22 編入です
「うわぁ」
と、リーズディシア嬢が声を上げたのは、
「よく似合ってるわ」
私の制服姿を見ての事だった。
とはいえ。
「なに、このギャル仕様」
私は若干不満でもあったりする。
温かい季節だからか、リーズディシア嬢が着ているブレザータイプの上着ではなく、ニットのブカブカセーターに、襟元を開けたブラウス。タイは緩めて、極めつけは超ミニの巻きスカート。
僅かな良心は、スパッツの様なものを用意してくれた辺りだろうか。
じゃなければ、ちょっと動いただけでパンツは常に丸見えになってしまう状態だ。
「よく動く娘は、この格好をしているから、おかしな所は何もないわよ」
そう言ってはくれるが、おっさんとしては、リーズディシア嬢の様な、オーソドックスな制服の方が精神的にまだマシと言えるのではないだろうか。
まぁ、
「動きやすいから良いんだけど・・・・・」
そこに落ち着きはするのだ。
鎧も着けやすいし。
そう言えば。
鎧も一瞬で着ける事が出来ると判明した。
アイテムボックスから直接身に纏う事が可能だったのだ。
これで、私の生命線とも言える鎧の問題は解決した。
しかし。
革鎧を付けて戦うギャル、か。
「似合わねぇ・・・・」
「何言ってるの。よく似合っているわ」
「そう言っていただけると、私としても嬉しいですよ」
このキャラの外見にした意味もあるってものだ。
という事で、ギャル、馬車で登校と相成った。
馬車は三台の大所帯。なんでも、公爵家はメイドを四人、侯爵家や辺境伯家は三人連れて行けるとの事なので、私はホムンクルス達を交代で随行させる事にしたのだ。
護衛の騎士は十四人。
登校に、こんなに人数をかける必要があるのか、甚だ疑問な数字である。
まぁ、貴族だから、と言われれば仕方がないのだが。
そして十五分程をかけて到着した学園は、どちらかと言えば大学に近い構造をしていた。学部で別れて学び舎があり、その他、基礎課程の棟や、修士課程の棟などに別れているとの事だ。
私は騎士過程の魔術利用戦術課という所に通う事になるらしいので、リーズディシア嬢とは入口で別れる事になった。
ちなみに、リーズディシア嬢は専門魔術課程の回復魔法術課という所らしい。
「とりあえず、事務所に行って名前を告げたら案内してくれるわ」
そう言って、リーズディシア嬢は去って行った。
残された私とホムンクルス娘は、仕方なく騎士課程の棟へと足を運ぶ。
そして、事務所で、
「あの、アイリ・ジル・アイリーン・ストーンですが」
噛まずに自分のフルネームを告げた。
すぐさま事務所のお姉さんが飛んできて、
「お待ちいたしておりました」
と直立で私を迎えてくれた。
そこまで畏まる必要なんて、どこにも無いですよ。
中身は46のおっさんなんだから。
「とりあえず、こちらにどうぞ」
とはいえ、貴族の中でも上位に位置する辺境伯家の娘ともなれば、こういう対応にもなるか。仕方のないものとして受け入れよう。
私は案内された部屋で、何やらいろいろと検査を受けた。
水晶玉に手を当ててみたり。
「内包魔力はS、ですか。もっと上があるのなら、上のランクでも良いくらいです。桁違いの魔力をお持ちだわ」
身長や体重を測られたり。
「う・・・・細い。身長は高いのに私なんかよりも随分と軽い」
得意な魔術を聞かれたり。
「ウィンドボール、ですか。それを足場にして戦う、と?変わった戦闘方法をお持ちなのですね」
色々と検査を終えて、
「それでは、これがアイリ様の学生証となります。個人情報が書かれていますので、無くさないように、よろしくお願いいたします」
やっと、学院の一員になれた。
そして、担当の方が変わり、
「これから騎士過程の棟をご案内いたします」
ガイダンスが始まった。
騎士過程には訓練場もあり、本格的に戦闘をする訓練を行っている様だ。その他、内包魔力の使い方や魔術の使用方法、果ては殺気の見分け方などと言う講座があるらしい。
殺気を見分ける講座、か。
それは私に無いものだ。
ぜひとも勉強してみたい。
私がそう言うと、殺気の見分け方は基礎教養になるので、必ず単位を取らないといけない科目だと担当の方が教えてくれた。
そう言えば、辺境伯領で騎士たちに囲まれた時、私の強さを騎士たちは全く認識していなかったな。その辺の勉強は無いのだろうか。
「そこは経験によって養われるものですので、学園としては教える事が出来ません」
なるほど。
学園では習う事の無い技術だったか。
「殺気などは魔力の乱れで感じ取る事が出来ますが、強さともなると、内包魔力や筋力などを見て感じ取らないといけない技術ですので、かなりの研鑽が必要なんですよ」
学園で教え切れる技術ではありません、と担当の方はそう言った。
これで得心がいった。
私に殺気が無かったから、辺境伯家の騎士たちは油断していたんだな。
なるほど。
と、一通り会話をしながら案内をされて、
「取りたいカリキュラムがありましたら申し出てください。必要な単位数となるか、確認いたしますので」
そう言って、担当の方は去って行った。
さて。
取りたい科目は、それ程なかったな。
殺気の感知が一番だろうか。
あとはその他必須科目を受けて。
応用科目はまた考えよう。
とりあえず、騎士の卵の技量がどの程度なのか見極めておきたいな。
そろそろお昼だし。
生徒の集まる食堂で情報収集だな。
私は最初に案内された食堂へと、ホムンクルスを伴って足を向けた。
そこは昼食時で賑っていたが。
私が足を踏み入れると同時に、ザワッと音量が挙がったかと思うと、すぐに静かになった。
なんだ?
「なんだ、あの娘。こんなむさい所に、何しに来たんだ?」
「可愛いな、どこかのご令嬢か?」
「うちの制服を着てるって事は、生徒だよな。あんな可愛い娘が居たら噂になる筈だけど、誰か知ってるか?」
そんな声が聞こえてくる。
たしかに、男所帯でむさい所ではある。
が、私は男子校出身だ。
こんな環境は、好むと好まざると、知っている。
特に気にはならない。
強いて言うならば、私が性転換しているくらいだろう。
火の粉が降りかかってきたら暴力でどうにかすれば良いだけの話だ。
さて。
情報集めをするか。
とりあえず鑑定をして、レベルの平均値を見る。
大体180といった所か。
辺境伯領の兵士と同レベルだな。
騎士になる前のひよっこなら、こんなものか。
リーズディシア嬢が異常にレベルが高いだけなんだろう。
公爵家という最高の貴族家に産まれながらにして、努力家なんだな。
お。
あそこ。
食堂の片隅に、僅かに制服を着崩した、ロングソードを佩いた二人組の女性剣士の姿を見つけた。
あそこで情報を収集しよう。
男共の眼を惹きつけながら、そこへと歩いていく。
そして、
「ちょっと、良いかな?」
私は女性剣士たちに声をかけた。
「お嬢様が、こんな所に何の用なのさ。もやしの育成所なら棟が違うよ」
「いや、私も貴女たちの仲間なのですが」
「あんた、騎士過程の人間なのかい?」
「そんなに細っこいのに?」
「力には自信がありますよ」
「そうかい」
女性の一人、ポニテの赤毛の娘が私に手を出してきた。
それを握る。
当然の様に力を込められてきたので、笑顔のまま、女性の手を握り返した。
僅かに彼女の眉が顰められる。
解ってくれたようだ。
「参ったね。その見た目で、お仲間だったか」
「嘘は言いませんよ」
「まぁ、座りな」
女性の片割れ、金髪ショートカットの娘が席を開けて、私が座れるスペースを作ってくれた。
「で、何の用だったんだい?」
「私、今日ここに編入してきまして、色々と教えていただきたいんですよ」
「ああ・・・・」
「ストーン辺境伯家の娘さんが来るって噂になってたけど、あんただったのか。噂は本当だったんだね」
「アイリ・ジル・アイリーン・ストーンです」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
「あたし等、子爵家と男爵家の二女と三女だけど、その辺、気にするかい?」
「いえ、私はもともと平民でしたから、全く気にしませんよ」
「そうかい」
「美人だから、どこかの貴族から養女に出されたのかと思ったよ」
そう言って、二人はニカッと笑った。
白い歯が印象的で、正直そうな娘達だ。
どうやら当たりを引いたらしい。
仲良くやれそうだ。
リーズディシア嬢にも、紹介できるかな。
ちょっとレベルも抜きん出ていて、253と261だし。
面白ければブクマ、評価の程よろしくお願いいたします




