自転車
乗らなくなりました。
歩道からはとっくに はじき出されたのに
車道を走るときもすみっこで
肩身を狭くしてなけりゃなんないなんて
あんなに好きだった自転車に いつのまにか
ぼくはぜんぜん 乗らなくなった
自動車は 自ら動く車なら
自転車は 自ら転がる車
だけど 漕いでまわしてるのはぼくの脚だぞって
汗をぬぐったタオルを見せてやっても
しれっとしてた あのふてぶてしさが
かえって すがすがしかったのに
歩道をはじき出されて
車道のすみっこで肩身を狭くして走る
そんな姿なんて もう見ちゃいられなくてさ
ぼくは自転車に乗らなくなってしまったんだ
自ら転がってるつもりの自転車も
漕いでまわしてくれる両脚がなくちゃ
サドルに腰かけて やすんでもらうくらいしか
きみにできることはない
ガレージの奥でほこりをつもらせてくきみが
ぼくの相棒じゃなくなって
どのくらいたったのかって考えたら
じぶんが愛犬を散歩してやらない
ダメ飼い主みたいに思えてきちゃって
なんだか はずかしくなってくる
こんどのやすみは ちょっと遠出して
サイクリング・コースに連れてってやろう
歩行者にも自動車にも遠慮することなんてなく
自転車の 自転車による 自転車のための道を
我が物顔で走らせてやろう
こうして 貴重なやすみを費やしてまで
ぼくにサイクリング・コースまで
連れていってもらうことに成功した自転車
これこそが まんまと はまった
きみの策略だとしたら
自転車は 自ら転がる車ってだけでなく
相棒のぼくのことまで てのひらで転がす
たいしたやつってことかもしれないぞ
好きだったんですけどね。










