26 帰宅した後です
「ふぃー」
辺境伯家の領家に帰ってきた私は。
自室に入るなり。
ベッドに身体を投げ出して。
ダレた。
やっと、気が抜ける。
「アイリ様、お尻が丸見えです」
と、ホムンクルスの一人、メイニー・プルが言ってくるが、部屋には彼女達しか居ない。最低限のスパッツは穿いてるし、存分に力を抜いて自由に過ごせる。
領家の使用人には見せられない姿だ。
こんな姿を見せていたら、辺境伯家へ手紙が飛んでいき、義母様から叱責の手紙が来ることだろう。
良いんだ。
ここには私のメイドしか居ないから。
だから、
「ここにはメイニー・プルたちしか居ないでしょ。良いんですよ」
とだけ言って、私は布団に顔を埋めた。
が。
至高の時間も僅かだった様で。
「お嬢様、お風呂が整っております、お入りになられませんか?」
扉の外から、屋敷付きのメイドから、そう声をかけられた。
あー。
疲れが取れるな。
ここの風呂、特別だし。
よし。
行くか。
私は着の身着のまま、風呂場へと足を向けた。
途中、
「貴女達も、しっかりとお風呂を使うんですよ」
メイド達に声をかけるのも忘れない。
「はい。でも、よろしいのですか?」
「良いんです」
「でも、使用人が主と同じお風呂に入るというのも・・・・・」
「うちの中で不潔な者が働いているのは、私が許しません。お風呂で汚れをしっかりと落として、常に清潔を保ちなさい」
普段は水浴びで済ませていたというメイド達にも、お風呂に入るように、私が決めたのだ。もちろん、執事や従者、騎士、庭師に至るまで、使用を義務付けている。
風呂の方が、当然だが浸かっている時間が長い分、汚れも落ちるというもの。
疲れも取れるし。
良い事尽くめだ。
かなり広い大浴場だから、使わないのは勿体ない。
その分、掃除は毎日行わないといけないが、そこはお風呂の恩恵だ。
頑張ってもらおう。
「では、ごゆっくりとどうぞ」
メイドに見送られて、私とホムンクルス達は脱衣所へと足を踏み入れた。
制服を脱いで風呂場へと足を踏み入れる。
「皆、一緒に入りますよ」
そうホムンクルスに言っておくのも忘れない。
念を押しておかないと、この娘達は、私の世話が終わるまでお風呂に入ろうとしないからだ。
腕まくりをしようとしていた彼女達は、私の言葉で、渋々と服を脱いだ。
どれだけ私の世話をしたいんだ、この娘達は。
とりあえず、長い髪は結い上げる事が出来ないのでメイジ・プルにお願いしてアップにしてもらって、身体にお湯をかける。
身体を洗って。
お湯に浸かった。
ああ。
染み渡る。
肩まで浸かって、口でお湯をブクブク。
顔を洗い、また口でお湯をブクブク。
「それ、何か意味があるのですか?」
そうメアリー・プルに聞かれても、特に無いとしか答えようがない。
しかし。
でかいな。
腰なんかは私と変わらないくらい細いくせに、胸とお尻は、しっかりとある。
痩せっぽちの私とは大違いだ。
痩せっぽち、というか、モデル体型が好きだから良いんだけど。
「私達の身体に、興味ありますか?」
「あると言えばあるんだけどね」
「触ってみます?」
「良いの?」
「良いですよ、女同士じゃないですか」
「私、中身はおじさんですよ」
「では、私達に欲情するのですか?」
「そう言われると、しないけど」
「では問題ありません」
と、言われたので、私はメアリー・プルの胸を揉んでみた。
しっかりと、ある。
柔らかい。
が、それだけだった。
女になったんだな、と思った瞬間だった。
うーん。
私は何処に向かうのだろうか。
恋愛対象は女性だと思っていたけど女性には欲情しないし、男は気持ち悪い。
これは、この世界で生きている限り、独り身かな。
まぁ良いや。
皆子供みたいなものだ。
それで良いじゃないか。
一通りメアリー・プルの豊満な胸を堪能した私は、またお湯に浸かって口でブクブクと泡を立てた。
「もうよろしいのですか?」
一つ頷く。
「そうですか」
そう言うと、メアリー・プルは私の横に腰を下ろしてきた。
「初登校、いかがでした?」
「どうだろ。メアリー・プルは、どう思った?」
「名前を売るのには、あれ位で丁度良かったかと。王太子殿下にも覚えて頂けたようですし、リーズディシア嬢と仲良くしていたら、どこかで絡む事も出てくるのではないでしょうか?」
「あの王太子、私の目には出来る男と見えたんだけど」
「そうですね。表向きは、その様に見えましたね」
「表向き、ね」
メアリー・プルには、表面上だけは出来る男と見えたようだ。
という事は、だ。
「リーズディシア嬢の言っている、婚約破棄の件は、現実のものになりそう?」
「どうでしょうか。王太子殿下のお相手とされる女性を見ていませんので、何とも言えない所です」
「そうだよね」
それもそうだ。
王太子殿下が熱を上げているという女性を見ない限り、私がどうこうと判断はできない。
願わくば、リーズディシア嬢の恋が実れば良いとは思うのだが。
リーズディシア嬢もリーズディシア嬢で、ドライな所がありそうだしな。やはり貴族の娘と言うべきか、秘めた物を持ちつつも、切り捨てる時は切り捨てるだろうし。
上手くいくのが一番なんだが。
さて。
おっさんとして、若者の恋路を見守るとしますかね。
「アイリ様は、良いな、と思うような方はいらっしゃらなかったのですか?」
「それは無いね」
「さすがに、弱い男は眼中にありませんか」
「弱いっていうよりも、男がダメだから」
「左様ですか」
「まぁ、私の話は良いよ。貴女達が居てくれたら、私は満足だから」
「そう仰せ頂けるのであれば、我々としても嬉しい限りです」
「嬉しかったら、ちょっとは笑わない?」
「笑っていますよ」
「それで?」
「はい」
それで、ねぇ。
雰囲気で察しろってか?
難しいわ。
「それは、お互い様だと思うのですが」
おや。
私は笑ってなかったか。
それはいけないな。
楽しんでいるつもりではあったのだが。
せめて、ホムンクルスやリーズディシア嬢の前では笑っていようかね。
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