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迷宮探索

次の日起きると新たに白魔術系統第一位階【治癒魔術】を習得していた。


 効果は僅かに傷を癒やす事。


 どんなゲームでも回復があるだけで相当変わるからありがたい。


 


 迷宮探索までにちょっと時間があったのでちょっと散策をしてみることにした。


 


 馬小屋のドアを開けて道に出ると見知った悪党顔のおっさんが目に入って来た。


 


「あー! フレッド! フレッド! おはよう!」


 突進して頭をフレッドの腹にぐりぐりと押し付ける。


 そうすると顔を真っ赤にしながらものすごい勢いで高速後ろ連続ジャンプをして離れて行った


 


「おお……おはよう……お前マジでこんな事まだ会って大して時間が経ってない男にするなよ……」


 


「何でだよ! 故郷だとこうするとみんな喜んでくれたんだぞ!」


 


「なんというか……お前の故郷の男連中大変だっただろうな……」


 


 失礼な。美少女スメルのするおれの頭を汚物みたいに言うとは。


 


 その後も連れたって歩いて朝食を食べ歩きながら色々な話をした


 


「……そういやミラベルってヒイズル人って言うんだったよな、ヒイズル人ってどんな奴ら何だ?」


「ヒイズル人はなんというか……善人でもないが悪人でもない奴と悪人だか善人だか判断に困る奴だらけだよ。


 俺の知ってる奴だけでも恩は倍にして返す、仇は10倍にして返すみたいな奴とか善良さ故に世界の宿敵となった奴とか変なのが色々いる」


 そう言うとフレッドは頭を抱えてへたり込む


「ただミラベル、あいつ普通にクズじゃ無いか、お前はどう思う」


 


 おれは基本的に本人のいないところで行われる他人の悪口に同調しないようにしている。誰よりも傷つけられる者の気持ちがわかってるおれが他人を傷つけるようになったらそれこそお笑い草だ。それ故ここで選ぶのは沈黙。沈黙の時点で答えを言っているようなもんだが。


 


 そうするとフレッドがフッと笑って言った


「OK、変な事聞いて悪かった。そろそろ迷宮いくか」


 ■■■■


 オーク、その無駄にデカいガタイには筋肉がほぼ存在せずほぼ全てが怠惰と暴食による脂肪で構成されている。


 


 沸点が低く、嫉妬深く、強欲であり、怠惰、三大欲求が異様に強く、何よりも傲慢。


 


 眼の前から現れたオークの目線はなんというか……見回りと称しておれの肉体をじろじろと見てきた糞領主とおんなじ目線だ。なんというか善良な人間が性欲をむき出しにしているのを観察するのはある意味楽しいがカスが性欲をむき出しにするのは醜い。それが自分に向けられてるとなればなおさらだ


 


 そしてオークは肉体的には大したこと無い相手かつ低知能だが決して愚かではない。


 


 地球にいた時“あいつ”と話した事を思い出す


「戦闘力は1に精神、2にガタイ、34が無くて5に技術、どんなに肉体が強くても敵を打ち倒す意思がなければ意味が無い。逆に言えばお前みたいな肉体的には弱いやつでも相手を害そうという強い意志、というか悪意だな、悪意があればそれなりの脅威になるんだ。最もお前は阿呆だしなぁ……なんというか悪意という言葉から程遠いんだよ、お前」


 


 


 


 色々思い出しちまった。ともかく悪意というものは戦闘力知能の足らないものであっても脅威に変える。


 それ故眼の前の豚人間は狩られる獲物ではなく脅威そのものだ。


 


 しかしそんな脅威も悪意も圧倒的暴力の前には無力。フレッドがぬるりと前に飛び出し剣を突き出した。空気を切り裂く連ねられた4つの音とともにオークの心臓が貫かれる。


 


「エフィミア! ミラベル! 一体残した、二人で一体倒せ」


「ちょっと! ミラベルさんは貧乏人のフレッドさんにお金をだしてあげているパトロンなんだから敬語を使ってよね! お客様は神様って言うんだから」


「それ以上ガタガタ言うんなら四肢切断して迷宮に置き去りにしますよ神様」


「ひっすみません! すみません! 私は蛆虫さんです、だから、やめてね!」


 


 コントやってる紫とフレッドを尻目におれは睡眠魔術を詠唱する。


 


 発生した毒霧はオークの肌から入り込みオークを昏倒させた。これで実質戦闘終了。やっぱイかれてるわこの魔術


 


 へたり込んだオークの前にミラベルが駆け寄る。


 そのまま剣で華麗に喉笛を切り裂き心臓を貫きオークを仕留めた。


 


 おお、かっこいい! 


 


「決まったぜ! 私はガキと老人と弱った奴には強いんだよ!」


 


 最低な決め台詞がなければだけれど! 


 


 そうすると宝箱が出現した。あまりにもゲーム的だとは思うが出現するものは仕方ない。


 


「あっ! 宝箱! やっぱりこういうのは男のロマンだよな」


 宝箱に近づき開けようとした途端怒声がなった


 


「馬鹿! 死にてえのか!」


 フレッドに首根っこを掴まれ持ち上げられる。


 えええ?! なんで?! 


「ああ……すまん、俺の説明不足だった。ちょっと実演するから見てくれ」


 そう言ったフレッドが宝箱を開けた途端風切音と共に矢が放たれる。放たれた矢は深々とフレッドの腹に突き刺さった。


「うっ」


「フレッド!」


 


 そう言って駆け寄るとフレッドが腹から矢を引き抜いた。


 


「分かったか、こうなるから不用意に宝箱に触れるなよ」


「分かった、分かったから早く治療させてくれ!」


 


 そう言いながらおれは治癒魔術を発動する。現在の白魔術第一位階使用回数の限界である3回まで治癒魔術を起動すると出血が止まった。


 


「迷宮潜って3日でこれだけ治癒魔術使えるなら上出来だ、だが」


 そう言ったフレッドが魔術を発動する。その途端傷は完全に消え去った


「将来これくらいはできるようになって欲しいな」


「……善処します」


 


 そうしているとまたオークの大群が来た。さっきと同じ様にフレッドが一体残して全滅させ言った。


「エフィミアとミラベル、実践だと思ってこいつを倒せ、今度は睡眠魔術禁止な」


 ミラベルが駆ける、オークが剣を振るう。ミラベルが紙一重で躱し喉元を貫く。倒れ込んだオークが最後っ屁とばかりに足を狙って突き出した突きを跳ねて躱して首を刎ねた。


 強い。昨日は攻撃当てるのにすら苦労していた人間と同一人物とは思えない。


 戦闘は終了し宝箱が出現した。「よし、ミラベル、宝箱の解錠を頼む」


「え!? 私が!? 矢で貫かれるの怖いしそもそも痛い思いをするマヌケとかそういうポジションはフレッドさんのものだしそもそも」


「盗賊と忍者のクラスなら罠解除して宝箱開ける技術持ってるよな、良いから開けろ、失敗しても良いから開けろ、そのもみあげ引きちぎるぞ」


「ごめんなさいごめんなさいやりますやりますからへへへへへ…………」


 ユカリが宝箱と格闘している間にフレッドが話しかけてきた


「エフィミア、何で今の戦闘で魔術使わず突っ立っていたんだ」


「あの……睡眠魔術の使用回数減るの怖いから……」


 この世界の魔術は同系統同位階の魔術は使用回数を共有している。


 睡眠魔術と同じ黒系統に位置し同じ位階に位置する火炎魔術を使うと睡眠魔術を使える回数も減るが系統の違う治癒魔術の使用回数は減らない。逆も然りだ。


 消去法で治癒魔術しか使えなくなっていたのだが治癒魔術も今必要なかったから使わなかった、それだけだ。


 


「だから使わなかったのか。その通り、必要な時に魔術を使わないのはクソだが必要で無い時に使うのはもっとクソだ。お前すげえよ、その真理にあっさりたどり着くとはな。一切の誇張抜きで称賛に値するぜ


 正直内心なんかアホっぽいなこいつと思ってたけどお前頭良いよ」


 顔が崩れる、にへへへへ


「ごめん、やっぱアホだわお前、顔から知性を感じねえ」


 貴様覚えてろ。


 そしておれとフレッドの間に物理的に顔を突っ込んで割り込んできたミラベルがなんか言う。


「フレッドさん、私にも何か言う事無い?」


「お前も凄えよ、戦闘力の伸び幅に関してならお世辞抜きで俺が教えたことのある人間で一番上だ」


 ミラベルはキョトンとした顔をした。そのまま徐々に顔が緩んでいき10秒後には無い胸を張って教科書に載せたい程立派なドヤ顔を見せていた。


「まあミラベルさんは天才ですから!」


 


 


 



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