§ 006 ~六賢者の間~
翌朝。
「ディアナ!ディアナ!起きろー。朝だぞー」
聞き覚えのあるうるさい声によってディアナは目を覚ました。しかし、ディアナはまだ寝起きで寝ぼけているため、脳を覚醒させるべくいつも通りコーヒーを入れてさっそく入れて、それを一口飲む。今日のコーヒーは、城内で仕入れてきたコーヒー豆を使っている。城のコーヒー豆はやはりとてもリッチな感じのまろやかなコーヒーだった。2口それを飲むとディアナの頭は覚醒していた。ディアナの意識がしっかりすると、目の前には小さなヘビが一匹いたのだ。
「あっ!チトセ。冬眠から覚めたのね。」
「おう!このチトセ様完全復活だぜ!」
この子はヘビのチトセ。正確にはヘビのような見た目の精霊である。とてもきれいな白色なのだが、なぜか今日は少しお腹の部分が黄色かった。
「チトセ、おなかよごれてるよー」
といい、チトセのお腹を拭いてあげたのだ。
この世界にも精霊という者は存在している。もちろん、この世の中の魔導士が引き連れている精霊は、基本魔法を使うことのできる魔精霊なのだが、ディアナの引き連れている精霊。チトセは魔精霊でない。つまり魔法を使わない懐精霊と呼ばれる精霊なのだ。魔法が使えない精霊だからと言って役に立たないわけではない。チトセはヘビであるからどんなに小さな隙間も通ることができるし、地面にもぐることだってできる。ただ、ある時急にいなくなってしまい、気が付くとディアナのカバンの中で一匹で冬眠していることがある。そう、チトセはよく一匹で勝手にどこかへ行ってしまうのだ。それでも、居ててほしいときには必ずディアナの前に姿を現し、ディアナを助けてくれる。意外と優秀な精霊なのだ。
「ディアナ!俺の分のコーヒーは?」
「えっ?もう飲んじゃったからないけど」
「えー!ディアナのけち!せっかく冬眠から覚めてやったというのに。それはひどいよ」
「わかったよ。とりあえず私は朝食を食べた後に国王様の所へ行かないといけないから、その後にコーヒーを入れてあげるから。それまで待てる?」
「わかったよ。絶対だからね!あの国王が長い話を始めたら噛みついてやる」
「そんなことしたら絶対にコーヒーあげないからね!」
とディアナはチトセと久しぶりの会話をしていると
コンコン
「おはようございますディアナ様。本日の朝食をお持ちしました。」
「はっ、はい!ありがとうございます。あ、どうぞ入ってください」
「はい。ありがとうございます。それでは、失礼します。」
と言って入ってきたのは、昨日も朝食をディアナの部屋に持ってきてくれた少女と同じ子だった。
「それでは、わたくしは1時間後に食器を下げに来ますので、それまでごゆっくりどうぞ。それと、先日はお手紙ありがとうございました。」
「いえいえ、お礼なんて大丈夫ですよ。私の方こそ毎朝ありがとうございます。1時間後は私はこの部屋にいてないので、鍵を開けておきますので食器はそちらにお任せしてもよいですか?」
「はい!かしこまりました。」
そういって小さなメイドはディアナにお辞儀をして部屋を出ていった。
「ディアナ。お前、人見知りは変わんねーな!(笑)」
「あ!そうだ。今夜はみんなが集まった六賢者の間に行くから、そのときの手見上げにハブ酒なんて持っていったらみんな喜ぶかな?チトセ」
「はい、ディアナ様申し訳ございませんでした。」
と言うチトセの反省した態度を見たディアナは、思わずお腹を抱えて笑ってしまった。
「デ、ディアナ様。朝食が冷めます故に、早く食べたほうが良いと思われますぞ。」
「それもそうね。それじゃあ、さっそく食べましょうか。」
そういってディアナは運ばれてきた朝食を食べるのだった。
「ディアナー。俺も腹減ったよー」
「そうなの?仕方ないなー」
ここで駄々をこねられても面倒だと思ったディアナは、フルーツをチトセにあげるのだった。
朝食を食べ終わったディアナはローブに着替えてからチトセを連れてさっそく国王様のもとへと向かうのだった。
「失礼しまーす」
「おっディアナ。来たか。どうやらチトセ君も目を覚ましたようだね。」
「おっすウィリアムっ。痛いなディアナ」
「毎年国王様の前では礼儀正しくしなさいって言ってるでしょ!ハブ酒にするよ?」
「っ!ごめんなさーい」
「はっはっは。いいじゃないかディアナ。彼の好きなようにさせなさい。」
「で、ですが、」
「そんなことよりも、すまぬがお前たちは出て行ってくれぬか。」
と国王は近くの護衛の人たちに退出するように命じた。
「チトセ、これから私が国王様と話すことは、絶対に。絶対に!誰にも言っちゃだめだよ。もちろん他の六賢者の人たちにも絶対に言っちゃだめだからね。」
「わ、わかったよ」
「あと、国王様とは今から打ち合わせをするからチトセは何もしゃべっちゃだめだからね。今あなたが話に入ったらややこしくなって時間が長引いてしまうから。」
「はーい」
といってチトセはこの広い玉座の探検を始めるのだった。
「それではディアナよ。打ち合わせを始めよう」
といって、ディアナとウィリアムは2時間ほど潜入捜査の打ち合わせをした。
内容は、3週間後に始まるソーサリー学校の入学式に私は試験を受けて、実力で合格しなければならないのだ。少しでも国が私の入学試験に手を加えようとすると、私が潜入捜査に来ていることがすぐにばれてしまうためだ。そのため、国王様は私に勉強するようにと言ってきたのだが、ディアナは魔術にはかなり詳しく、おそらく勉強せずとも試験には余裕で合格することができるだろうと思っていたのだが、さすがに満点合格といくと怪しまれてしまうので、何問かは適当に答えなければならないと。そして、入学試験に合格してしまえば、学園の潜入調査の方法は私に任せるとのことだった。しかし、期限は1年であるため少し急ぐ必要があった。それでも、このときのディアナは学園長だけをマークすればよいと思っていたので、1年もかけずに終わらせて、早く旅に出たいと思っていたのだった。とそんな感じで今後の予定も決まったため、打ち合わせは終わった。
打ち合わせが終わったディアナが次に向かったのは六賢者の間だった。昨日は夜遅かったのと、ディアナが疲れていたので、六賢者の間へ行く事は後回しにしたのだが、さすがに今日ぐらいは顔を出しておかないといろいろと後が面倒なのである。
六賢者の間の扉の前まで来たディアナは一呼吸おいてから扉を開けるのだった。
ガチャ
「は、はいりまーす」
「おっ、この声はディアナか!」
「ほんとだ。ディアナちゃんだ!」
とさっそく六賢者の人たちがディアナが来たことに反応した。ここで六賢者を紹介しよう。
「元気だったか?」
と聞く彼は、【炎の賢者 イード・マルチネス】通帳マルチである。彼はとても情熱的な人で、声も大きい。すぐに絡んでくる彼のことに対して、正直に言うとディアナは苦手意識を持っている。
「げっ、元気でしたよー」
「そうですか。元気そうでなによりですね」
と言った彼は【地の賢者 フリージア・ヒックス】である。彼は六賢者の中でも最年長であり、今年で30歳になるといっていた。そんな彼をディアナはひそかに尊敬していた。
「フリージア様もお元気そうで」
「こいつが元気じゃないわけがないじゃないですか!ヒックスさん!」
と言った彼女は以前にも紹介した【雷の賢者 シオン・サラマンダー】である。改めて言うと彼女はとても社交的である。そのため六賢者全員とある程度仲が良いのだ。
「ディアナちゃん、イケメンの土産話、楽しみにしてるからねー♡」
彼は【水の賢者 ポセイドン・アクア】である。彼は同性愛好家ということで六賢者の中でも有名である。彼がこの中で一番六賢者としての年月は浅いが、六賢者名だけあって、実力は以外にもあったりするのだ。
「あ、はい。気が向いたらで」
と言ってディアナは用意された自分の椅子に座るでもなくテーブルの下へと移動した。
「ヤッホー!ウィル」
「あっ、ディアナ。久しぶり!」
テーブルの下に隠れていたのは【風の賢者 ネア・ウィルダネス】である。彼女はディアナと同じく人間恐怖症である。同じ恐怖感を持つ元同士で非常に仲が良く、ディアナが城に戻ってきているとき、自室以外では基本ウィルと共に行動をしているほどに仲が良い。二人と一緒なら少し人数が多いところも行けるような気もするのだ。
「さて、皆もそろったことだし、そろそろ六賢者会議を始めます」
と地の賢者のフリージアさんが言って六賢者会議は始まった。
六賢者の会議の内容はこれと言って極秘であるわけでもなく、毎年この時期の六賢者会議の内容はディアナの一年の旅である。それにプラス、今年の建国祭の警備の配置の話や、建国祭の流れなどの確認や打ち合わせなどを行ったりしている。
様々なことを話したりしていると、すでに4時間ほどは経過して六賢者会議は終了となった。六賢者会議中のチトセは、基本この部屋のどこかを探検している。物音を一切立てずに。少しでも会議の邪魔をしてしまえば、ディアナの機嫌を損ねてしまったり、今すぐにでもハブ酒にされるのではないかという恐怖があったからだ。そのため、チトセはこの六賢者会議の時間が一番苦手なのだ。だからと言って勝手に外に出て、場内をうろうろすると間違って入り込んだとヘビだと勘違いされて、追い出される可能もあったので、この部屋からは出られなかったのだ。六賢者会議が終わった後は、ディアナとウィルでいつもは城をうろうろしたり、建国祭の準備の様子などを見に行った入りしているのだが、今年は、ディアナが今研究している魔法追尾の手伝いを少ししてもらいたいと思い、ディアナは、ウィルを自室へと呼ぶことにしたのだ。人間恐怖症同氏気が合う二人は部屋に行くまで今年一年どんな恐ろしい体験をしたのかというお互いの体験談を語り合うのだった。
部屋の前についたディアナとウィルは部屋へと入り、さっそくディアナが研究資料を見せようとしたのだが、ここで事件が起きたのだった。
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