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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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75 現場の意見です

 「アクスルさんの言葉、そんなに気になる?」


 ロスティがそう聞いてくるので、私は、


 「うん」


 と、そう空返事をした。

 おっちゃんの言葉というのは、西の王国が動いているかもしれないという情報だ。現状、西とは同盟とまではいかないが、不戦条約を結ぶ間柄だ。

 だが、西の王国の北側にある、チュント大公国という所が、きな臭い動きをしているというのだ。

 軍事的な動きをしている訳ではない。

 ただ、シンフォース王国の北西部にある、とある地方の領有権を主張し始めたというのだ。

 西のアンザス王国に、奪還の協力を求めているらしい。

 まぁ、元はチュント大公国が、シンフォース王国の隙をついて領土拡大を狙った事に端を発しているらしいのだが。

 アンザス王国との戦いがあった三十年ほど前の事、その機に乗じて領土拡大を図ったチュント大公国はシンフォース王国の手痛い反撃にあい、領土まで侵攻されて、その地方の割譲を余儀なくされたという訳だ。

 都度、チュント大公国は、失った領地の返還を目論んでいる。

 で。

 その話が、再再燃している。

 八年ぶりの話なんだとか。


 「まぁ、あの国はいつもああだから」


 というのが、ロスティの意見だが。

 シンフォース王国が東とやり合った隙をついて、そういう話が出てきたと考えるのが妥当ではあるまいか。

 当然、国の上層部は知っている事なのだろうが、一介の冒険者がそんな情報が掴んできていて、学院の生徒がそれを知らなかったという事は、現場では相応の小競り合いがあっていると思ってもおかしくはない。

 この世界の冒険者は、官製の傭兵みたいなもので、俗にいう、ファンタジー世界の自由な冒険者とは違う。

 実際に現場に出ている兵士と同じだ。

 その現場の人間が語る言葉を無視する事は出来ない。

 おっちゃんの年齢の冒険者が語るということは、八年前とは違うということだ。八年前という事は、おっちゃんは十九だったはずで、その時の領土問題の事も知っているはずだ。

 わざわざ口にするという事は、だ。

 違う、と見た方が良いだろう。

 私は危険な状態だと思うのだが。

 ロスティに、この感覚が分かるだろうか。


 「でも、あそこは弱兵の集まりだって言うよ」


 分からなかったようだ。

 これは、リーズディシア嬢や王太子殿下に相談する案件だな。

 私はそう決めて、家路を急いだ。


 ※


 翌日。

 王太子殿下の相手が終わって。

 鼻血を拭き取る王太子殿下に向かって、私は、


 「王太子殿下。ちょっと、課業が終わったらお話があるのですが、よろしいですか?」


 そう切り出した。


 「珍しいな。お前がそんな事を言いだすとは」


 「昨日、市井で聞いた話を、王国としてどう受け止めているのか、お聞きできる範囲内でお聞きしておきたいのです」


 「何だ、その話とやらは」


 「リーズディシア嬢も加えてお話をしたいので、課業後のサロンで改めてお話をさせていただきたいのですが」


 「そうか、わかった」


 王太子殿下は一つ頷いて、


 「では、リズと一緒にその話を聞けば良いのだな」


 そう確認してきた。


 「ええ、それでお願いします」


 と言って、私は若干浮き出た汗をぬぐうためにホムンクルスから手拭いを受け取りに訓練場の端に足を向けた。

 そして。

 汗を拭って、魔術師過程の棟へ、初めて訪れた。


 「リーズディシア・エル・アンリ・フェンデルトン嬢を探しているのですが、どこに居られるか、ご存じですか?」


 「脳筋の騎士課程の生徒に、教える義理はありません」


 「それ、王太子殿下に下問されても、同じ事を言えるのですか?」


 「うぐっ」


 「騎士だけでも魔術師だけでも、その力は十全に発揮できない事は、貴女も分かっていると思うのですが、そういう魔術師至上主義な所、改めた方が良いですよ」


 「余計なお世話です」


 「まぁ、確かに余計なお世話ですね。それで、リーズディシア嬢の居場所は分かるのですか?」


 などと、一悶着も二悶着もありながら、私は食堂に居るリーズディシア嬢の下に辿り着いた。

 だから、


 「あら、アイリ。こんな所に来るなんて、珍しいわね。急用?」


 リーズディシア嬢はそう言った後、


 「何か、疲れていない?」


 私に向かって、そう聞いてきた。

 事のあらましを全て聞かせるのも面倒だったので、


 「リズの居場所を聞くのに苦労しただけです」


 と、それだけを言うと、


 「あぁ・・・・」


 と言って、リーズディシア嬢は納得したという顔をした。


 「騎士課程では貴女は人気者になっているかもしれないけれど、魔術課程では、それ程でもなかったようね」


 「そうみたいですね」


 「で、こんな所まで来て話をしたいという事は、何か、重要な事?」


 「まぁ、ある意味」


 「そう、で、何?」


 「それは、課業後に王太子殿下同席の下、お話しますので、サロンに来てください」


 「あら、そう。何の話かしら」


 「ちょっと昨日、気になる話があったので、王国としてどう対処しているのか、話せる範囲で話していただけたらと思っただけですよ」


 まぁ、聞いたところで、一兵卒の私が何か出来る訳ではないのだけれど。

 出来るとしたら、辺境伯領へ戻って、戦うくらいだろう。


 「と、いう事で、課業後にサロンで」


 「ええ」


 という事で、私は会話を切り、魔術師課程の棟を後にした。


 ※


 で、課業が終わって。

 私はホムンクルスたちを連れて、サロンへと足を運んだ。

 そこには既に王太子殿下が待っておられて、


 「来たか、フェンリル」


 そう言って、人払いをしてくださった。

 お茶を頂いて、


 「リズは、まだか」


 「何か、人に捕まっているのかもしれませんね」


 と、会話に詰まったので、


 「王太子殿下。剣の調子はいかがですか?」


 レベルも実力も上がってきた実感を聞いてみた。


 「あぁ・・・・騎士団長も、近衛騎士団長も、私の実力が上がってきている事を肌で感じてくれているようだ。私としては、お前に手も足も出ないから、実感が湧かないのだがな」


 そこは、レベル差も経験の差もあるから、当然だとは思うのですがね。


 「まぁ、騎士団長の剣筋が見えるようになっただけでも、成長した証なんだろうな」


 そうそう。

 前向きに考えましょうよ。

 と、いったところで、


 「お待たせして申し訳ありません、殿下」


 「あぁ、来たか、リズ」


 「回復術師の部隊の件で、魔術師過程の娘に捕まっていましたので」


 「そんな所だろうと、話していた所です」


 リーズディシア嬢が到着した。

 そして。

 お茶を頼み、席に着くなり、


 「アイリ、話って、何なの?」


 と、聞いてくる。

 なので、私は、


 「実は・・・・・・」


 と、昨日のおっちゃんの話を切りだした。


お読みいただき、ありがとうございます

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