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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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54 帝国です

 さて、山を越えて、人知れず帝国領に入ったので、


 「これよりティンギルス帝国語での会話となります」


 メアリー・プルはそう言って、言語を変えた。

 のだと思う。

 私には同じような言葉に聞こえていたのだから、仕方がない。これは、意図的に使い分けができるようにならないといけないのだろうが、私にはその方法が判らないのだ。


 「私は、正確な帝国語を話せているのでしょうか?」


 「問題ありません。発音も、単語も、全てネイティブな帝国語になっています」


 それなら良かった。


 「で、計画は、どうするんですか?」


 「まずは、帝国内に住む、王国の情報屋を当たるように言われていますよね」


 確かにそう言っていたな。

 しかし。

 スパイか。

 でも、スパイなら、ホッパドキア家の奥方が監禁されている場所を知っているのなら、奥方を誘拐されて止む無く謀反を起こそうとしていた事だって知っていたはずだ。知っているとは思えないのだが。

 それでも会いに行くという事は、何かしらの理由があるという事か?


 「ホッパドキア家がミリーネ嬢を養女にしたいと言ってきた時点で、ティンギルス帝国に関する情報を集めるよう指示が飛んでいたとの事です。帝国内でも動きはあったはずです。何かしら掴んでいる可能性もあると思われます」


 「なるほど」


 という事は、あれか?

 その情報屋たちは、ホッパドキア家と帝国との繋がりも、把握していた可能性が非常に高いって事か?

 という事は、あれか?

 その情報屋たちは、情報を王国に流さなかったという事か?


 「流せなかった、と見るべきかと」


 何故?

 情報を流すためのルートは、しっかりと確保してあったんじゃないのか?

 念話は、使われないのか?

 行くだけ無駄な気がしているのは、私だけだろうか。


 「念話と言っても、万能ではありませんよ」


 ホムンクルスたちを見ていると万能なように見えるのだが、念話というものは、常に警戒される情報伝達手段なので、常に警戒しあっている国家間では常にジャミングが行われているのだそうだ。表沙汰にはされないが、防諜として、盗聴も行われている。つまり、国境を超えた念話が不可能なのは、両国間では常識なのだそうだ。

 だから、国境を超えて情報を流そうと思うなら、念話が出来る人間が直接国境を超える必要がある。

 それで、国境が封鎖されてしまえば、情報を流すのが遅れるという事らしい。

 私達がやったように、山を越えないといけないからだ。

 普通の人間に、山越えは難しい。

 国境封鎖が早期から行われていたなら、情報を掴んでいたとしても、流す事が不可能となってしまう。

 と、いう事らしい。


 「辺境伯家領の方から互いに入国する事も可能だったのでは?」


 帝国が動きを見せていなかったのなら、国境はある程度自由に行き来できたはずだ。スパイだって、ある程度自由に行き来できていたのではないだろうか?

 という、私の疑問も、


 「あそこは、情報屋にとってみれば、一番通過したくない国境線ですよ」


 というのが、メアリー・プルの答えだった。

 辺境伯領は、一見、通過するに一番楽なように見えるが、防諜に関してはお互いに第一線級の警戒を行っているので、スパイに言わせれば一番避けたい国境なのだそうだ。

 それで、ホッパドキア領が封鎖された事を王国が知らなければ、スパイが情報を流したくても流せなくなってしまう。

 そもそも、指示が通っていたのかも怪しい。

 ホッパドキア領と帝国が表向き交流を行っているように見せていたら、スパイが狩られていたら、情報は王国に流れてくる事は無い。

 ホッパドキア家でスパイ狩りがあったら、帝国内に居る情報屋は、王国に向かう事に二の足を踏むことになる。

 ふむ。

 そういう事か。

 何となくだが、ホムンクルスたちの説明は理解できた。


 「だから、帝国領内に居る情報屋に会いに行くのです」


 そういう事なら、


 「了解」


 と、私は納得したので、ホムンクルスたちの提案に乗る事にした。

 では。

 善は急げ、だ。

 情報屋の所へと向かおうか。


 「とりあえず、国境の街から、当たってみましょう」


 あちらの辺境伯の家か。


 「分かった」


 私達は、森の中、また枝を足場にして移動を始めた。


 ※


 帝国西部の辺境伯領に着いたのは、国境を越えてから一日半が経過してからの事だった。私達は偽造された帝国の冒険者証を使い、田舎から出てきた新人おのぼりさん冒険者を装って、辺境伯家の街へと足を踏み入れる。

 そして、王国側の情報屋が根城としている銀鹿停という宿を目指した。

 帝国の目が光っている事を考慮して、冒険者を装って、銀鹿停の扉を開ける。帝国の間諜と渡りをつける時は、冒険者として宿泊するという決まり事になっているのだそうだ。

 すると、そこは、


 「いらっしゃいませ~」


 一階が食堂兼酒場となっているようで。

 そこに居たのは。

 レベル500超えのウェイトレスだった。

 ふぁ・・・・・・。

 かわいい顔して、騎士団の中堅クラスの実力を持った、これは、剣士かな。いや、もしかすると、スカウトかもしれない。何にせよ、敏捷と力に偏ったステータスを持った娘さんだった。


 「ん?どうかしました?」


 「いや、何でもありません」


 「それより、三階の見晴らしのいい部屋は空いていますか?」


 メイニー・プルが、呆けた私のフォローに入ってくれる。


 「お食事は?」


 にこやかに、ウェイトレスさんがメイニー・プルにそう聞いた。


 「部屋で摂りたいので、六人分を一部屋に持ってきてください」


 「という事は、六人が入れるようなリビングもあった方が良いですね」


 「あるのですか?」


 「ありますよ」


 「では、その部屋もお願いいたします」


 「お酒はどうされます?」


 「嗜む方ではないのですが、今夜は旅疲れでよく寝たいので、薄い物を持ってきていただけるとありがたいです」


 「かしこまりました。では、記帳の方をお願いいたします」


 ウェイトレスさんは一礼すると、お尻を振りながら私たちの元から離れ、カウンターの裏に回った。

 メイニー・プル、グッジョブ。

 私が言わなければいけない隠語を、全て洩らさず相手に伝えてくれた。これで、私達が王国の手の者だという事は相手に伝わったはずだ。

 あとは、相手が繋ぎを取ってくれる。

 二人部屋の鍵を三つと、リビングの鍵を一つ受け取り、私達は三階への階段を登った。

 とりあえず、ダミーで持ってきた荷物はリビングに一纏めにして置いて、武器だけそれぞれ持って、寝室の方へと移動する。

 そして、よく干して陽の香りがするベッドに身体を投げ出した。


 「アイリ様、お尻、見えてますよ」


 同室のメアリー・プルはそう言うが、


 「良いんです。私のお尻なんて、誰も興味をもたないでしょう?」


 「いえ、はしたないと申し上げているのです」


 「私は冒険者のアイリでーす。お行儀なんて、身に付けていませーん」


 私の言葉に、メアリー・プルは溜息を吐いた。

 まぁ、事ある毎に、ホムンクルス達は私に礼儀作法を身に付けろと言ってくるからね。たまには、こうやって羽を伸ばすんだ。


 「ただ、覚えておいて下さい」


 「なにを?」


 「この部屋、盗聴されていますよ」


 「マジ?」


 「ええ」


 「それ、言っちゃって良いの?」


 「相手は先程のウェイトレスでしょうから、問題はありませんよ」


 「ああ・・・・」


 自分達もスパイだから、身の安全のために盗聴くらいはするか。何も知らない帝国の冒険者に正体をばらしていたら、身元不明の遺体が幾つ川に流れるかわかったもんじゃないからね。

 そういう事なら。


 「大丈夫ですよ、メアリー・プル。私はお嬢様として振舞うつもりはありませんから」


 「まぁ、アイリ様がそう仰るのであれば、我々としても、特に口を出す筋合いはないのですが」


 「ですが?」


 「行儀もない小娘が来たとなると、相手に舐められかねませんよ」


 「良いんじゃね?どうせ、ホッパドキア家の奥方救出に関して、私は役立たずなんだし、存分に舐めてくれて問題ないよ」


 私の仕事は、救出してから、にある。

 という事で、


 「あー、あー、盗聴している諸君。銀鹿停を捨ててまでやらなければならない任務を仰せつかっていますので、夜には心して部屋に来るように」


 そう言って、


 「寝る」


 私はベッドの上で大の字になった。


お読みいただき、ありがとうございます

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