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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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33 森の異変です

 どうするか。

 焦りが募る中、十五分程が経過した。

 パーティは森の中へと誘い込まれていく。

 私は我慢が出来ず、


 「撤退を」


 と、騎士様に再度進言した。

 が、


 「くどい」


 と言って聞いてもらえず、私は黙るしかなかった。


 「アイリ嬢、何故そこまで撤退にこだわる?」


 騎士課程の男子生徒が聞いてくるが、私には、


 「嫌な予感がするんです」


 としか答えようがない。

 それがもどかしかった。

 何か、打開策は無いか?

 と、


 「臆病者に気を留めるな!自分達は自分達のやるべき事を・・・・・」


 やれ。

 騎士様が私以外の生徒に向けてそう言おうとした時。

 かなり遠くの方で鏑矢が打ち上がった。


 「救難信号か」


 「間違いないかと」


 騎士様の問いに、斥候役が応える。

 そこで、騎士様は私の言葉を思い出したのか、


 「何か、あったな」


 と呟いて、


 「よし、生徒諸君は急ぎ退避せよ」


 と、やっとそこで考え方を改めてくれた。

 遅い。

 が、何かがあったと判断してからの指示変更は早い。

 これで皆が救われる。

 やっと、私は肩の力を抜いた。


 「重い鎧を着ている者は脱ぎ捨てて、一目散に本部へ走れ。後ろを振り向くな。良いな、これは最後の指示だ」


 そう言って、騎士様達は剣を抜く。

 救助に行くつもりか。


 「危険ではないのですか?」


 魔術過程の女生徒がそう言うが、


 「一人でも多くの生徒を助けねばならん」


 そう言って、騎士様は私達に笑顔を向けた。


 「良いか、生き延びろ」


 「はい」


 リーダー格の男子生徒が鎧を脱ぎながらそう返事をする。


 「では、行ってくる」


 そこで、私達は騎士様達と別れた。

 あとは走るだけだ。

 脚が一番遅いのは魔術過程の女子たちのようで、私に言わせると歩いているのと大差無いような速度ではあるが、一心に王都を目指して走っていく。

 殿は、鎧を完全に着込んでいる私が務めた。

 走る速度は遅々としていて、焦りを感じる。

 でも、魔術課程の女子たちは、それでも一生懸命走っていた。

 どれ位で森を抜けただろうか。

 どれ位魔物達に距離を詰められただろうか。

 それはまだ分からなかったが、私達が本部に着く頃には、本部では退避の準備で忙しく人が動いていた。


 「君たちは、何番手出発だ!?」


 「二十八番手です」


 「そうか。無事で何よりだ。早く王都へ退避しなさい」


 騎士様とリーダー格の騎士課程の男子生徒がそうやり取りをして、私達は王都に向かう馬車へと向かった。

 リーズディシア嬢は。

 彼女はどうなっただろうか。


 「あの、騎士様」


 「なんだ」


 「回復術師の班はどうなったのでしょうか」


 「一早く退避済みだ」


 「そうですか」


 途中で騎士様に訊ねてみると、どうやらリーズディシア嬢は退避済みのようだ。

 先に出たシャラ・スー達は、どうなったのかは分かっていないらしい。十番手以前に出発した組は、まだ戻ってきていないとの事だ。

 心配だが、今は自分達の事を考えるしかないだろう。

 私はパーティの面子と一緒に馬車に乗り込む。


 「何が起こってるんだろ」


 魔術課程の女子生徒がそう呟いたのだが、誰もそれに答える事が出来なかった。

 馬車が出発して、王都に辿り着くまで、車内では誰一人口を開かなかった。

 王都に到着して馬車を降りると、心配顔をした学生でごった返している。全員、かなり混乱しているようだ。

 そんな中、


 「アイリ!!」


 リーズディシア嬢が私を見つけて駆け寄ってきた。


 「無事で何よりだわ。怪我は無い?」


 「私達は無事ですが、何が起こったのですか?」


 「ゴブリンが大量発生したらしいわ。鏑矢が上がった後、緊急の連絡が来て、その情報がもたらされたらしいの」


 そっちのイベントだったか。

 私はこぶしを握り締め、


 「どれ位退避できたのでしょうか?」


 と、リーズディシア嬢に聞いた。


 「貴女の馬車で三十四台目。騎士様は全員現場に残っているみたい。あと教授も」


 「そうですか」


 次々と馬車が入ってくる中、私達はそんな会話をした。


 「あれで四十台目ね」


 と、リーズディシア嬢が言ったと同時に、王都中に鐘の音が響き渡った。


 「門が、閉まる」


 「じゃぁ、残っている人達は」


 「残念だけど、助ける事は出来ないわね。騎士様の招集が緊急で行われているとは思うけれど、取り残された人達は、助けようがないわ」


 「そんな・・・・・」


 シャラ・スーの姿がまだ見えていないのに。


 「ゴブリンが来たぞ!!」


 門の近くに居た誰かが、そう叫んだ。

 その声に釣られて門の方を見ると、閉まりゆく門の隙間から、黒い塊が蠢きながら王都へ迫ってくるのが見える。

 かなりの数のゴブリンが、王都に迫っているようだ。

 私は、


 「リズ。城壁には登れる?」


 リーズディシア嬢にそう聞いた。


 「緊急時だから、弓兵で埋め尽くされているでしょうけど、物見櫓なら、あるいは」


 「行ってみましょう」


 私はリーズディシア嬢を伴って、物見櫓へと足を向けた。

 同じ事を考えたのか、物見櫓には学院の生徒が集まっていたが、私達は何とか人を押し退けて櫓の上に登り。

 そして、見た。

 見てしまった。

 数千を数えると思わしきゴブリンの群れの中に。

 それ、を見てしまった。

 首を千切られて、槍に刺されて晒された騎士様達の姿を。

 胸から下の所を切られて事切れ、神輿のように担がれている騎士課程の生徒の姿を。

 裸に剥かれて、打撲傷で痣だらけになった魔術課程の女生徒の変わり果てた姿を。

 そして。

 胸から下の無い、赤毛のポニーテイルを。

 そのだらしなく開かれた口からは、白い液体が垂れていて。


 「シャラ・スー・・・・・・」


 私の奥歯が、ギリッと鳴った。


10000PV達成しました!!

これもひとえに、お読みいただいている皆様のおかげ様です

引き続き拙作をご愛顧ください

では

面白かったらブクマ、評価の程よろしくお願いいたします

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