10さいまで、初等学校に、行っただけ。魔法は、知らないし、勉強するのも、慣れてない」


「マジか。それでよくあれだけの魔法を使えるな。本当に困ってるなら、教えてやろうか?」


 エルデとしては社交辞令くらいのつもりで言った言葉だが、


「……ぅん、おねがい」


 縋るような目で頼まれては断れなかった。


 エルデにとって、座学は魔法を使う前に一通り習得しておくべきものだ。

 というか、理論を知らないのに魔法を行使出来る時点でどうかしていると言わざるを得ない。

 言葉を知らないのに喋っている、並に訳が分からないことだ。


 だが、目の前の少女は実技で自分とほぼ同じ成績を叩き出したにも関わらず、座学が壊滅的な状況。


 エルデにとってははるか昔にやったことに、今真剣に取り組んでいるキアラ。

 それも、平民であるがゆえに学校へ行けなかったせいだという。

 あまりに可哀想なのでキアラが今やっている単元を一通り解説したら。


「……エルデ君、ありがとう。一人だと、難しかった」


 本当に嬉しかったのだろう、とエルデにも分かるほど可愛らしく笑った。

 その笑顔から視線を逸らしつつ。


「ここで勉強するより、生徒会室でやれば?

 先輩も居るし、教えて貰えるだろ」


「……でも、申し訳ないよ。出来ないのは、私なのに」


「別に毎日通いつめなくても、たまに行けばいいじゃねぇか。

 俺に頼るほど追い詰められてるんだろう?」


「……そぅ、かも。教えて貰えそうか、行ってみるね」


 キアラは以前なら分からない事を聞こうともしなかったし、出来ない事からは全力で逃げる方針だった。

 だけど、学園へ来て、ちゃんと勉強しよう、分からなかったら誰かに教えて貰おうと思うようになった。


 それは、間違いなくキアラの成長だ。




「……ぁの、ここで、勉強してもいいですか?」


 翌日生徒会室に行くと、書記のルーク・ウェブが一人で仕事をしていた。


「ああ、もちろんいいぞ。分からない所があったらいくらでも聞けよ」


 大柄な体躯に見合わず優しい雰囲気の人なので、キアラは遠慮なく質問してしまう。


「お前、本当に大丈夫か? 昨日エルデに会った時に、お前の座学がやばいって聞いたが、ここまでとはな。

 魔力量があるからって、これで学年2位になれるってどういう事だ?

 しかも、エルデが居るから2位なだけで、普通ならぶっちぎり1位だよな……。

 どうなってんだ?」


 ひとりブツブツ呟くウェブの事がよく分からないキアラだけれど。


「キアラ、お前、本気で頑張れよ!

 生徒会室はほぼ誰かしら居るから、毎日来た方がいい。じゃなかったら落第しちまうぞ!」


 3年生の先輩に落第すると脅されると、本気で頑張らないといけないと思った。




「うえぇん、終わらないよぉ……」


「きあら、だいじょうぶ?」


「大丈夫じゃないってぇ……」


 ある日の夕方、キアラの泣き言が寮の部屋中に響き渡っていた。


「明日は小テストがめちゃくちゃ重なってるんだよ。クラスメイトですら騒いでたのに、私が出来るわけなくない!?」


「ニンゲンは、大変そうだねぇ」


 お気楽そうなアシェを見ているとイラつくくらいにはキアラの心は荒んでいる。


 点滴をしながら勉強する羽目になっていて、魔力の腕を使えるようになっていて良かった、と妙な方向で安心するキアラだ。


「でも、ニンゲンも、精霊の言葉、勉強するんだねぇ」


「えっ? どういうこと? 今やっているの、古代語っていうんだけど、もしかしてアシェ、読める?」


「うん。読めるよ。そっか、魔法使うときは、ニンゲンも、精霊と、同じことばだね」


 詠唱と呪文構築のために古代語は必須なのだが、キアラは覚えられなくて困っていたのだ。


「分かってるなら言ってよ!」


「でも、きあらが、がんばってるから」


 確かに自分でやらないといけない事だけれど、今はそれ所じゃないほど追い詰められているのだ。


「あのさ、蝶々の姿でも読める? こう、いつもみたいに帽子に止まってて……」


 実際やってみると、テスト範囲の問題集をアシェがスラスラと解いて答えを教えてくれた。


「よしっ! アシェ、明日はこれでよろしく」


「うんっ」


 アシェは自分が役立っている実感があって嬉しそうだ。


 実際の所かなりカンニングっぽいというかバレたらアウトな気はするが、キアラは追い詰められているのだ。

 落第なんてしようものなら、元帥閣下のアイスブルーの視線に刺し殺されてしまう。


 しかも、明日の小テストはこれだけじゃないのだ。


「あと、詠唱学と魔法学史か……」


 まだまだ終わらない勉強に、途方に暮れるキアラだった。



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