表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永円の旅  作者: かずキチ
第1章 始まりの朝
8/9

§ 008 ~論文の犯人~

「め、メイドのー」

「あーもうっ!はっきりしなよ!」

と大勢のメイドを前にして怯えているディアナに対してシオンは言った。ウィルはというと、彼女もこんな大勢の人は苦手なので、シオンの真後ろに息を殺して隠れていた。

『この人たちは人じゃない。人じゃない。人じゃない……』

と自分に暗示をかけながら

「メイドのみなさん!お、お忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。それでは、さっそくですが、玉座へと入っていこうと思います。」

と言い切ることのできたディアナによくやったというような感じでシオンが頭をなでてきた。


 コンコン「ディアナ・ワイアットです」

「ディアナか!入るとよい」

そうしてディアナがドアを開けて、たくさんのメイドとディアナとシオンとウィルを見た国王ウィリアムは驚いていた。

「ディアナよ。これはいったい何事かな?」

何かあるのではないかと思った護衛は国王の近くに集まっていく。

「はい。先日の夕方、私はこの城の中で私の論文が盗まれてしまいました。」

「!!!それは本当か?」

「はい。つきましては今からここで私の論文を盗んだ犯人を見つけたいと思っておりますが……よろしいですか?」

「何もここでせんでもよかったのでは?」

「いえ、国王様にも少し私の質問に答えてほしかったので、本日はこの場で解決をしようと思いました。」

「そうか、それでお主の論文を盗んだ犯人はいったい誰なんだ。」

と国王が言うと、急にやってきて、警戒し始めた国王の護衛と、なぜここに連れてこられたのかがやっと理解することのできたメイドたちはざわつき始めた。

「ディアナ、もったいぶってないでさっさと犯人言っちゃいなよ!」

「そ、そうですよ!私、今すぐ部屋へ戻りたいです。」

「分かりました。それでは今から私は今から犯人の目の前まで行きます。」

そういって、ディアナは小さい子供のメイドの方へ向かって歩き出して目の前で止まった。私がそのメイドの前で止まると、そこ子はひどく混乱したようだった。そして、周りのメイドも驚いたような目で彼女のことを見ていた。

「あなた、名前は?」

「えっと、アリスです。」

「アリスさん。すみませんでした!」

突然の謝罪にビックリしたのはアリスだけではない、周りのメイドや国王、そしてシオンやウィルも驚きを隠せていなかった。

「えっ?」

「私たちは、子供であるあなたが犯人なんじゃないかなんてことを最初は勘違いをしていたの。何の罪のない人を勝手に疑ってしまった。本当にすみませんでした。」

と言って、ディアナは深くアリスに頭を下げた。ウィルとシオンも驚いてはいたものの、ディアナが彼女は犯人ではないというのであるのであればと思い、ディアナに続いて彼女たちもアリスに深く頭を下げた。なぜ謝罪されたのか分かったアリスは

「えっと、全然大丈夫ですよ。それよりも、早く犯人を捕まえたほうが」

「そっそうだね。」

そう言ってディアナは今度こそ自分の論文を勝手に部屋から盗み出した犯人のもとへと歩いてくのだった。

「あなた、名前は?」

「私の名前はアスファラ・ユリよ」

「そう、ユリさん。私の論文を返していただけませんか?」

とディアナが言うと

「あの、すみませんが何の話か分かりません。」

ユリが論文泥棒の犯人だと言ったことに、全メイドとウィルとシオンと国王と護衛たちは驚いていた。「えっ、その人が犯人なの?」

とシオンが言った。おそらく自分が予想していた犯人と全然違っていたので、かなり驚いたのだろう。

「はい、この人が私の論文を持っているはずです。」

「ディアナよ。説明をしてくれ。」

と国王が行ったので私は説明を始めた。


 まず、犯行の経緯についてだが。その前に、

「ウィリアム様。少しお尋ねしてよろしいですか?」

「うむ」

「先日、私は夕食をとった後にウィリアム様のもとへ行きました」

「そうだな」

「そして、話が終わった後にウィリアム様は「そうじゃ、お主、わしに何か用はなかったのかな?」と言いましたか?」

「うむ、確かにわしはディアナが出ていくときにその質問をしたな。」

「それはなぜですか?」

「なぜって、お主が城内にいるときは基本自室に引きこもっていて、わしが来るように言わない限りお主は玉座まで来ないだろう。」

「はい。」

「だから、何の支持もなくお主から玉座へ来たのは正直びっくりした。わしもちょうどお主に用があったので、先にそちらを済ませてからディアナのことを聞こうとしたのだが、お主は何もないといった。」

正直ここで初めてディアナが人見知りでよかったということを言えるのだ。ウィリアムの言う通り、ディアナは人見知りであるために、国王様に呼ばれない限り基本は自室で研究をしたりしているのだ。そのため、間違っても勝手に玉座へと行くということはないということなのだ。

「はい。それではこれから犯行に至る経緯をお話ししたいと思います。」

そいって、ディアナはユリが犯行に至った経緯を話し始めた。


 まず、私に先日の夕食を持ってきたのはユリだ。そして、彼女は夕食の準備を終わらせて、私の部屋から出ていくときにこういった。

「あと、国王様が玉座へとお越しくださいとのことですので、ご夕食が終わりましたら食器などはそのままにしておいてください。私たちの方でお片づけさせていただきます。」

と。しかし、ウィリアム様は私に玉座へ来るようへと指示を誰にもしていないということに矛盾するのだ。ここまで、説明すると

「しょ、証拠がないじゃない!」

とユリは声を荒げてディアナに行った。

「メイド長のアビヤドさん。メイド服はどれくらいの周期で洗濯をしますか?」

「いや、メイド服自体は毎回違うものを着ているが、うちのメイド服は個人のサイズにぴったり合うように作っていてね、それらが混ざらないように曜日ごとに誰が洗濯をするのかを決めているのよ。」

「では、ユリのメイド服の次の洗濯はいつですか?」

「ちょっと待ってな。たしか、明日だね。」

「ということは、彼女の先日のメイド服はまだどこかにあるってことでいいですか?」

「そうだな、それぞれ個人の洗濯籠にまだ入っているはずだ。」

「メイド長さん、すみませんがそれをすべて今すぐ持ってきてもらえませんか?」

「わかりました。」

そういってメイド長のアビヤド・オリーブさんは走って洗濯籠を取りに行ったのだ。


 アビヤドさんが洗濯籠を取りに行っている間に、一旦玉座にいた護衛の人たちがユリさんを拘束した。


 そして数分後、アビヤドさんが洗濯籠を持って走って戻ってきた。

「ディアナ様。これでよろしいでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。」

とディアナは言ってさっそく洗濯籠をあさりだした。すると

「やっぱりあった。」

といってディアナが手にしていたのは、足の裏が少し黄色くなった白い靴下だった。

「すみませんユリさん。この靴下のにおいをかいでくれませんか?」

というとユリはしっかりディアナの指示に従って自分の靴下のにおいをかいだ。すると

「コンポタ……!!!」

なにかに気が付いたかのような顔をしたのでディアナはさらに説明していくのだった。


 ディアナは先日の夕食で出てきたコンポタスープを疲れていたせいでうっかりこぼしてしまったのだ。こぼしてしまったスープは、すべてきれいにふき取ったつもりだった。しかし、拭き忘れていたところがあったのだ。それが、論文を置いていた机の近くの床だった。夕食を置いていた机とは少し距離があったため、さすがにそこまでは飛んでいなかったと思っていたので、そこは拭いてなかったのだ。では、なぜそれに気が付いたのか、ディアナも気が付いたのは今朝だった。全身真っ白のはずのチトセが、なぜかお腹に黄色い何かをつけていていたのだ。それはおそらく昨日のコンポタスープがついてしまったのだろう。先ほどシオンの部屋からディアナの部屋へ走って戻ったのはその確認をしたかったからだ。そして、チトセに朝起きて動いたルートをたどってもらい、どこにコンポタの跡があるのかを発見したのだ。するとそのコンポタの跡の形がなぜか人が足で踏んだような感じになっていたのだ。一応ディアナの靴下も確認してみたが、それらしきものは発見できなかったのだが、メイドのユリの靴下にはそれらしきものがあったのだ。つまり、昨日の夕方、夕食を片付けるときにディアナの部屋へ侵入してコンポタスープの落ちている机の前まで足を運び、勝手にディアナの論文を盗んだ犯人はユリしかいないということになるのだ。

「そういうことで間違いないですかユリさん」

そういうと、

「…………はい」

と、ユリもこれ以上の言い訳はできなかったのか、あっさりと犯行を見ためたのだった。

「ではあなたにはもう二つ質問があります。まずは、あなたはなぜ私の論文を盗もうとしたのですか?」

「売るとお金になりそうだったからだ。」

「それでは最後に、私の論文は今どこにありますか?」

「それは、教えません。」

「なぜですか!あなたはもう護衛につかまっている。私の論文なんて必要なくなるのではないのですか?」

「教えれないものは教えれない」

というと

「何人かの護衛はユリの部屋を徹底的に調べ上げろ!そして、お前たち、ユリを尋問室へと連れて行け!」

とウィリアムが言った。

「「わかりました。」」

といって、護衛は、護衛組とユリの家宅捜索組とユリを尋問室へと連行する組とで3つに分かれて、護衛組以外は玉座から出ていった。


 少し時間がたち、かなり落ち着いた玉座の空間で

「ディアナよ。名推理であったな。」

とウィリアムが声を太くして言うと。

バタン。

急に死んだかのようにディアナは倒れて気絶してしまったのだ。ディアナは普段は人見知りで、人の前に立つことができるはずないのに、今日は大勢の人の前でたくさん話してしまったため、その反動が今になって帰ってきたのだ。その後、ディアナは何人かの兵によってディアナの部屋へ運ばれそのままベッドに寝かされることとなる。


 しかし、ディアナが寝ている間にも事件は起こっていた。尋問室へと連れて行かれたユリは、廊下で急に暴れだし何人かの兵士を倒して城から逃げてしまったそうだったのだ。そして、ユリの家へ家宅捜索へ行った兵も何人かやられてしまったようだった。

ついにこの第一章も終わりに近づいてきました!

まだまだ本題に入っていないというのにディアナの周りには事件がいっぱいですね!!

これからも永円の旅をよろしくお願いします!!!                by シオン

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ