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大金の使い道

 ギルドで大金を受け取った後、軽めの依頼をこなしたジルはルカの末宿に戻ってきた。

 病み上がりに軽いリハビリをするつもりで出かけたのだが、予定外のボーナスが入ったことでジルはどこか浮かれている。

 そんなジルの様子にルカが気が付かない訳もない。

 戻ってきてずっとにやにやしているジルを問い詰めて早々に白状させた。


「へえ……あのバカが金を……。ま、当然ね。元はと言えばあのガキを倒したのは私達だし?」


「結構な額もらえたからこれまで休んでた分全部取り返せたよ」


「お金はいくらあっても困らないものだしね。さーて、これならちょっとくらい豪遊してもいいわよね」


「あ、そのことなんだけど、ちょっといいか?」


 ルカは自分たちが報酬を貰えるのは当然の権利と言う。

 手柄を譲ったとはいえ彼らがした事といえば妨害同然の行為のみ。

 ロアを打ち取ったのは自分たちの功績であって、彼らはそれを指をくわえて見ていただけというのがルカのスタンスだ。


 だからこそ、この大金も本来の受取人の元に戻ってきたという認識で、ルカも頬を緩ませてそのお金の使い道を考える。

 ルカは普段はソロ冒険者のジルに合わせてそれなりに節約しながら生活しているため、久しぶりに贅沢ができると思ってテンションが上がっているところだったが、ジルが待ったをかけたところで一旦思考を止める。


「なによ。あんたはもう使い道考えてるの?」


「ああ。せっかくまとまった金が手に入ったし……思い切って家を買おうかと思うんだ」


「……へぇ」


 家の購入。

 ジルの考える大金の使い道を聞いたルカは一瞬呆気に取られたが、その後すぐに興味深そうに目を細めた。


 現状、ジル達が何に費やすお金が多いかというと、その大半は毎日の宿代と食事代である。

 決まった住まいを持たず、行く先々で宿を取る生活は、あちこちを転々とする冒険者に合った生活かもしれないが、ジルはソロになってからロゼルの町から拠点を移すことは考えたことはない。


 持ち家を手に入れて、毎日の宿代という少なくない支出から解放されれば、金銭的には更なる余裕が得られるだろう。

 そのために家の購入という思い切った出費をジルは提案する。


「いいんじゃないの? でも、宿から家に住むところが変わるだけよね? 宿だと何か不都合があるわけ……?」


「その……ルカって一応女の子だろ?」


「一応って何よ。はっ倒すわよ」


「これまで出費を抑えるために二人で一つの部屋を取って使ってきたけど……その、そういうのって誤解されるんだよ」


「誤解?」


「その……分かるだろ? 同じ部屋に男女……そういうことしてるって思われるんだよ……」


「……はっ?」


 初めは何の話をされているか分かっておらずきょとんとしていたルカだったが、意味が分かった途端ゆでだこの様に顔を真っ赤に染める。

 いくらルカが人間ではないとはいえ、構築する身体は人間と遜色ないし、知識もある。

 すべてを察したルカはプルプルと肩を震わせる。


「……そ、そういうことなら仕方ないわ。でも、意外ね。あんたもそういうの気にするのね」


「いや、するだろ。ルカ可愛いし、なんか距離感近いし、いい匂いするし」


「えっ……あぅ」


 容姿も整っていて美少女と言って差し支えない彼女と常に共にいてどうも思わないほどジルも男として死んでいる訳ではない。

 むしろ、かなり意識しているし、させられている。


「とりあえず少し寝坊しただけで、昨日はお楽しみでしたかとか、熱く激しい夜でしたかとかからかわれるのは嫌なんだ」


「……お楽しみ……? 熱い? 激しい……っ????」


 ジルとルカの関係は精霊とその契約者。それは本人たちが一番分かっている。

 しかし、傍から見ればルカは普通の人間。ただのかわいい女の子。

 そんな彼女が毎日毎日ジルと同じ部屋に寝泊まりしているとなれば、周囲の人間もそういう関係だと思ってしまうのも仕方ない。


 そんな傍から見れば若いカップルに大人は容赦なくちょっかいをかける。

 特に今ジル達が利用している宿屋は継続して利用しているため、ジルも店主とは顔なじみだ。


 ジルにはほんの冗談で言っているつもりで、ジルもそれを軽く聞き流しているが、どうしてもルカを意識させられてしまう。

 ルカは顔を真っ赤にして動揺しながらも、もう分かったからと耳を塞いだ。


「あーあー! 分かったから! さっさと家を買って引っ越しましょ!」


「……ああ、ありがとう。今度物件を見に行こう」


 ルカは瞳を潤わせながらこくりと頷いた。

 しかし、結局のところ宿生活から抜け出したところで、ひとつ屋根の下に男女二人という前提条件は変わらない。

 生々しい話題で冷静な思考を失っている二人は、そんなことにも気が付かないのだった。


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