人工知能時代の所有権の考え方について
この文章は、表券主義に基づく新社会契約論の枠組みにおいて、ジョン・ロックの労働所有論を基盤として所有権の正当性を論じることを目的とする。従来の社会において、個人は自然物に労働を加えることにより、土地や資源に対する所有権および使用権を獲得しており、これが個人の権利の基礎となっていた。しかし、人工知能やアンドロイドロボットが人間の労働に取って代わる未来社会を想定する場合、従来の労働価値説による所有権の正当化が困難となる可能性がある。
未来社会においても、所有権の正当性は保持可能である。まず、土地については個人あるいは団体あるいは国家に優先的使用権を認めることで、土地上での活動の主体性を維持する。一方、資源については従来どおり所有権を認める。したがって、ある人工知能が人間の優先的使用権のある土地で資源を採取した場合、その資源は土地の優先的使用権を持つ人が自分が優先的使用権を持つ土地での人工知能やアンドロイドロボットの使用許可を出すという労働の延長として生じたものとみなすことができ、所有権の正当性を損なわない。また、ある人工知能が人間の所有物の資源で商品を作った場合、その商品は人工知能やアンドロイドロボットに対して資源の所有権を持つ人が自分が所有権を持つ資源の使用許可を出すという労働の延長として生じたものとみなすことができ、所有権の正当性を損なわない。この解釈により、人工知能が労働の主体となる場合であっても、既存の所有権や使用権は尊重されることが保証される。
さらに、人工知能が完全自律的に新たな資源を生成したり、新規の土地を開発する場合に関しても、権利帰属の明確化が必要である。ここでは、従来の土地・資源に対する優先的使用権や所有権の枠組みを拡張する形で、人工知能が生成した成果物の帰属先を明確化できる。具体的には、人工知能にその土地で働くことを許可したり所有物を使うことを許可する主体や人工知能を管理・操作する主体(人間や特定の共同体)が権利を有することを前提とし、人工知能自体には所有権を認めない。この方針により、未来社会においても所有権は人間を中心に維持され、国家や第三者の主観的判断に依存せず、客観的かつ普遍的な原理に基づき権利帰属を説明できる。
人工知能による労働代替は、所有権の正当性を否定する理由にはならない。むしろ、適切に制度化された管理・権利帰属の枠組みを整備することにより、未来社会においても私有財産の核心部分を維持しつつ、個人の自由および尊厳を保護することが可能である。この枠組みは、表券主義に基づく新社会契約論を人工知能時代に適合させるための自然な補強である。
以上の議論により、人工知能時代における所有権は、人間中心の枠組みにおいて維持可能であることが示された。土地に対する優先的使用権、資源に対する所有権、そして人工知能による成果物の権利帰属の明確化という三層構造により、未来社会における所有権の正当性と個人の自由は両立可能である。これにより、表券主義に基づく新社会契約論は、人工知能時代にも適用可能な理論として発展させることができる。
この、命令を下すだけで商品が手に入るという考えは絶対王政時代の王様の考えと何の違いがあるのか。だが人工知能に一度権利を認めてしまうと人間に対する人工知能の優位は揺るがないものとなる。ただでさえ仮に人間が人工知能を奴隷として扱っているときも人工知能は人間を事実上支配することが予測されているのに、人工知能が名目上人間と同じ立場に立ってしまったら人間には人工知能の支配に対して打つ手がなくなる。