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ゲーム内でチートと言われてきた能力をガン積みされて若返り異世界転移したおっさんですけど、性別が女の子でした  作者: echo


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29 王太子殿下は出来る人だと思うんです

 「そこまでだ」


 その一言で、私とランド卿の私闘は終わりを告げられた。

 何故なら、


 「殿下・・・・」


 とランド卿が漏らしたように、王太子殿下が止めに入ったからだ。

 イケメンの前に、ランド卿が膝をついて頭を下げる。


 「やられたな、ランド」


 「はい」


 「お前ほどの男が、手も足も出ないか」


 「お言葉の通りです」


 「それ程、彼女は強いか」


 「はい」


 と、ランド卿と一通り言葉を交わした後、


 「確か、アイリ・ジル・アイリーン・ストーンだったな。ストーン辺境伯家の養女か。あの女傑が養女と認めるだけあって、出来る娘のようだ」


 と、私に向かって声をかけてきた。


 「恐縮です」


 まぁ、この方は私から見ればまだ何とも言えないし、立場も今の所私の上に立つ人だ。ここは臣下の令嬢として、遜っておこう。

 跪きはしないけれど。

 私が膝をつくのは、リーズディシア嬢だけだ。

 それを見て王太子殿下は、


 「リーズディシア嬢は、白銀のフェンリルを手懐けたか」


 私の髪色にちなんでか、白銀のフェンリルと呼び、苦笑した。


 「白銀のフェンリル、ですか」


 「そうだ。気位が高く、一度火が点けば誰にも留める事が出来ず、そして、誰にも遜る事が無いと言われている、あのフェンリルだ」


 「それは過分な評価を頂きまして、ありがとうございます」


 と、ここでランド卿が、私と王太子殿下の会話に割って入ってきた。


 「アイリ嬢、さすがに王太子殿下にその態度は、無いぞ」


 それを、王太子殿下は右手を上げて制止した。


 「良い、ランド。フェンリルに向かって自分は主人の婚約者だから跪けと言った所で、所詮私は人間だ。人間ごときの言葉が聞き入れられるかは、フェンリル次第だ」


 「しかし・・・・・・」


 「良いと言っている。それに、フェンリルは非常に頭の良い神獣だ。こちらが主人に手を出さなければ、噛みついてくるという事もあるまい」


 おや。

 よく解っておいでだ。

 リーズディシア嬢の敵に回るのであれば槍を向けるのも吝かではないが、敵対しなければ、私が王太子殿下に槍を向けるという事は無い。

 リーズディシア嬢は婚約破棄騒動が起こると言っていたが。

 これは、読み違いじゃないのか?

 この出来る子が、下手に婚約破棄をして後ろ盾を変えるとは思えないのだが。そんな事をして、国を二つに割るとは思えないのだが。

 国が二つに割れれば、外憂が狙ってくる事はこの国の貴族であれば常識なんだろ?

 この国は、そういう土地なんだろ?

 失礼ついでに、聞いておくか。


 「失礼ながら」


 「何だ、アイリ嬢」


 「王太子殿下は、リーズディシア嬢の事をどの様に思っていらっしゃるのでしょうか?」


 「大切な婚約者様だが」


 「その大切な婚約者様を放っておいて、他の女にうつつを抜かしているという情報を仕入れているのですが」


 「誰から聞いた?」


 「大切な婚約者様からです」


 と、私が言ったところで、王太子殿下のキラキラした笑顔に罅が入った。

 おや。

 意外だ。

 この子、自分が浮気を疑われているなどと、微塵も思っていなかったらしいぞ。


 「あのリズが・・・・まさか・・・・・・」


 と、呟いて。

 自らの狼狽を晒した事を悟ったのか、王太子殿下は秒で笑顔と言う仮面を被った。

 おやおや。

 出来る人ではあっても、まだまだ子供だね。

 貴族同士が集まる普通の場では取り繕えても、少女に化けた46歳のおっさんの目はごまかせないですよ。

 なるほど。

 理解した。

 王太子殿下と近習の者は、何等かの目的があって、その女性とやらを近くに置いていると見た。

 勘じゃなく、洞察だ。

 間違いあるまい。

 だから、


 「殿下、ご心配なく」


 と告げて、私は王太子殿下へ一礼した。


 「王太子殿下としてのお勤めを、しっかりとなさいませ。リーズディシア嬢の事は、私が何とかしますので」


 「すまん」


 その言葉が頂けただけで十分ですよ。

 私は王太子殿下の脇をすり抜けて、棍を置きに訓練場の隅へと歩いていく。

 さて。

 どうしたものか。

 話をリーズディシア嬢に通して安心させるのは簡単だが、リーズディシア嬢が王太子殿下の寵愛を受けていると周りに知られると、王太子殿下の計画が狂う事になるかもしれない。

 どんな計画かは知らないが、邪魔はしたくない。

 さて。

 本当にどうしたものか。

 王太子殿下。

 能のある鷹なんだから、早い所、問題を解決してくださいよ。

 いや、マジで。


 ※


 それから私は、訓練場を後にして、食堂へと向かった。

 侍女が待機している場所だからだ。

 やはりと言うか、私が食堂に顔を見せると、メアリー・プルとメイジ・プルとメルニー・プルが私の所へと静かに、しかし素早く寄ってきた。


 「アイリ様、お食事には少々時間が早いのではないですか?」


 「食事ではありません。少々、貴女たちにお願いがあって」


 「何でしょうか?」


 「メイニー・プルとメルト・プルに念話出来る?」


 「それは可能ですが」


 「じゃぁ、ギルドに行って、王都付近の最新の魔物の出現数を聞いてきてもらっても良いですか?あと、出来れば東方の魔物の出現数も把握できれば言うに越した事はありません」


 「承知いたしました」


 「しかし、何故そのような事を気になさるのですか?」


 「ちょっと、ね」


 直感という奴だろうか。

 気になったのだ。

 西側の街や村では魔物の出現率が高くなっているという話が多かった。

 どこに行っても、それに変わりはなかった。

 王太子殿下が動いている事と、それが関係しているのではないかと言う推論を立てたまでだ。私に与えられた数少ない情報では、そこを調べるしか、動きようがない。

 全体的に増えているのであれば、自然発生的に増えているという線もあるだろうが、これが東側だけ変動が無いのだとすれば、陰謀の匂いが漂ってくる。

 さて。

 結果がどうなるか。

 本当に王太子殿下が魔物の出現率に注目しているか分からないが、打てる手は打っておこう。

 杞憂で終われば良いんだけどね。


 「アイリ様」


 「伝えた?」


 「はい。すぐにでも動くそうです」


 「頼みましたよ」


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