司祭誕生
ここから主人公視点
25歳にしておれは死んだ。しかし赤ん坊になって異世界に生まれ直した。
死因はありふれた交通事故。
死ぬ前の俺はネカマやっていてちょっと身体障害がある事以外はありふれたモブ。
孤児だった俺に家族の心配はないしネットのつながりもネカマの俺しか見ていなかったやつだらけ。
リアルのつながりはどうなんだよと思うかもしれないが黙ってくれ。心が死ぬ。本当にやめろ、燃やすぞ。
一応一人だけ友人と呼べる人間はいたがそいつは……察してくれ。
よって地球に思い残した事はない。
散々読んだラノベのお約束に従えばこれからチートか何かをもらい薔薇色の人生が始まるのだ! そう思っていたら何も無かった。普通の貧乏農家に生まれて幼少期を過ごした。
性別が変わっていたため普通の男なら困惑していただろうがネカマのおれにはなんの問題も無かった。
むしろ生まれた瞬間自分が女になっていたと感知し喜びのあまり奇声を上げ産婆と親をビビらせた。
そして成長するにつれ凄まじい美少女になった。周りからチヤホヤされるのはもうものすごく楽しかった。このまま死んでも我が生涯に一片の悔いすら無かったと断言できる程に。
ネカマやっていた時に化け物級の童貞に告白を喰らうという地獄のような体験をしたためptsdになり女言葉を使えなくなってしまったため変わった子だと扱われていたがそれでも村のガキからの告白、求婚、やっかみの視線は止むことが無かった。もはや麻薬だった。
これはこれで悪くねえなとクッソ楽しい毎日を貧乏だが善良な親父とデブスだがまあまあ善良なかーちゃんと無駄に出来の良い兄とドブスだが慕ってくれる妹と過ごしていた。
本当に楽しかった、かけがえのない日々だった。
ある日帰ったら家族全員串刺しになって死体になっているのを目撃するまでは。
何かと評判の悪い領主に俺を差し出す用に言われたが家族が断りこうなったようだ。
これ以上の詳細は省く。本当に書きたくない、書けない。
その後は領主をぶち殺すための力を得るために迷宮都市リルガミンに向かって今に至るというわけだ。
リルガミンの冒険者は迷宮内で魔力を持った生物を殺すにつれ際限なく強化されいずれは超人に至るらしい。
また地上では到底手に入らないようなマジックアイテムもざくざく手に入るようだ。
迷宮へ着いたのは良いが最悪なことに俺の天職は【司祭】であった。
7位階ある黒魔術白魔術全てを使える職業だ。いわゆる賢者だ。これだけ言うと強いと思うだろうし俺も思ってた。しかしこれには絶望的な欠陥があった。成長の絶望的な遅さだ。
僧侶や魔術師が最強の黒魔術〝核撃魔術〟や最強の白魔術〝快癒魔術〟を使えるようになるほどの経験を積んでも第4位階の魔術を使えるようになっていれば良い方という体たらくだ。
身体能力も全8職の戦闘用系統内職業の中で最低であるため本当に弱い。戦闘が本職でない盗賊職の連中のほうがよっぽど戦力になるレベルだ。
他に何か選択肢は無かったのかと思われるだろうが戦士になるには力が足りず魔術師になるにはおつむが足りず僧侶になるには信仰心が足りず盗賊になるには器用さが足りなかった。
そんなおれでも何故か司祭にだけはなれた。
高い教養が無ければなれない職業であったが某タックル大出の俺はギリギリ高い教養持ち判定されたらしい。もしかしたら司・祭・に・な・れ・る・事自体がチートだったのかもしれん。どうせならもっと良いのくれよ。
本来なら司祭は高い教養を活かして鑑定能力なる特殊能力を授かるらしい。らしいというのは俺はそれを持っていなかったからだ。
マジックアイテムについて勉強する時間も金もあった他の司祭連中と違い昨日今日で急に司祭なった俺にはそんな能力を持つ力がない。
多分しっかり勉強すれば身につくのだろうがそんな事している間に路銀が尽きて死ぬ。
周りの司祭は鑑定能力、いや、鑑定能力のみを買われてどんどんパーティーを組むのにおれだけパーティーを組めねえ。高校の時の二人組作れを思い出してゲロを吐いてぶち曲げた。
それを見て回りの連中もデカい悲鳴を上げて逃げ出す。
何で逃げるんだクソ共。
オラ、美少女のゲロだぞ、もっと喜べよ。
最悪フードで隠した顔面を晒せばなんとかなるのだろうがそれやると余計面倒な事になるだろう。
家族が焼かれたあの日以降俺は顔を出すのを極端に恐れるようになっていた。
あのクソ領主は家族だけでなくネカマチヤホヤという俺の趣味まで奪いやがったのだ。
とにかくもう俺はソロだ。このままだとのたれじぬかソロで迷宮行くか男とファックして金稼ぐかの三択だ。どれも地獄だ。