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月と異世界と銃火器と  作者: 唸れ!爆殺号!
第一章 抗奏のセレナーデ
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第五射 天才の掃き溜め

ヴェルメイユ・ファミリア編、突入です!(章はこのままです)

「どうしても勝てない強敵に出会った時、君はどうする?」


それは日常の中のふとした質問。ただ何気なく放った言葉。俺にとっては確かにそうだった。


「えーっと、諦めずに粘る………とかですか?」


「ぶぶー、残念。不正解だよ」


子供みたいに彼は微笑んだ。


対する俺は質問の意図を読めず、訳の分からない問いに対してうんうんと唸っていた。


「頑張る……は流石に適当すぎるな。……あっ、もっとよく観察しろってことですね!?俺の観察力はまだまだだと……」


彼は微笑むだけで何も言わない。きっとこれも正解では無いのだろう。結局よく分からなかった俺は、彼に問いの答えを求めた。


「お手上げです………それで?正解は何なんですか?」


「ふふっ、こんな簡単な問いに答えられないとは、君もまだまだだね。正解は至極簡単さ」


俺の肩に手を置き、耳元でこう囁いた。


「逃げるんだ。すぐに、どこまでも。相手が地の果てまで追ってきたとしても決して足を止めてはいけないよ。逃げて、逃げて、逃げ続けて、そしてその果てでもし君が生きていたならば………」


ほぅ……と息を吐く。そして、一言。


「僕が必ず、助けに行くからね」


後ろを振り向くと既に彼は俺の後ろを離れており、お気に入りの骨董品店で買ったという木製の椅子に腰かけたまま、悪戯っぽくウインクをして見せた。



「いやぁ、ごめんごめん。君に会うのも久しぶりだから、ついからかいたくなっちゃってさ」


爽やかに笑うヘイムダル。相も変わらず、彼は彼なようだ。


ここはヴェルメイユ・ファミリア内に位置する校長室。お気に入りの椅子は今も現役なようで、手入れが行き届いた状態で机の下に収納されていた。


「からかうのも大概にしてくださいよ………師匠は褒めてくれましたけど、似合ってないのは俺が一番分かってますから……」


「師匠と言うと……ふむ、ミルのことか。一応僕も君の師匠なんだけどね………まぁいい。彼女とも久しく会ってないが………もしかしてあれ以上酷くはなっていないだろうね?」


「…………さ、さて……どうでしょうね………?」


「……はぁ、なるほど、よく分かったよ。あの子が君と共に暮らすと言い出した時は成長を感じられて嬉しかったんだけど……まさかああなるとは、思いもしなかったよ」


端正な顔の、これまた芸術作品かのごとく紅く煌めく瞳を細める。


「………俺だって、どうしたものかと思ってるんですよ」


「ま、そうだろうね。あの子の想いが実るか実らないかは、完全に君の手のひらの上って訳だ」


意地悪く笑いながら言葉を紡ぐヘイムダル。まるで俺を糾弾するかのような物言いだが、これはこれで彼なりに発破をかけようとしてくれているのかもしれない。でも……


「その言い方は辞めてくださいよ。俺は師匠を弄ぼうだなんて微塵も考えちゃいないんですから」


「ごめんごめん、そういった意図を含ませた訳じゃないんだ。ただ、僕としてはあの子を応援したいからね、少し後押ししてやろうと思っただけなんだよ」


俺の怒気が漏れてしまっていたようで、ヘイムダルが慌てて釈明する。


「はぁ……相変わらず不器用ですね」


「一応僕全能らしいんだけどね」



「その話は置いといて……今後の業務について、まだ一切知らされてないんですが?え、もしかして俺不採用通知渡される為だけにここまで来たんですか?」


「君は物事を悲観的に捉えすぎだよ。その思考は戦場では大いに役立つが、平和な日常生活には不要だ。……もちろん、君は採用されているさ。業務内容については今から話そう」


ヘイムダルが机の上からかなり分厚い書類を手に取り、俺に渡す。


「これはこの教育機関で教師として存在するために必要な知識を全て纏めた書類だ。君にはこれを全て覚えてもらう。覚えられなくても……まぁなんとかなるさ」


………無理だろ。


「これ千ページくらいありません?ハリー○ッターより分厚いんですけど」


「ハリー○ッターが何かは分からないが、大大和帝国平和の憲法全三百四十二条を纏めた大大和帝国憲法録よりは少ないよ。法律家になるより簡単さ」


あんたは裁判の席に初めて立つ法律家がまだ一文字も憲法録すら読んでいない状態で裁判に勝てると本気で思ってんのか?


………思ってそうだな、この人なら出来ちゃうし。


「別に覚えてなきゃ死ぬ訳じゃないからね。さて、前置きはこのくらいにして……」


自分の学校の規則を前置きとか言わないで欲しいのだが……


「君には、重大な仕事を任せたい」


「却下します」


「ダメです。早速だけど君には、あるクラスの担任に就いて欲しい」


あっさり俺の自由権が奪われたところで、本当に重大な仕事を任されてしまった。


「クラスの担任って……普通は副担任とか雑用ポジじゃないんですか?」


「そうなんだけどね。まぁ特例ってことで僕が無理矢理通したんだ」


この学校には明確な序列がある。言わずもがな校長はトップだが、その下に教頭、さらに下に学年主任、そしてクラスの担任、副担任、教科担任、謎の雑用係……と続く訳だが、本来ならば新しく入った教員は良くて教科担任になれるのが普通だ。


それを三階級特進?人類最強に太鼓判を押されて?もう完全にイジメの標的になること間違いなしでは無いか。


帰りたくなってきた………


「君が心配しているような事は決して起こさせないから安心したまえ。そして、君が担当するクラスについてだが、実はかなり問題があってね……」


もう死が確定しているというのにこれ以上何を恐れることがあるというのか。もう知らん、俺は覚悟を決めた。


「問題って?」


「うん、まぁ色々とね……そして、故あってそのクラスはこう呼ばれているんだ」


彼にしては珍しく、額に汗を滲ませながら言った。


「『天才の掃き溜め(トゥルーオブワールド)』とね」



ヘイムダルとの話を終え、既に初日のホームルームが始まってかなりの時間が経っている教室へと向かう。もう帰り始めている生徒もいるし、クラスの全員とは会えないかもしれないが、一応顔は出しておこうと思ったからだ。


それにしても……


「『天才の掃き溜め(トゥルーオブワールド)』ねぇ……」


名前からは良いのか悪いのか判断に困る呼び名だ。天才がゴロゴロ集まっているから、と考えるのが普通だが、やはり問題があるというからには悪い方なのだろう。


さしずめ………


「天賦の才を持ちながら、この世界の不要物として生きる者たち………ってところか」


全く、あの人の無茶振りにも困ったものである。師匠も彼も、俺を買いかぶりすぎではなかろうか。


………まぁ、期待されているからには答えねばならない。


広い校内をかなりの時間をかけて歩き、ようやく教室付近に着いた。廊下に人が居ないので、まだホームルームの時間が続いているのだろう。教室内の賑やかな声が魔鉱石製の壁越しに聞こえてきた。


そんな平和な世界をぶち壊す、あまりに学校という場に似合わない怒号が響くまでは。


「何だとてめえ、もっぺん言ってみろ!」


低い、男の声だ。声だけで想像するなら短い金髪で耳にはピアスを開けており、身長高めのヤンキー男子といった所だろうか。あくまで俺の想像だが。


「何度でも言ってやんよ!アタシらに気安く近付くんじゃねぇ!特にコイツにはな!」


ん、なんだか聞き覚えのある声が………


どうやら眼前の扉の中には()()()()()がいるようだ。全く、俺の運が悪いのか、あの子たちの運が悪いのか分かったもんじゃないな。


「こんのっ……!?」


俺は勢いよく扉を開いた。


「やぁ、取り込み中の所すまないけど、喧嘩はやめた方がいいんじゃないかな?」


かなり低い身長以外は想像通りの少年の拳と、やっぱり思った通りだった少女の拳を両手で受け止める。


「なっ………んだ、てめぇは……!?」


驚く少年。


「せ、先生………?」


だが、少女の顔には驚きは少なく、どちらかというと羞恥が勝ったような表情をしていた。


「先生……ってことはまさか………」


「うんうん、そのまさかだよ」


少年が驚きの中、叫ぶ。


「この覇気も何も感じねぇカスがこのクラスの担任だってのか!?」



…………言い過ぎじゃないですかね?

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