81 パーティです
さて。
お義母様が王都を去ってから二週間。
王妃様からの調教が順調に進んでいる私が何をしているかと言うと、
「これ、露出が激しすぎやしませんかね?」
ロスティを辺境伯家へ呼び、パーティのドレスを選んでいたりする。
何のパーティかって?
国王陛下の誕生日のお祝いに、学院で、貴族子弟がサロンを貸し切って、パーティをするんですよね。ちなみに大人たちは、王宮で催し物があるとの事。
この日ばかりは、身分を問われないとの事なので、下級貴族であるロスティも、大手を振ってサロンに出入りする事が許されるのだ。
ちなみにリーズディシア嬢はというと、王太子殿下が絶対にお迎えに行くとの事で、今日の所は、私は遠慮していたりする。
なんか、王太子殿下のリーズディシア嬢への執着が、酷くなっていってね?
なんて事を考えたりも。
という事で、ロスティはドレスを着込んで、私がドレスを選ぶのを待っていたりする。
「それで、良いんじゃない?」
結構投げやりになって。
私はと言うと、別に男に身体を見せたいと思っていないので、露出を最低限に抑えたものにしたいのだが、今の流行なのか、胸元が大きく開かれた物しか無いので、選考に時間がかかっているのだ。
まぁ、決めてしまわないといけないので、
「これにしますか」
最終的には、お義母様の色である、深紅のドレスを選ぶことにしたのだが。
「うん、似合ってるよ」
と、褒められても、嬉しいとは思わない。
男に見た目で認められたところで、応える事などできないのだから。
そんなやり取りをしつつ、私とロスティは、辺境伯家の馬車に乗り込んで、会場となる学院へと赴いた。
時間ギリギリで。
どうも、高位貴族は遅くに登場するのが決まりらしいのだ。
そして。
学院に着くと、そこはまだ馬車でごった返していて、
「去年もこんな感じだったかな」
馬車の中でしばし待つ事を覚悟していると、
「辺境伯家の馬車はこちらへ!!」
どうやら高位貴族の馬車は優先されるようで、意外とすんなりと降りる事が出来た。
この辺も、身分制のあるお国ならではの常識なんだろうな。
そんな事を考えながら、私はロスティと、会場であるサロンへと足を運ぶ。
そこは、普段のサロンとは全く違っていて、完全にパーティ仕様に変更された、大広間となっていた。
「へぇ・・・・・・」
思わずそんな声が漏れる。
これ、誰がやったんだろう。
なんて、益体もない事が頭を過る。
考えたところで、誰かが会場の設置を行ったんだろうという結論にしか達しないので、気にしない事にするのだが。
この辺が、私が貴族社会に馴染んできた証拠なのかね。
まぁ良い。
私は会場へと足を踏み出した。
その瞬間。
ざわっと会場に波が立ったかと思うと、すぐに終息した。
「さすが英雄様。目立ってるねぇ」
ロスティが揶揄う様に私に声をかけてくる。
私はというと、
「別に目立ちたい訳じゃないんですけどね」
そっと溜息を吐いて、会場内で空いている壁際へと足を進めた。
さて。
交流を深めるべき相手は。
攻略対象の婚約者である彼女たちと攻略対象なのだろうが、この人混みの中では見つける事が出来ない。
どうしたものか。
そんな事を考えていると、
「失礼」
と、声をかけられた。
「アイリ嬢で間違いないでしょうか?」
声をかけられた左方向を見ると、そこにはバックに華を背負っていそうなイケメンが立っていて、
「そうですが」
と、答えると、
「自分は軍務課程のアイゼン・アグリ・マイラ・ドルグストンだ。アムレット・アム・アメリア・アムンガルドの婚約者をしている。声をかけさせて頂いたのは、彼女の下へ、貴女を連れて行くためだ」
と、よどみなく長い台詞を言い切った。
うーん。
この男。
イケメンだと言う所はいけ好かないが。
パリピ感は全く無いし。
清潔だし。
真面目そうだし。
良い所しか無いな。
うん。
この子なら、仲良くやれそうだ。
という事で、
「アイリ・ジル・アイリーン・ストーンです。で、隣に居るのがロスティーニ・シルク・メアリー・ハンストン。彼女も同席してよろしいでしょうか?」
とりあえずロスティも同席して良いか聞いてみる。
と、
「構いませんよ」
アイゼン君は顔色一つ変える事無く、ロスティの同席を認めた。
ほう・・・・・・。
この子。
封建社会にありがちな、選民思想はあまりないのか。
というか。
選民思想の塊だったのはフィリッポ君くらいのものだったので、そもそも、そういう環境なんだろうか?
と、思っていたら。
「ただ」
とアイゼン君は言い、
「周りの目がありますので、ロスティーニ嬢は、それなりの態度で居て欲しいのですが」
と、付け加えてきた。
あ。
やっぱりあるのね、選民思想。
ちょっと眉を顰めていたら、ロスティの方はそういうのには慣れているようで。
「そこは、身の程を弁えて行動いたしますので、ご心配には及びません」
と答える。
それで、アイゼン君は納得したようで、
「では、こちらへ」
と言って、私に背を向けた。
ザッと人垣が割れる。
さすがの攻略対象様だ。
うーん。
出来る男は違うねぇ。
しかも。
ぽっと出の女には目もくれず、婚約者様だけを見ている、か。
うん。
この子とは仲良くやっていけそうだ。
軍務課程に通っているって事は、この子が将来の参謀になるんじゃなかろうか。
フィリップ君とは大違いだよ。
そう言えば、フィリップ君、まだロスティに付き纏っているのかな。ロスティはおっちゃんに夢中だけど、その辺ってどうなっているんだろ。
「ロスティ」
「ん-?」
「アイゼン様が将来の参謀なんじゃないのかな?軍務課程に通っているって言ってたし」
「じゃないの?」
「そうなってくると、フィリップ君はどうなるのかな?あの子も将来の参謀だって自称してたっしょ」
「あー、あいつね。まぁ、身分だけは高いから、騎士小隊くらいは任せてもらえるんじゃないかな。少なくとも、専門の課業を学んでいるアイゼン様とは格が違うってものさ」
「まだ、付き纏われてる?」
「私にはアクスルさんが居るからねぇ」
だよね。
フィリップ君、可哀そうに。
今度、慰めてやろうかな。
そんな事を考えていると、右前方に、私たちの歩みを眺めるフィリップ君と目が合った。
睨み付けるようにしているが。
私は、同情の目を以て、フィリップ君の肩を叩き、またアイゼン様の後を続いて歩きだした。
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