2 軽く吐けますよ
転生して三日。
私は新しい身体に慣れるために、森の邸宅の庭でスキルの検証を行った。
結果。
分かった事は、敏捷と力が脚力に関係してくるという事。ジャンプ力や移動速度などに関係してくるようだ。結果、スピードはかなり上がった。回避率などには関係してこないらしいが。
回避は自分の力でやるしかない。
まぁ、現実世界な訳だから、自動回避なんてものは存在しないのはよく解るので、そこは納得ができる。
ゲームの中でやってきた事と大差ない。
力は他にも腕力に関係してくるらしい。それらは内包魔力と呼ばれ、アイリの細腕で岩を砕けるほどの力を発揮できるのも、魔力が腕力に補正をかけるからのようだ。
つまり、アイリの身体は魔力にあふれている。
MPとは違うもののようだ。
体力はHPに換算されるものだが、この世界では怪我のしにくさになるようだ。外皮というものがあり、それに該当するのがHPになるらしい。
まぁ、純粋にHPが多くても、急所を刺されたら一発で死ぬという事らしいが。
ここは要注意だろう。
知識は魔術の練度。
これは私の戦い方に意外と関係してくる事だが、魔術師が魔法の威力を上げるためには、この値が高い方が有利に働くみたいだ。
私はウィンドボールを足場にして高機動な三次元的な戦い方をしていたからウィンドボールを多用するのだが、知識が低いために三秒だった固定の魔術維持も、二秒ほどに短縮されていた。
ここも要注意だ。
まぁ、膨大な魔力で大量に作成できるし、クールタイムも無いのでデメリットもそれほど気にならないのだが。
魅力は純粋なMPに関係する。
一撃必殺を旨とする私なら、急所を狙って攻撃するというスタイルを取る事になるのでスキルを発動するというケースも少ないだろうからMPの消費もそれほど気にならないのでデメリットにはならない、と思う。
その他、状態異常の抵抗にも関係してくるのだが、ここは検証できていない。
指輪に状態異常のエンチャントが付いているから、まぁ、何とかなるだろうという程度。
という所まで検証して。
総合的に、ウィンドボールの維持時間は短くなったが、脚力に影響する敏捷と力が高いため、ゲーム時代より速く移動が出来て、戦い方もよりスピーディーになったと結論付けた。
身長などは女性にしては高めの168センチという元の身体と変わらない、動きやすい身長から変わっていないが、違いに慣れるまでに三日を要した。
そして今日。
私は魔物狩りのデビューをする。
とりあえず。
ゴブリンから。
「アイリ様なら、オークジェネラル位、軽くいけますよ」
ホムンクルス五人娘の一人、メイニー・プルがそう言うが、
「初陣なんですから、初心者御用達のゴブリンで良いんです」
ゴブリンでも、大型の生き物を殺す事は初めてになる訳だから、何等かのミスが生じるかもしれないでしょう。
ゲームとは違うんだ。
人型なんだから、相応に躊躇すると思うんだ。
「大丈夫だと思うのですがね」
ホムンクルス五人娘の一人、メルト・プルもメイニー・プルに同調するが、
「マスターの思うまま、従うのが我々の喜びですよ」
ホムンクルス五人娘の一人、メルニー・プルが二人を窘めた。
ホムンクルス五人娘の一人、メイジ・プルが頷く。
それを、
「今日はゴブリンを狩る事にしましょうか」
メアリー・プルが皆をまとめてそう言った。
という事で、ゴブリン狩りだ。
皆に続いて、私は邸宅を出た。
ゴブリンは何処にでもいる、という話だ。
サクッと行って、サクッと狩って、すぐに帰って来よう。
初めて森を進む。
やがて、
「居ましたね」
先頭を行くメルト・プルが遠足気分で後続に声をかけてきた。
残る四人は、その声に反応してそれぞれ行動に出る。
というか。
全員が私の為に道を開けた。
よっしゃ。
サクッと狩りますか。
と、メルト・プルの横から前に出ると、十匹のゴブリンが、そこに居た。
レベルも80程と、初心者用のゴブリンじゃない。
あ。
これ、多い。
援軍求む。
後ろを振り向いたら、全員が私に向かって手を振っている。
無表情で。
あ。
これ、援軍来ない奴だ。
実物の狩りは、初めてなんだけどなぁ。
『ギッ!!』
そんな感じで足踏みをしていると、当然気付かれる訳で。
『ギギッ!!』
ゴブリンが一斉に私を見た。
あぁ!!
もう!!
なるようになれ。
殺らなきゃ、どうなるか解っているんだ。
私は有り余る機動力を活かして、一気にゴブリンに詰め寄った。
一匹。
喉に槍を突き立てる。
二匹。
連撃で鳩尾に。
三匹。
抜いた槍を振るって首を飛ばす。
一呼吸で三匹。
五秒と経たずに、私はゴブリン十匹を仕留めた。
で。
崩れ落ち、秒で吐いた。
これ。
軽く吐けるよ。
ゴブリンの臭さと、血の臭さ。
滅茶苦茶、臭いんだ。
そんな私を見て、
「お疲れさまでした」
と、メイニー・プルが声をかけてくる。
「もしかして、ですが、生き物を殺すのは初めてですか?」
「ええ」
「それだけの力をお持ちなのですから、ある程度、殺しは経験しておられるのかと思っていました」
「マスターの世界では、魔物は居なかったのですか?」
「鶏でさえ、殺した事無い」
魔物は、ゲームの中の世界でしか狩った事が無いよ。
私がやっていたゲームは、リアリティを追求したもので18禁だったが、それでもかなりの補正は入っていた。
「それは、私達のミスですね」
メアリー・プルが、その非を詫びた。
まぁ、良いよ。
良い経験になったし。
これから実際に狩りをやりながら生きていかないといけないのだ。ステータスも、その為にある様なものだ。生き物を殺す事にも慣れていかないといけない。
それが、今日だっただけだ。
「いえ、もう少しやりようがありました。駆け出しの冒険者でさえ、先輩に連れられてゴブリン一匹から慣らしていくものですから」
「終わった事だ。もう良いよ。いい経験をさせてもらった」
「申し訳ありません」
「良いんだ」
私は五人に対して手を挙げて、もう謝罪は必要ないと伝えた。
立ち上がり、膝の埃を払う。
本当に、良い経験をさせてもらった。
ゴブリンには悪いが、人間に害を為す魔物だ。悪いけど死んでもらおう。
メアリー・プル達にゴブリンの魔石を取り出してもらって、私達は家路へとついた。
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