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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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13.魔力操作は自由自在

 


 翌日午前の座学も、昨日同様絶望的だった。

 先生はサラサラっと喋るしクラスメイトも普通に聞いているが、キアラにとっては初耳のことばかり。


 でも、午後からの選択科目、魔力操作実習は非常に楽しかった。


 担当教師は実技試験の時の厳しそうな女教師、カレン・フルールで、キアラにとって楽しくよく分かる授業だ。


「この授業は、魔法を行使するためだけのものではございませんの。魔法は緻密性が何よりも大切で御座いましょう?

 魔力を放出するだけなら、魔獣にだってできますわ。

 あなた方は魔法使いなのですから、緻密で正確に編まれた美しい魔法を行使致しましょうね」


 確かに、言われてみればキアラの魔法は魔力をただ投げつけているだけに等しい。

 魔獣と同じだと言われたら、全くもってその通りだと思う。


 今回は初回なので、実際の魔法は使わず魔力を動かすように意識してみる、というだけだったが、キアラにとっては分かりやすく面白かった。


(魔力って、こんなに動くんだ!)


 今までキアラにとって魔力とは邪魔なもので、他人に嫌われる原因だと思っていた。

 だから薬やアシェの力で無理やり抑え込む事ばかり考えていたのだ。


 でも、フルール先生の言う通りにしたら、全然違う面を見せてくれた。

 くにゃくにゃと柔らかく、又は鋭く、又は大きく広がって。

 キアラの思い描く通りに動いてくれる。


「キアラ嬢! あまり調子に乗って魔力を使っていると、魔力不足で倒れますわよ!」


 フルール先生は遠くから注意してくるが、楽しくなりすぎているキアラには届かない。


(わあぁ、魔力の動き、おもしろい!)


 薄く広げてどこまでいけるか試している時に、そこに被せるように魔力を広げられた。

 誰の魔力か分からなくても、反射的にそれを飲み込もうと動かす。


「キアラ嬢、聞いていますか! 一度、操作をキャンセルしなさいっ」


 動く魔力に夢中になったキアラには、先生の声は届かない。


(よいしょっ!)


 抑え込もうとしてきた先生の魔力を、逆に飲み込んでしまった。

 それで満足したキアラが、魔力をするすると吸い込むと、先生がこちらに走ってくる。


「体調は悪くありませんか。無理をするものではありませんよ」


「……はぃ」


 なんだかよく分からないが、心配させてしまったらしい。

 先生は知らないけれど、キアラの魔力は測定器を壊すほどの量があるので、このくらい、全く大したことじゃなかった。



 一方、教科担当のフルールにとっては、驚愕どころの騒ぎではない。


(この子、どれだけ魔力操作に習熟しているの!?)


 本来、この国では魔力操作は軽視されがちだ。

 魔法の威力が多少上がるとはいえ、それは魔力量の多い人間を採用すればいいし、術式を改善してより魔力効率の高い魔法にした方が有効だ。

 何より、繊細すぎる作業である魔力操作を実戦の真っ只中で行うのは非常に難しい、との理由であまり重要視されない。


 ゆえに、術式学や魔法実習は必修科目だが、魔力操作は選択科目なのだ。


 そんな扱いなので、最前線でしのぎを削る軍人でも、魔力を鋭くするイメージを身につけるので精一杯。

 教えるフルールでさえ、ゆっくりもっさりと魔力を動かすのがせいぜいだ。


 それなのに、この無名の一年生は、まるで子どもが粘土で遊ぶかのように、無邪気に自由自在に魔力を動かしている。

 魔力を見れる者は少ないが、フルールは魔力視の能力があるので魔力操作に長けているし、長年その授業を教えている。


 そんな彼女をしても、ここまで自由に魔力を扱える人は、見た事が無かった。

 しかも、フルールが抑え込もうと広げた魔力を、いとも簡単に飲み込んでしまった。


 相当な力量の差がないと不可能なことだ。


 無名の子が学年トップを取る、ということは少ないが全く無いことではない。

 特に、この学校は強い魔法使いを育てるための場所なので、市井に埋もれて魔法教育を受けられなかった子どもを見つけ、教育することも責務だ。

 だが、ここまで魔力操作に習熟しておきながら、無名だと言うことがあるだろうか。


 もし、個人の努力でここまでの技能を身につけたのならば、それは空恐ろしい天才と言うべきだ。


「キアラ、あなたにはこの授業は必要無さそうですね。他の授業を受けることを勧めます」


「ええっ! ……楽しいのに……」


 キアラにしては珍しく大きな声を出した。

 それくらい衝撃だったのだ。

 この学校に来てから、唯一面白いと感じた授業で、先生から必要無いと言われたのは。


「楽しい、ですか。貴女がそう感じるのであれば、この授業を取ることも、良いやもしれませんね」


 フルールは、嬉しかったのだ。

 魔力操作はとにかく日の目を見ない分野で、授業を受けているのはまだまともに魔法を使えないレベルの子たちばかり。

 魔法を使えるようになる前の分野であって、探求し、習熟するような分野ではないと思われている。


 それなのに、この大人しそうな子が先生に反発してまでこの授業が楽しいと言ってくれたことが、たまらなく嬉しい。


「……これ、やりたいです」


 試験時や入学試験の順位発表の時には、あまり目立たず大人しい子だと感じた。

 けれど、魔力操作に目を輝かせるのは、昔の自分によく似ていると思う。


「では、貴女には特別課題を作りましょう。来週から、期待していなさいな」


 フルールとて、長年教壇に立ち続けてきた教師だ。才能の芽を見つけたら、それを伸ばしてやりたいと強く思うのだった。


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