66 茶話会の始まりです
茶話会の日がやって来た。
さて、リーズディシア嬢が言うところの女の子らしさとは、なんぞや、といったところなんですが。
私には理解が出来ない。
確かに、淑女とは言えないが。
でも、見た目はすんごい美人な女の子であるはずなのだ。
なにせ、私が作った、私の理想そのままの容姿をしているのだから。
城に到着しても。
会場に案内されても。
周りにいる女性で、私を上回っているという方は、ほぼ見かけない。
まぁ。
茶話会に呼ばれたという娘さん達は、皆、可愛かったが。
「それはそうでしょ」
リーズディシア嬢が、そう言う。
「あの娘は・・・・」
と言って視線の先を見ると、私たちの物とはちょっと違う制服を着て、水色の髪をなびかせた美人さんは、
「あの娘は、ランド卿の婚約者で、ジュリーネ・エル・ファム・ランカスター。ランド卿のルートでライバル令嬢になる筈だった娘よ。それは、当然美人でしょ」
そう紹介された。
って、乙女ゲームの世界でしたね。
というか。
「ランド卿って、攻略対象だったのですか」
「そうよ」
という事で、次に名前が挙がったのが。
「あの娘は、シェリアエル・アム・レイア・サドニア。フェイト・アグリ・マリアベル・ルードの婚約者よ」
フェイト様の相手か。
綺麗な娘さんだ。
「と、いう事は、フェイト様も?」
「ええ」
そうか、フェイト様も、攻略対象だったという訳か。
その他、二人も、綺麗で、可愛らしい娘さんだった。
もしかして、だけど。
「これ、攻略対象の婚約者で固められてるんですか?」
「そうよ」
「何故、私がその中に居るのでしょうか?」
「次世代の、この国の重要なポストに就く方のパートナーよ。ジュリーにしても、ランド卿を喪って今はフリーだけど、王妃様の推薦で、王太子殿下の側近になれそうな方の婚約者に推されると思うわ。で、貴女を引き合わせる事に対する理由だけれど、軍事的な面で見た時に、貴女の存在は、次世代の王国軍にとっては欠かせない存在なの。だから、軍政で協力が出来るように、女性同士で顔合わせをしておいてもらいたいと思ったのよ」
なるほど。
私は軍事的な駒として、王妃様に利用されるためにここに呼ばれたという訳か。
果ては、リズの駒として、ここに呼ばれたという訳か。
「リズ」
「なに?」
「私は、リズの友人ですよね?」
「そうね」
「私は、リズの駒になる事を了承した覚えはありません」
「そうね」
「で、この仕打ちは、私的には許せないのですが」
「分かっているわ」
「分かっていてやった事なんですね?」
「ええ」
「約束が違うのでは?」
「ごめんなさい」
「謝れば私が貴女に従うとは思わない方が良いですよ」
「アイリ。この先、貴女はこの国に必要な人材になってくるの。それを、この短期間で、貴女は国中に知らしめてしまったわ。王国は、もう、貴女を逃がさないでしょう。もう後戻りできないの」
正直言って、私はリーズディシア嬢のこのやり方を許せるものではないと思ったが、懇願するように断言してくる彼女を見て、深い溜息を吐いた。
「ずるいですよ、リズ」
「分かっているわ」
私の目をしっかりと見て、リーズディシア嬢は、
「分かっているの」
と、そう言った。
私は再び溜息を吐き、
「分かりました」
腹を括った。
どのみち、戦乱の世に出る事を決めたのも私だ。リーズディシア嬢と王太子殿下の戦争が始まると聞いて、リーズディシア嬢に味方をすると決めた時から、戦争に出る事は既定路線だ。
ただ、それが他国を相手にする事になっただけ。
それだけだ。
それに、友達なんだ。
一生付き合うくらいの覚悟で、友達になったんだ。
この世界が封建制で、リーズディシア嬢が私の上に立つという事を知っていて友達になったんだ。
時に、命令をしなければならない事もあるだろう。
それが、今だった、というだけだ。
そうだ。
私が決めた事じゃないか。
「ありがとう、アイリ」
と、そこに、
「お話は、終わったかしら?」
ジュリーネ嬢が話しかけてきた。
リーズディシア嬢と私の会話が終わるのを待っていてくれたのか。
律儀な娘さんだ。
「ええ。ありがとう、ジュリー」
「お隣の方が、あの、最近話題に上がっているアイリ嬢?」
「ええ」
「よろしくお願いします。アイリ・ジル・アイリーン・ストーンです」
「ええ、よろしくお願いします」
私の名乗りを聞いて、ジュリーネ嬢は薄く微笑んだ。
そして、
「皆、彼女は大丈夫よ。おバカなだけで礼儀作法もなっていない、騎士課程の生徒とは違うわ」
遠巻きに見ていた、他の三人に声をかけた。
すると。
「本当に、大丈夫なの?ジュリー」
と言って、まず、シェリアエル嬢が近づいてくる。
その後を、二人が続いた。
私は、猛獣かなんかかい。
恐る恐ると言った感じで。
「あの、シェリアエル・アム・レイア・サドニアです」
「私は・・・・レアノーラ・ジル・スタンサ・アルフォキアです」
「私はっ、アムレット・アム・アメリア・アムンガルド、ですっ」
三人は私に挨拶をよこしてきた。
それに、
「よろしくお願いします。アイリ・ジル・アイリーン・ストーンです」
再び、ジュリーネ嬢にしたように、名乗りを上げる。
それを聞いて、皆が、ほっとした様に胸に手を当てた。
何に安心したのか、どうやら私はすぐに暴力に訴えるような危険人物とみなされていたようだ。
そんな事、しないのに。
「大丈夫ですよ」
そう言うと、リーズディシア嬢以外の令嬢は、顔を見合わせて、
「それじゃぁ・・・・・・」
と言った後、いきなり距離を詰めてきた。
きゃぁきゃぁと、ゴブリン騒動の事やホッパドキア領での戦争の事を聞いてくる。
さて。
リーズディシア嬢はこの娘達と仲良くさせておきたいようだが、おっさん的に、仲良くやっていけるのかどうか。
さて。
覚悟を決めたのはいいけれど。
さて。
疑問が残る所だな。
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