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初めてのお買い物

 新居が決まったことでやるべきことができた。

 旧ロゼリア邸は外観は綺麗で立派に見えるがそれはあくまでも外側。

 中はまだスカスカ、家具などは少しは残っているがそれでも生活していくには足りない。

 差し当たってまずはそれらを買い揃えるところから――――メイキング作業を行わなければならない。


「宿屋のベッドはそこそこまあまあだったから、せっかくだしいいやつが欲しいわね」


「ふわあ……こうして町に出るのって初めてかも……。楽しみだなぁ」


「家具も一式揃えないといけないし、今日は忙しくなりそうね」


「私は久しぶり食べるご飯が楽しみです! 以前は身体に優しいものしか食べられなかったので色々食べてみたいです!」


 新居から買い物のためにジル達は並んで歩いていた。

 これまではジルとルカだけだったそこにイズが加わっている。

 これまで病床に伏せがちでまともに外出をした事がないイズにとっては初めての町となり、ルカの隣で楽しそうにはしゃいでいる。


「そういえばなんだけどさ。イズは普通に出歩いて大丈夫なのか?」


「え? ダメなんですか?」


「そうじゃなくて……こういう言い方は悪いがイズは故人だろ? バレたら大変じゃないか?」


「あはは、兄さん心配しすぎですよ~。私が生きてたの何十年前だと思ってるんですか? そもそも部屋からそんなに出た事ないので私の事を知ってる人なんていないと思いますよ? ……うぅ、言ってて悲しくなってきました」


 イズが生きていたのは何十年も前で、とっくに幽霊歴の方が長い。

 生前もまともに外出したことはなく、幽霊となってからも家を離れたことは少ないため、イズのことを知る人はいないはず。

 そのため、精霊体で姿を見られるようになったイズでも堂々と外を歩けるのだが、言っていて悲しくなったイズはしゅんとして落ち込む素振りを見せる。


「……じゃあ、イズにとっては初めての買い物になるのかな? これからまた生きていた時みたいに暮らしていくからイズも欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ」


「太っ腹ね。私もガンガンいくわよ」


「お前は遠慮してくれ。一応格安になっていたとはいえ家を買ったわけだからな。分かってるよな?」


「え、知らないわよ。ね、イズ?」


「はい、ルカちゃん!」


「君達、鬼だな」


 ジルの新居はイズがいたため、いわくつきの幽霊物件として安く手に入れることができたが、それでも家という買い物は決して安いものではない。

 湯水のごとく使えばお金はすぐに消えてしまうのだが、ルカの容赦なさげな姿は、懐がかなり寒くなることを予感させる。

 ジルは勘弁してほしいと思いながらも、二人の和気あいあいとした様子を見ると強くは言えなかった。


「はぁ、まあ……金はまた稼げばいいか」


 そう呟いて眺めたのはルカに渡されたままの氷のコアストーン。

 イズのコアストーンがもたらしてくれたのはジルのまだ知らぬ新たな力。そして――――その宝石の持つ冷たさはこれからどんどん軽くなり、凍えていくジルの財布を暗示していたのかもしれない。


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