2話
☆☆☆次の日、朝方、森
森の開いた場所には、盗賊団と、・・・捕虜になった田山がいた。
数張の天幕が建っている。
彼らは朝方まで、酒盛りをしていた。この場所にいるのは、総勢20名である。
「アハハハハハハハ、ところで、親分、あの鉄ツブテを避ける方法、どこで、知ったのですか?」
「ああ、あれは・・・言いたくねえが、いたんだよ。軍に雇われた時代によ。本物の軍事チートがよ」
「いつも、言っている化け物ですね」
「あれは、3年前、まだ、人魔大戦の真っ最中よ。傭兵はお給金もっと欲しいわけだ」
☆回想
村を襲ったんだ。人族の領域の奪還作戦の時だ。魔族に略奪されたことにすればいいってよ。
その時の隊長が、村を襲ったんだ。
「へえ、魔族は略奪しなかったんで?」
「それが、魔族は税金を払えば、ノープロブレム状態だ。はん。人間の方が悪魔だよ」
だから、魔王軍が撤退した後の、手つかずの村娘や。食料庫、村長宅の金庫なんかを狙ってな。
村娘は陵辱し、男は口封じに殺していたんだ。
俺たちは、正規軍の助攻だ。
本隊は、俺たちに構ってられないくらい激戦だったんだ。
イケると思ったんだが、たった一人、参謀本部から、戦況確認にやってきた少女がいた。。
まあ、憲兵だな。
一人だ。
「少女が?」
ああ、そうだ。そいつは、12~13歳の少女だった。今なら15歳か?
奇妙な見た目でよ。
黒髪、黒目で、茶色と、黒、緑の斑模様の服を着ていたんだ。
鉄の馬に乗ってよ。
俺たちを見て、プルプルふるえていた。
最初は、怖くてふるえていると思ったが、大声で言いやがる。
『お前たち、即刻やめて、縛につけ!軍事裁判を受ける権利がある!!』
笑ったさ。ナンセンスだ。あの少女を殺して口封じをすればいい。
『ギャハハハハハハハハハ、お嬢ちゃんも混ざる?』
『お~い。誰か。小さい子好きな奴いんだろ?ボム、食っていいぞ』
『ヒヒヒヒ、こっちにきな。・・・グハ、ギャ』
バン!
と杖から、白い煙だ出てな。大男のボムが倒れた。一撃だ。
それから、記憶にねえ。
木と鉄で出来た杖で、
鉄ツブテを飛ばしたんだ。
俺の部隊は200はいたんだがよ。
俺以外全滅した。
奴は、一人一人死体を確認して、数えた。狂ってやがる。一人、一人、鼻をそぎ。数え終わった確認の目印にしたんだ。
『198・・・199・・・一人いない・・既に戦死した?一応、撃っておくか』
バン!バン!バン!
奴は、生き残った村人たちを避難させて、村中を撃った。
だけど、俺は助かったぜ。
「リーダーはどこに隠れていたんですか?」
「俺は便所槽だ。村人200人分のクソの中に隠れて助かった。その時だ。鉄ツブテは、水分に当たると、勢いが衰えるってな。分った」
「「「うわ」」
「だから、水魔法のウォーターボールしか使えない。輜重兵扱いのズルタンを見つけた時に、使えると思って仲間に誘ったわけだ」
「へへへへ、どうも」
「でもよ。こいつと何が違うわけ」
一人の盗賊が、田山を指さす。
「なんて言うか。甘えがない。それに、ツブテが途切れない。こいつらみたいに、カチャカチャしていないんだよ」
「それ、わかりません」
「お、夜明けだ。明日、明後日の襲撃はない。4日後だ。羽を伸ばすのは大事だぜ。だけど、見張りだけはしっかりしなくてはな」
「お頭は、襲撃の日時を抑えている。誰とつながっているんで?」
「それは、仲間にも言えねえな。お前が拷問にあっても話さないって保証はない。知らない方が身の為だ。覚えておけ」
「ヘイ」
少女の討伐の日にちは、漏れていた。
「見張りの順番は・・あれ?」
ホークは気が付く。
「おい、見張り要員はどうした。帰って来てないな。街に女を買いにいったか?一度、アジトに戻ってから、行ってこいと言ったのに」
「そう言えば・・・3人いませんね」
「あ、モルが、来ますぜ。奴、まだ、見張りの時間だ!」
「お~い。何やっているか!交代が来てから帰って来いよ!まだ、襲撃が来ないって分っているからってよ。感心しないぜ。こいつら見たいに油断しちゃいけねえ!
油断したら、どんな武器を持っていても、死ぬって教えたよな!
正義感で、ギルドを通してこない奴も・・」
様子がおかしい。
ふるえている。モルの奴、両手を挙げて・・何か背負ってやがる。
わずかだが、白煙が出ている!
「おい、モルを撃て!」
「えっ、はい」
シュン~、矢がモルの胸に当たる。
バタン!と倒れて、数十秒後、モルは、白煙をあげて爆発をした。
ドカーーーーン
血肉が飛び散り。霧散する。
「襲撃は4日後じゃないのかよ?爆裂魔法の種を仕込んでいたな。・・待ち伏せ攻撃のアドバンテージがなくなった。逃げる」
と決断したが、
バン!バン!
銃声が響き。
数人に、7,62ミリ弾が着弾した。
☆森の中150メートル先
少女は、依頼を受けたその日に、猟師の娘、フランと共に、森に入った。
依頼主には、嘘は言っていない。『5日後を目安』と言った。
情報が漏れている可能性を考慮した。
少女は、森の中で、草木で偽装し、見えにくい姿になっている。
伏せ撃ちの姿勢で、ホークのアジトに銃撃をしている。
(吸う・・吐く・・止める・・撃つ!)
バン!
・・・この広大な森で、見張りを見つけるのは不可能だ。
見張りは緊張を伴う作業、必ず交代する。
この世界の見張りは、例外なく、高いところで見張りをする。
だから、ほふく前進や、身をかがめて、ゆっくり移動して、森に入った。
夜、地に低い位置は、高いところからは視認出来ない。
偽装して、ゆっくり動けば、敵から見つかりにくい。
これは、異世界の戦訓
そして、森の中に入り。獣道を猟師の娘、フランと共に見張っていた。思ったよりも早く見つける事が出来たが、
これで、終わり?
いや、弾を防ぐ方法があるはずと考える方が無難だ。
「ウォーターボール?と人質?黒髪の男?あれが、田山・・」
☆
ホークは、魔道師にウォーターボールを展開させ。
縛られた田山を前面に出す。
【おい!お仲間だろ!こいつの命が欲しかったら、武器を捨てて、出てこい!】
「ウグッ、ウグ~」
「お前からも、命乞いしろよ!」
しかし、少女の出した答えは・・・
「プランD!フランさん。お願い!」
「え、でも、仲間・・」
「仲間じゃないし、テロリストと取引しない。敵に捕まったら死を覚悟する。冒険者の流儀!」
「はい」
話しながらも、手を動かす。彼女は、TNT爆破薬を二つに割り。
雷管を突っ込み。導火線を調整する。
「この魔道具は、1分後に爆破する。着火するよ」
「はい!」
☆
「ほお、雷音が止まった。よ~し、まだ、ウォーターボールを解くなよ」
「おい、娘ッ子が飛び出てくるぜ。何だ。布を持っている。猟師か?」
フランは、思いっきり走り。
「これで、大金貨2枚~~~分の働きぃーーーー」
と気合いを発しながら、
布をグルグル回しながら、何かを放った。
楕円を描きながら、それはホークに向かってくる。
煙が出ている。
「ズルタン!あれは爆裂する魔道具だ。ウォーターボールで包め!」
「はい」
1/2のTNTは、ウォーターボールに包まれるが、
「何だ。気泡が出ている・・」
近代の爆破薬は、酸素が練り込まれ水中爆破が可能だ。
ズドーーーン!
水は高圧で飛び散り。
彼らを襲った。
パン!パン!パン!
銃声が見えないところから聞こえる。
単発で撃っているが、規則正しく。一発一発が人に着弾する・・・
もう、勝負は決した。
「はあ、はあ、はあ、外道・・・やっぱり、あの時の化け物じゃないか?お前は異世界人だろ?」
「違う。質問に答えろ。何故、襲撃が分った?」
「フフフフフ、そりゃ、答えたら見逃してくれるのかい?」
「楽に殺してあげる」
「どうせ。死ぬんじゃないかよ!嫌がらせだ。言わねえよ」
「・・そう。なら、私も嫌がらせ。略奪免除税の引き渡しに、契約と称して、現領主の令嬢、直々にお金を持ってこさせて、殺害、もしくは奴隷として売って、義母が男爵家を牛耳り。義妹が男爵家を継ぐ絵を描いていた。それをお前が話したことと伝える」
「な、それはやめてくれ!傭兵の流儀だ。依頼主は裏切らない。ホークは最期まで傭兵だぁ」
バン!
頭を撃ち抜いた。
☆☆☆次の日、領主館
「メルダ、あのソロの娘は、後3日後に出発するのですよね」
「はい、そう聞いています」
「それが、ダメなら、もう、お金を渡しなさい」
「でも、そのお金は領民の積立金も入っています」
「決心しなさい。貴方は領主ですよ」
「奥様!辺境伯様が来ています」
「え、何故?」
傷だらけの老齢の男が、騎士を引き連れて来ていた。
辺境伯、この領主の寄親である。
「メルダの義母、アルテレスとその連れ子、ミリーは実家送りだ。ホークが全て話したと証言が出た!討伐の冒険者に最期、全て悔いて話したと言っていたぞ」
「そんな。ホークが・・いえ。事実無根です。その討伐した者は信頼に当たる者ですか?どうせ、流れの卑しい冒険者です。信頼に当たりません!」
ドン!
辺境伯は、足で床をならす。
「フン、あの子は、女神教会の庇護がある。ワシも後見している者を、卑しいだと!冒険者に卑しい者はいない!反逆罪で投獄だぞ!」
「ヒィ、分りました。実家送りで結構ですわ!!!」
「お母様!ドレスいっぱい買えるって話はどうなるの?」
「だまらっしゃい!」
この義母と義妹は、兄夫婦の元で、質素な生活を送ることになる。
・・・フン、やりおる。あの子は、転移勇者と聖女の子、両親が亡くなった後、
士官候補生として、我が陣営の軍監の見習いとして勤務させたが、
一歩、間に合わず。監視する傭兵団の駐屯する村への略奪を止めることが出来なかった。
それを悔いて、ワシの元を離れ、冒険者になった。
まだ、まだ、甘いところがある。
「引き続き監視をせよ」
「「「畏まりました」」」
「ところで、タヤマなる者は、如何しますか?」
「ほっとけ。一から冒険者として出直し、名が売れたら会っても良いだろう」
もっとも、あの年では、プライドを捨てないと難しいがのう。
田山が、冒険者ギルドで頭角を現したとの話は出てこなかった。
少女は、今も、略奪された村を悔いて、役職には就かず。
銃を持って、冒険者として彷徨っている。
ホークが、あの傭兵団の生き残りだとは知ることはなかった。
最後までお読み頂き有難うございます。