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月と異世界と銃火器と  作者: 唸れ!爆殺号!
第一章 抗奏のセレナーデ
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第七射 初日とタブーとブチ切れと

「ん゛っん………皆、席に着いたかな?それじゃあバルデくん挨拶!」


「へ?あ、起立!気を付け!礼!なんで俺なんだよ!?」


しっかり頭を下げてからツッコミを入れるバルデ。やはり根はいい子なのではなかろうか。


先程の戦い(?)により何とかクラスとしての体裁を取り戻した我がクラスは、他クラスからかなり遅れてホームルームを始めた。


まずは軽く自己紹介でも挟むか………


「やぁ皆、今日からこのクラスの担任は俺だ。名前は無いけど、よろしくな!」


……………


どうやら俺が三日三晩かけて考えた自己紹介文は氷上のスピードスケーターのごとくスベッたようだ。やはりあまりに単純過ぎるのも考えものだな……


「名前がないってどういうこと?」


「………多分厨二病というやつですわね」


「やっぱり変な人だわ。初めて見た時から思ってた。やっぱり変な人だわ」


………散々な言われようですね。


「………えー、そ、それじゃあ皆にも自己紹介してもらおうかな!はいバルデくんから!」


「だからなんで俺からなんだよ!?まぁやるけど!」


やってくれるのかよ。


「俺はバルデ・ダーリルだ。まぁバルデと呼んでくれ。………これでいいか?」


「良ければ専攻技能とか自分の異能とかも教えて欲しいなーなんて。あとは年齢、かな」


実はこの学校は年齢による学年分けはされていない。創立年に入学した全ての人間がヴェルメイユ・ファミリア一期生となり、その後も二期生、三期生と続いてきたため、学年内でもかなり年の差があることが多い。なので一応年齢は聞いておきたいところだ。今回俺が受け持つクラスはこの学び舎は二年目なのでそういった資料も残されているものと思っていたのだが、この学校に普通を求めた俺が馬鹿だったらしく、そんなものはどこにもなかった。

あと専攻技能は自分で選択可能なため教えておいてもらわないと、全員がどの技能の授業を受けているか全校を走り回って確認しないといけなくなる。


「わぁーったよ………歳は十五、専攻技能は体術、魔法だ。異能については………あんまり言いたくねえな」


「言いたくないなら言わなくていいさ。バルデくんありがとう!さぁ皆拍手!」


パチパチと素直に拍手してくれたのは鏡花だけだった。こりゃあ前途多難だなぁ………


「えーっとそれじゃあ次は………」



その頃。


僕は少し怒っていた。


「カス、ねぇ………」


あの少年を見て最初に浮かんだ表現がカスとは。心底嘆かわしい。今までは少し甘すぎたのかもしれない。


僕は、生徒と彼が争ったというのに跡ひとつないグラウンドを眺めながら、誰にともなく呟いた。


「ちょーっと刺激が必要かな?」



「わたくしの名はレイサ・アリアス・フォーリナルですわ!皆様中々個性的な面々ですけれど、このわたくしに敵うとは思わないことですわ!オーッホッホッホ!ちなみに年齢は十七ですの。専攻技能は魔法、各種体術、そして小さな頃から呪術も学んでますの!他は皆様同様黙秘いたしますわ!」


レイサのクセの強い自己紹介が終わり、それ一体どうなってんだと問い詰めたくなるほど巻かれた金色の縦ロールをみょんみょんしながら席に着く。


先程の彼女の言葉通り、今現在まで異能を教えてくれる人は現れなかった。まぁ当然と言えば当然だ。本来異能というのは自分の身を守る最後の切り札、おいそれと見せびらかすものでは無い。


「あ、ありがとうレイサ……それじゃあ次は……サターシャ、お願い」


「は、はいっ!えっと、名前はサターシャ・降星(ふりほし)・メルベルンです!年齢は十六で、専攻技能は魔法です!異能は『断絶の剣』と言いまして、魔力拮抗を利用した魔術的物質干渉によって結界を……張れま…す………」


サターシャが自己紹介を進めていく中で初めて自らの異能を発表した。聞く者たちの顔色が変わる。


舌打ちをする者、不快そうにそっぽを向く者、そんな空気に着いて行けず、慌てる者………


少なくとも、彼女に対する好意的な印象は今の自己紹介で全て吹き飛んだだろう。


「…………これで、終わりです」


サターシャが悲しそうに俯き、席に着く。


「……あ、あぁ。ありがとうサターシャ。それじゃあ次は……」


「あ、僕ですね………僕の名前はユート・月下・コロネル、です………ね、年齢は十三で、専攻技能は射撃、です………異能、は………黙秘、します………」


茶色の髪に茶色の丸くクリっとした瞳を持つ、今期生内最年少の少年が、周囲の空気に怯えながら、サターシャに申し訳なさそうにしながらも異能については黙秘を行う。


「………ユート、ありがとう。それじゃあ………」


「おや、ついに私の出番かね?」


先程まで机に突っ伏していたはずの少女が立ち上がる。肩口で切りそろえられた、所謂ウルフカットと呼ばれるものに近い赤髪で、髪と同じ色の瞳に上に(ふち)の無い眼鏡を掛けている少女。背丈は凡そ百七十センチ程だろうか。その長身に良く似合う白衣を違和感なく纏い、科学者オーラを前面に押し出していた。


「私の名は歩夢・クリスト・ファーブルス、気軽にあゆちゃんとでも呼んでくれたまえ!年齢は確か、十九かそこら………まぁそのくらいだろう。専攻技能は、見ての通り科学だ。異能は無い!同じクラスとなったからには、楽しい学園生活を共に送れることを楽しみにしているよ!」


こ、コイツが、歩夢・クリスト・ファーブルス………先程鏡花から聞いてはいたが、まさかこんな形で関わることになるとは………

彼女の自己紹介が始まってから、またしても教室の空気が変わった。先程サターシャに向けられた冷たい雰囲気とは違い、今度は畏怖、又は好奇の感情を含む雰囲気であった。


鏡花に至っては驚きを隠しきれておらず、顎が外れそうなほど口が開いていた。くるみ割り人形といい勝負である。


「ありがとう、歩夢。そ、それじゃあ次は………」


「あ、ああ、アタシか………名前は梔子鏡花だ。年齢は十六で、専攻技能は体術、肉体機能だ。………アタシの異能は『深淵写鏡』、魔眼だ。てめーらがアタシのダチに対してよくねー感情を抱えてんのは丸分かりだぜ」


フンッと怒りを込めつつ席に着く鏡花。どうやらサターシャが邪険に扱われたことにキレているようだ。


「きょ、鏡花ぁ………」


ほら、サターシャなんか今にも泣きそうだ。うーん、友情って素晴らしい。


「ありがとう、鏡花。これで全員の紹介が終わったかな?」


「あぁ、アタシで最後だぜ、先生」


「よし、それじゃあ………」


もう帰宅した者も多いし、そもそもクラスの半分程はここにいないので、そろそろお開きにしようと思った、その時。


勢いよく扉が開く。


「うおっ!?なんだ………って、ヘイムダルさん!?」


そこには烈火を映したかのような深紅が、抑えきれない殺気と怒気を孕んだ威圧を漂わせ、世界一不穏な笑顔を湛えて立っていた。


「君たちに、少し話があるんだが………この場を借りてもいいかい?」


俺を見てヘイムダルが問う。もちろん俺にはこの状況を覆す度胸も蛮勇もない。こう答えるしか無かった。


「は、はぁ………」



「まず、君たちに一言………彼をまだ疑っている者がいるのなら、今すぐその認識を改めた方がいい。彼は僕の弟子で、あのミル・ラガン・ドラグノフの弟子でもある。君たちひよっことは比べ物にならない才覚と、経験と、知識がある。それを見抜けなかった君たちには心底失望したよ」


ヘイムダルの視線がバルデへと向く。バルデは初めこそ平静を装っていたが、人類最強の怒りの視線に耐えられるはずもなく、すぐに目を逸らした。


「ミル・ラガン・ドラグノフ………!?」


「もしかして『死の弾丸(デス・ブレット)』のこと………?」


「まぁアタシは先生が凄いのは知ってたけどな!」


「鏡花、最初めっちゃ疑ってなかった?」


俺の過去を盛大にバラされ、皆の俺に対する態度が大きく変わる。居住まいを乱していた者は即座に正し、ほか事をしていた者はその手を止める。あのレイサや歩夢でさえ俺に対する見方を変えたようだ。俺の師匠たちの名はかなり売れている。それはつまり、彼らの関係者であることにも価値が現れる。そんなくだらないことのために弟子入りした訳では無いので、無闇やたらにバラしたりしてこなかったのだが………


「まぁそれも今先程までだ。彼は僕の大切な友人にして、弟子でもある。次彼を貶した者は僕を敵に回すと思うことだ。………それじゃあ、言いたいことは言ったから、後は君に任せるよ。皆、またね〜」


人類最強が去っていく。そこには先までの浮ついた空気は欠片もなく、俺への尊敬、好奇、嫉妬、羨望の視線が残るのみとなった。


その後地獄のような質問攻めにあうのだが、それはまた別のお話………

読者の皆様へ


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