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永円の旅  作者: かずキチ
第1章 始まりの朝
7/9

§ 007 ~消えた論文~

「ど、どうしよウィル!私の論文が、論文が!どっか行っちゃった!」

ディアナは論文がないことに対しての焦りから号泣していたのだ。

「と、といあえず落ち着いてディアナ。はい、ハンカチ貸してあげるから。まず、最後にディアナが論文を見たのはいつなの?」

「えっとー、たしか昨日の夕方に論文の続きを書こうとして机の上に論文を広げて作業を始めた瞬間にシオンが入ってきて私を連れて行った。確かそれが、私が最後に論文を見た時だったと思うよ。あと、ハンカチありがとう。」

「なるほど……ディアナは論文を広げて片づけなかったの?」

「はい!多分ドラゴン退治が終わってそのまますぐに部屋に戻ることになるだろうと予想していたから。」

「う―ん、ディアナ落ち着いてきてね」

「はい?」

「あなたの論文は盗まれたのよ!」

「へっ?」

『ウソウソ、論文が盗まれた!?私の途中までしかできてない論文なんて、持っていっても何にもないのに。なんであんな中途半端な論文を持っていったの?』

「というかディアナ、ドラゴン退治した後に、部屋に戻ってから論文見てないの?」

「うーん。それが、よくわからないんだよね。昨日は戻ってきて、そのままお風呂に行った後に、すぐに寝ちゃったから机の上を見る余裕なんてなかったよ」

「そっか」

「あっっ!チトセだ!」

「おいおい!俺は論文なんて盗んでなんかないぞ!」

「いや、違うってばー。チトセは目が覚めた後に、私の部屋を見て回っていたじゃんよ。それに、ちょっと目ざめの運動がてら少し体動かしたりしていたでしょ?だから、そのときに私の論文が机の上にあったか記憶を思い出してよ!」

「うーん、俺が身を覚ました時には論文なんてなかったと思うぞ。俺だって論文が気になるわけだ、ゆえにお前の書いた論文に目を通さないわけがない!」

「確かに、ウィル、チトセは何もわからないって」

「そっか。でも、チトセ君のおかげで犯行時刻をかなり絞り込めたよ!」

「ほんと!」

「どうだ、俺様はすごいだろディアナ!」

「何言っているの?すごいのはあんたじゃなくてウィルだよ。」

「はいはい、そうですか」

「まあ、時間を絞れたとしても、犯人はだれなのか……」

「ディアナ、最近この部屋に出入りした人間って、ディアナ以外に誰かいないの?」

「えっと、この部屋に入って人間の種類は合計3人。」

 一人目はディアナをこの部屋から連れ出すために入ってきたシオン。

 二人目はディアナに朝食をいつも持ってきてくれる小さなメイドの女の子。

 三人目は夕食をいつも持ってきてくれる胸の大きいメイドさんだ。

「うーん、個人的には二人目の小さなメイドさんが怪しいかな。」

「えっ?なんで?」

「なんでって、子供の姿ってね、あまり誰にも警戒されることってないの。だから、もしかしたら小さな子供のメイドに化けて、そいつがディアナの論文を盗んだのかもしれない!」

「えー、俺はその小さいメイドよりも、シオンに一票な。」

「なんで?」

「だって、シオンのことだから、論文を私の部屋に置いとけば合法でディアナを私の部屋にあげることができる!と考えてそうじゃないか?」

「いや、論文を盗んでいる時点でもうすでに合法じゃないんだけどね。」

とウィルが言うと、

「いや、シオンはそんなことしないよ。確かに強引なところは結構あるけれども、彼女が法を犯すようなことは絶対にしないと思う。」

そう、ディアナから見たシオンという人物は、確かに日ごろはうるさくてトラブルメーカーであり、かなりお転婆なところがあったりするのだが、六賢者という称号に対して誇りがあり、魔法で人々を守ることが本当に好きな人なのだ。そんな人が罪を犯すようなことは絶対にないとディアナは確信できる。

「疑ってはないよ。疑ってはないけど、一応念のためにもシオンさんのところに言って聞いてみようよ。もしかしたら何かわかるかもしれないよ」

とウィルは言ったので、ディアナたちは部屋を出てシオンの部屋へと移動するのだった。


 コンコン「すみませんシオンさん、私です。ディアナです。」

ガチャ「えっ?ディアナじゃない!私の誘いなしに来るなんて、私とてもうれしいわ!あっ、ウィルも連れてきてくれたのね。二人より三人の方が盛り上がりそー!」

「おいっ、俺様のことをすっかり忘れているな」

「あっ、チトセ君もいたんだー。ごめんね、小さすぎて全然視界に入ってなかったわー!」

「この女!俺様に対して喧嘩を売りやがったな!いいぜ、その喧嘩買ってやるよ。やっちゃっていいよな?ディアナ!」

「あの、とりあえず中に入ってもいいですか?」

「積極的なディアナちゃんもいいねー」

シオンの顔が少し怪しくなったので、私とウィルは何かされる前に強引にシオンの部屋へと入っていった。チトセは、今の雰囲気のディアナの邪魔をするとハブ酒にされてしまうと思いすぐに口を閉じたのだった。


「で、いったいどうしたのかね?」

「シオンさん、ディアナの論文知らないかな?」

「ディアナの論文?」

「そうです、魔法追尾システムについての論文を書いていたのですが、それがどこかに行ってしまって」

「それを私が盗んだと思っているのかい?」

とシオンが言うとこの部屋の空気が重くなった。それもそうだ、勝手に部屋に入ってきて何の用だと聞いたら、いきなり疑われるなんて誰でもこんな空気になるはずなのだ。

「一応この城に来てから私の部屋に入ったのは、お城のメイドとシオンだけなので、何か知ってるかもしれないと思って聞きに来ただけです。」

「それを疑っているというのではないのかな?」

「いえいえ、そんなことはありません。シオンの頭で私の論文は理解できるものではないという自信があるので、かりにシオンが私の論文を勝手に盗んだとしても何のメリットもありませんから」

そう、シオンは六賢者の中でも一番二番を争うほど頭が悪いのだ。魔法というのは複雑の術式や計算をして初めて使うことができるのだが、シオンのような人は、何も考えずともなんとなくで魔法を使うことができる天才に含まれている部類なのだ。そのため、彼女はあまり魔法については深く気にしないので、知識がかなり浅いのだ。

「ぐっ、こんな疑いの晴れ方は嫌だったな。」

「でも、シオンさんらしいじゃないですか」

「ウィルまでそんなこと言う!もう少し遠回しに言ってくれたって良かったじゃんか!」

「というわけで、私たちはシオンのことは1ミリも疑ってないから安心してほしいな!」

そう言うと、シオンはしばらくの間落ち込んでしまったのだった。ベッドに潜って落ち込んでしまったシオンの様子をなんとか励まして、元に戻したディアナとウィルは、さっそくシオンに先ほどディアナの部屋で話したことと同じ話をしたのだ。

「うーん、確かに怪しいのは子供のメイドだな。私はこの城に2日ほどいて、朝食も昼食も夕食もメイドに持ってきてもらっているのだが、まだその子供のメイドなど見たことないぞ。」

「そういえば、私も毎月この城には来るのですが、子供のメイドなど一回も見たことがありませんでしたかもしれないです。」

「えっ?そうなの?」

「うん。よし!これで、犯人は子供のメイドという予想がついてきたぞ。」

「ですが、問題は証拠ですね。証拠がなければ意味がありません。」

「やってないって言われたらもうどうにもできないもんねー。」

この国では、犯罪者を捕まえるには証拠が必要になってくるのだ。

「証拠って言といわれてもなー」

この時、ディアナは自分の頭をフル回転させていた。

『本当に子供のメイドが犯人なの?私は個人的には大人のメイドさんの方が怪しいと思ったのだけれども。胸が大きいのも怪しいし、なんか、どこかが怪しかった。どこなんだ。どこがおかしかったんだ。』

「そういえば、あの日国王様と何を話していたの?」

「えっ?えっとねー。…………っっあ!!!」

とディアナは何かをひらめいたかのように目を見開いていった。

「私、犯人分かっちゃったかもしれない!」

「「ほんとに!」」

とウィルとシオンは同時に驚いていた。

「じゃあ、さっそく早く教えなさいよディアナ。」

『早く教えてあげたいのだけれども、一刻も早く自分の部屋へ戻って証拠を見つけに行かないと、もしかしたら先に犯人が私の部屋に侵入して証拠隠滅しちゃってるかもしれない。しかも、急いでシオンの部屋に来たから部屋にカギ閉めるの忘れたっちゃし。』

ということでディアナは部屋に戻ることを優先したのだ。

「ちょっと私、部屋に戻るねー!」

「ちょっ、ディアナ!なんでよ!ここで教えてくれたっていいじゃんか。」

「シオンとウィルはすぐにメイド室に行ってメイドたちを玉座の間の前まで連れて行ってそこで待機してて!子供のメイドと胸の大きいメイドは絶対に何があっても連れてきてね!詳しい話はその時にするから!」

そう言って、ディアナはシオンの部屋を出て走ってディアナの部屋へと戻っていったのだった。


 いつもなら人の多い道を避けて自室へと戻るディアナなのだが、今日は人通りなど気にせずに城内を全力で走って自室へと向かっていった。

途中「こらー!ディアナ・ワイアット!城内では走るなー!」

とアーサーの声がしたようにも思えたのだが、気にせずに走り続けた。


「はぁ、はぁ。やっと着いた」

気が付くと目の前には自室のドアがあった。すると

「ディアナ待ってくれよ!」

と言ってついてきたのはチトセだった。

「よかった、チトセのことすっかり忘れてたけど、来てくれて」

そういってディアナはドアを開けて、チトセに指示を出した。

「チトセ、今日あなたが起きてから何をしたのかを正確に再現してくれる。」

とディアナはチトセに指示を出したのだった。

「別にいいけどどうしてだ?」

「なんでもいいから!早く再現してってば」

そう言うと、チトセはさっそく私のカバンの中へ入っていき、今朝の行動をもう一度再現するのだった。


 そうして、確実に犯人を捕まえることのできるような証拠をゲットすることができたディアナとチトセは、さっそくみんながいる玉座へと向かっていくのだった。

次回第8話ではいよいよ犯人を見つけていきたいと思います!

次回もお楽しみに!

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