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教会での新たな出会い


古びた教会の静寂を破るように、エイレンがふと声を上げた。


「お嬢様、あの腕輪じゃないですか?」

彼は指輪から伸びる光の行き先を追い、祭壇の上に置かれた古びた腕輪を指さした。その腕輪は、長い年月を経たにもかかわらず、どこか神秘的な輝きをまとっていた。


フィルも光の行方に気づき、祭壇の方へと足を向けた。そのとき、祈りを捧げていた若い女性が二人に気づき、静かに立ち上がった。


「あなたがたは…?」


彼女は穏やかながらも警戒する目つきでフィルたちを見た。その声に、フィルは慌てて両手を軽く広げ、相手を安心させるように言葉を紡いだ。

「すみません、急に押しかけて…。でも、ここに導かれてきたんです。」


そう言って、フィルは指輪の光が祭壇の腕輪へと伸びていることを説明した。その話を聞いた女性は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに落ち着きを取り戻し、二人を祭壇へ案内した。


「不思議なことですね…。こちらは、この教会に代々伝わるものです。」彼女は静かにそう言い、手を合わせるように祈りの仕草をしながら続けた。「私は司祭の娘、アリス。この教会を守りながら、王国が危機的状況から救われることを願い、祈りを捧げていました。」


「危機的状況…?」フィルが首を傾げ、問い返すと、アリスは重々しい表情で話し始めた。

「数日前、突然お城が何者かによって襲われたんです。あっという間に闇に包まれ、中にいた人たちは皆閉じ込められてしまいました。それ以来、誰も近づこうとしません…。闇の力に飲まれるのを恐れているのです。」


その言葉にフィルとエイレンは顔を見合わせ、緊張感が走った。

「やっぱり…もうセリーナ姫はイゼリス王国に行ってしまっていたんだ…」フィルが小声で呟く。


「何かご存じなのですか?」アリスが不安そうに尋ねたが、フィルは答えず指輪に視線を落とした。すると、指輪の光がさらに強さを増し、まるで祭壇の腕輪へと何かを促しているように感じられた。


フィルとエイレンは頷き合い、導かれるように指輪を腕輪へとそっと近づけた。次の瞬間、眩い光が教会内に広がり、まるで空間そのものが震えるかのようだった。


その光の中から現れたのは――ログだった。


「ログ!」

「勇者様!」


二人は思わず声を上げ、光が消えるや否やログに駆け寄った。


「お前ら、そんなに騒ぐなよ。恥ずかしいだろ。」

ログは苦笑いを浮かべながらそう言ったが、その声にはどこか温かみがあった。久しぶりの再会に、フィルとエイレンは目を潤ませながら次々と口を開く。


「ログ!無事だったのね!ずっと心配してたんだから!」

「勇者様!お帰りなさい!」


ログは肩をすくめ、軽くため息をついたように見せながらも、「まぁまぁ、落ち着けよ」と答えた。しかし、その口元にはほんの少しの笑みが浮かんでいる。


一方で、アリスは驚きに目を丸くし、祭壇の前で立ち尽くしていた。

「えっ…突然、人が現れた!?どういうことですか!?」


フィルがログの腕を掴んで「本当に良かった…!」と感激の声を漏らす中、ログは軽く彼女の手を外しながら言った。「話は後だ。とりあえず、次はこいつらだな。」


そう言ってログが視線を移した先には、アリスのそばで静かに座っていた赤毛の猫たちがいた。ログは手をかざすと、猫たちは眩い光に包まれた。


「うわっ…!」フィルもエイレンも驚きに目を見開く。その光が徐々に収まり、猫だったはずの姿が変わると、そこには動揺した様子で立ち尽くす二人の若い剣士がいた。


光に照らされるその剣士たちは、長い間失われていたものを取り戻したように深い息を吐き、ただ静かにそこに立っていた――。

   




赤毛の短髪の男は目を大きく見開き、震える手で自分の体を確かめた。頬を触り、胸を押し、腕を曲げ、まるで自分が本当に存在しているのか確認するように何度も繰り返す。


「俺たち…戻れたのか!?本当に人間に…!」


その声には驚きと喜びが入り混じっていた。同じ赤毛の、さらさらとした髪を持つ女剣士も、未だ信じられないように目を瞬かせながら呆然と呟いた。

「十年ぶりに…元に戻れた…。夢じゃないわよね…?」


二人の姿に、アリスは驚愕して一歩後ずさった。

「信じられない…あの猫たちが…人間になったっていうの?!」


短髪の男は勢いよく胸を張り、どこか誇らしげな表情で名乗った。

「俺はレオン!イゼリス王国騎士団の剣士だ!妹のフェリシアとどっちが強いか決めようとして、あの腕輪の前で禁忌の決闘をしちまった…。それで…猫にされてたんだ!」


横に立つフェリシアが冷静に、しかしどこか呆れたような口調で続けた。

「私はフェリシア。兄さんの無鉄砲さに巻き込まれて、私まで猫にされたのよ。でも、これでようやくまともに剣を振れるわ…猫の生活は、もうこりごり。」


彼女は少し剣を握る仕草をしてから、ふと眉をひそめた。

「でも、どうして元に戻れたのかしら…。こんなことがあるなんて…」


感動に浸る二人を見ながら、アリスは目を丸くし続けていた。驚きが言葉に追いつかない様子で、口元に手を当てて何度も二人を見比べる。


しかし、その空気を破るようにログが軽くため息をついた。

「悪いけど、今は一刻を争うんだろ?」


その冷静な言葉に、フィルとエイレンは現実に引き戻された。フィルは表情を引き締め、真剣な眼差しでログに向き直る。

「ええ、そうね。」


フィルがこれまでの状況を簡単に説明すると、レオンは拳を固く握りしめた。その目には騎士としての強い決意が宿っている。

「それなら、俺たちも協力するぜ!王国を守るためなら、全力を尽くす!」


フェリシアも真剣な表情で頷いた。

「私も、イゼリス王国騎士として一緒に戦うわ。私たちがここで立たないと、誰が王国を救うの?」


その言葉が響いた瞬間、祭壇の腕輪が再び強い光を放ち、二つに分かれるようにして双子の腕へと吸い込まれるようにはまった。


「えっ…」フィルは思わず驚きの声を上げた。


レオンも、腕に輝く腕輪を見つめて息を呑んだ。「これ…なんだ…?」


フェリシアも不安そうに眉をひそめながら腕輪を見つめた。「ちょっと待って、これって…本当に安全なの?」


ログは冷静に、双子を見ながら説明を始めた。

「心配するな。この腕輪に選ばれたんだよ。」


「選ばれた…俺たちが…?」レオンは信じられないといった様子で呟いた。


「でも、どうして私たちなの?」フェリシアは疑念を拭えない表情を浮かべている。


その不安そうな声に、フィルも少し心配になり、ログに向かって言葉を投げかけた。

「選ばれたって…でも、また呪いを受けたりするんじゃないの?」


ログは腕を組み、静かに首を振った。

「大丈夫だ。まだ正式な契約を結んだわけじゃない。だが、これは確かに僕の指輪と同じセイラの力だ。」


「セイラ…」双子とアリスはその言葉に耳を傾ける。


ログは真剣な表情で双子に向き直り、力強く言った。

「セイラとの契約には、命を懸ける覚悟と強い信念が必要だ。軽い気持ちでは扱えない。それでも選ばれたのは、お前たちにその資格があるからだ。」


双子は顔を見合わせた。レオンは息を整えながら、緊張に震える手で剣の柄を握りしめる。フェリシアも少し迷いながらも、その瞳には強い決意の光が宿り始めていた。


「覚悟はできているわ。」フェリシアが息を飲みながら力強く答える。


「よし、行こう!」レオンも大きく頷き、剣を抜いてその刃を輝かせた。「俺たちで王国の危機を救うんだ!」


光る腕輪がそれぞれの力となり、双子とともに新たな戦いの幕が開かれようとしていた――。



 






アリスはこれまでの光景を驚きと興奮の入り混じった表情で見守っていた。双子の剣士が戻り、状況説明や自己紹介がひと段落すると、彼女はふと思いついたように口を開いた。

「お城へ行くなら、抜け道があります。」


その言葉にフィルたちは驚きの目を向けたが、アリスは慎重に小さな灯を手に取り、薄暗い教会の一角へと皆を導いた。

「こちらです。昔から教会に伝わる隠し通路ですが、私が知る限り、これまでこの道を使った人はいません。」

灯の揺らめく光に照らされたアリスの顔には、わずかな緊張が浮かんでいた。


「ありがとう、アリス。本当に助かるわ。」フィルは慎重に足を運びながら、感謝の言葉を口にした。


エイレンは周囲を警戒しながら、フィルのすぐ後ろにつき従っている。「お嬢様、足元にお気をつけください。」

彼の真剣な表情には、フィルを守ろうとする気持ちが滲んでいた。それに気づいたフィルは微笑みを浮かべながら言った。

「大丈夫よ。いつもありがとう、エイレン。」


その言葉にエイレンは少し頬を赤らめながらも、「いえ、お嬢様の安全が一番ですから。」と照れくさそうに応えた。


ログはそんな二人のやり取りを見て苦笑し、「おいおい、仲良しなのはいいけど、そんな調子で本当に大丈夫か?」と軽口をたたく。

「この先はあの姫が待っている城だ。気を引き締めろよ。」


レオンがその言葉に反応して、「おい、そんなに不安がるなよ!俺たちがついてるんだから、ドカンと構えておけ!」と豪快に胸を張った。


「兄さん、本当にいつも軽率なんだから…」エリスはため息をつきつつも、その鋭い目で周囲をじっくりと見回していた。

「ところで、そのお姫様ってのは、そんなに危険な存在なの?」


エイレンが少し戸惑い、「えーと…」と言いかけたところで、ログが軽く肩をすくめながら口を挟んだ。「ああ、そうだ。なんせこの僕を瀕死に追いやったくらいだからな。」


「ログはセイラの力で物理攻撃はほとんど効かないけど、闇の魔法の力は受けてしまうみたいなの。」フィルは二人に説明した。


エリスは小さく頷きながら、「そんな相手が…。なるほど、それで警戒しているのね。」と冷静に分析した。


フィルは二人の頼もしさを感じつつも、同時に心配も拭えない様子で言葉を続けた。

「レオン、エリス、無理はしないでね。あの姫の力は計り知れないから…。」


「大丈夫よ、フィルさん。私たちで力を合わせて、絶対に乗り越えましょう。」

エリスは剣を握り直しながら、静かに微笑んだ。


アリスは教会の地下道を先導し、やがて足を止めた。そして振り返りながら言った。

「ここです。これが城への通路の隠し扉です。」


彼女が壁の隠しスイッチを押すと、重々しい音を立てて扉がゆっくりと開いた。


「すごい…こんなところに抜け道があるなんて!」フィルは驚きの声を上げた。


アリスは控えめに微笑みながら、「少しでもお役に立てれば嬉しいです。」と答えた。その表情には、フィルたちへの信頼が静かに滲んでいた。


ログは腕を組みながら、全員を見渡して静かに言った。「よし、全員準備はいいか?一度通れば戻れない道かもしれない。それでも進む覚悟はあるか?」


「もちろんだ!」

レオンが拳を握りしめ、自信満々に応じる。「どんな敵が来ても俺がぶっ飛ばしてやる!」


「私も覚悟はできているわ。」エリスは冷静な口調ながら、その瞳には鋭い意志が宿っていた。


エイレンは隣のフィルをそっと見つめながら、「お嬢様、僕はいつでもお側にいますから。」と優しく言った。


フィルは皆を見渡し、強く頷いた。「行きましょう。私たちの力で、この危機を乗り越えるのよ!」


アリスが扉の向こうを見送りながら静かに微笑み、灯の明かりが揺れる中で軽く頭を下げた。こうしてフィルたちは隠し通路を通り、城へ向かう旅を進めていく。緊張感と希望を胸に、一行は静かにその先へと歩を進めていった――。



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