67 茶話会の始まりです②
きゃいきゃいと騒ぎ立てて、話しかけられて、それに応えている間に、私の情報を結構抜かれた、と思う。
肝心な、転移者という所までは言っていないが。
資産が国家予算位あるという所までは言っていないが。
そして。
茶話会が開かれるお茶室の扉が静かに開かれる頃には、皆、私の事をお友達として認識するくらいまで、仲良くなっていた。
「あら、もう仲良くなっているの?」
王妃様が入ってきて、私たちを見て笑みをこぼす。
それに対し、リーズディシア嬢を始めとする令嬢は、完璧な作法で腰を落とした。
私もそれに倣う。
恐らく王妃様はそれを見て、
「今日はそういう会じゃないから、皆、楽にして頂戴」
そう言って、私達に頭を上げるよう伝えた。
衣擦れの音がして、皆が立ち上がるのが判る。それに倣って、私も頭を上げた。
「久しぶりね、アイリ」
「覚えていただき、光栄です」
「ええ、覚えていますとも。可愛らしい顔をして、騎士団の中に居るんだもの。よく目立っていたわ」
そう言うと、王妃様は、私の手を取った。
「ごめんなさいね、こんな場に、貴女を呼び出して」
こんな場、というのが、政治の話をする場、という事を先程聞かされたので、私は、
「特に問題はありません。まぁ、だまし討ちの様な感じでしたが、私が軍務の一翼を担うとお考えのようで、光栄です」
そう答えておいた。
「リズに、思う所はないの?」
「ないとは言えませんが、許容できる範囲内ですので」
「聞いた話だと、リズが貴女を見出して、ここに連れて来たという話じゃないの。市井で冒険者をやっていても大成したはずの貴女が、何故、リズの招聘に応じたのかしら」
「友人ですので」
「友人、ね」
王妃様は思わせぶりに、手にした扇を開いて口元に当てた。
「聞くところによると、貴女の周りには、その友人と呼べる娘は沢山居るのではないの?例えば、ロスティーニ嬢とか」
「確かに、彼女は友人ですが」
よく情報収集をしているな。
私は心の中で、王妃様に対して身構えた。
「では、ロスティ―ニ嬢が死地に向かえと言えば、貴女は行く?」
「状況次第ではないかと」
「でも、リズが言えば、貴女は即断で死地へと向かうでしょう。何故、リズの命令とも言えるお願いは聞けるのに、他の娘のお願いは聞けないの?」
「命令、でしょうか?」
「ええ」
「命令と捉えた事は、一度としてありませんが」
「そこが、私には理解が出来ないのよね」
王妃様が、パタン、と扇を閉じる。
そして、
「貴女、リズが王国に翻意を持ったら、迷いなくついていくでしょう?」
そう断言した。
それは、答え辛い質問だ。
実際に、リーズディシア嬢は、王太子殿下と事を構える心算で私を軍に誘ったし、上手い事王太子殿下と思いが通じ合ったからこそ、そうならなかったが、下手をしていたら、フェンデルトン派は王国に牙を剥いていた。
その時に、私は迷いなくリーズディシア嬢についていただろう。
「リズが人を集めているのは前々から知っていましたし、彼女には彼女の考えがある事も知っていました。でもそれは、アウルディールにも責任がある事だと放置していました」
でも、と王妃様は言葉を切り、
「戦争をして、互いが間違いに気付く事が出来るのであれば、それで良し、だったのです」
ただ、と王妃様は言葉を切り、
「戦況を完全に支配してしまうような、貴女のような存在を味方に付けたとしたら、それは放置できるものではありません」
と、私の目をしっかりと見て、そう断言した。
「貴女、リズの陣営から抜けなさい」
「それは・・・・・・」
考えてもみなかった。
私はリーズディシア嬢の友人で、リーズディシア嬢の陣営で槍働きをするものだと思い込んでいた。
だが、王国としては、私とリーズディシア嬢をセットにしておくことを危険視していたのだ。
それに、
「貴女、リズを盲目的に信じすぎているわ」
私の為にもならない、と、王妃様は言う。
そう、なんだろうか。
リーズディシア嬢を見ると、
「王妃様、何故、私とアイリを離そうとするのですか?」
王妃様に詰め寄っていっていた。
穏やかにだが、気迫を持って。
「リズ、西側の現状が、貴女、分かっているの?」
だが、王妃様にそう言われて、我に返り、
「分かって、います」
と、ポツリとそう言う。
「王国の為に人材を求めるのは認めます。が、己の権力を拡大するために人材を集めていると勘違いされるような行動を取るのは、許されません」
「はい」
「と、いう事でね、アイリ」
「はい」
「貴女はストーン家の養女であって、リズの部下でも、フェンデルトン公爵家の軍属に組み込まれている訳でもないわ。よって、リズ同様に、他の娘たちと仲良くやっていってくれると嬉しいのだけれど、どう?」
どう、と言われても、彼女たちとは初対面だし、何とも言えないというのが正直な所なのだが。
だが。
「リズと付き合うな、という所は、納得がいきません」
「付き合うな、とは言っていないわ。付き合い方を考えなさい、と言っているの。リズと貴女が親密になれば親密になる程、王家は、フェンデルトン公爵家とストーン辺境伯家の謀反を警戒しないといけないの」
ああ。
義父様が言っていた事か。
フェンデルトン公爵家とストーン辺境伯家が組む事によって、地方で一大勢力が出来てしまう事を警戒されているのか。
確かに、そこは注意すべき所だな。
それなら、
「分かりました」
と、答えるしかない。
しかし。
今後のリーズディシア嬢との付き合い方を考えろと言われても。
どうしたものか。
「難しく考える必要は無いのよ。リズと同様に、他の娘たちとも仲良くしてくれるだけで良いという話なの」
と、王妃様は言ってくるが、
「とりあえずは、彼女たちと話してから、になりますが」
私には、そう答えるしかない。
それを聞いて、王妃様は、
「それで良いのよ」
そう言って、満足そうに口の端を上げた。
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