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消滅

 轟音が鳴り響き、爆炎が広がった。

 その中心から弾き出された緑色の輝き。

 風のコアストーンを三つ掴み取ったジルは、ロアに大きなダメージがあったことを確信した。

 しかし、吐き出した風のコアストーンはまだ三つ。完全に力を削ぎ取ったわけではないため、まだまだ反撃の可能性も否めない。


 ルカと短いアイコンタクトを交わして、警戒を緩めずに身構える。

 その時、視界を狭めていた霧や煙を払う突風が吹き抜けたが、ジルは落ち着いて炎の壁で防ぐ。


「けほっ、けほっ……ちゃんとガードしたはずなのに……何で……?」


「熱は風を浮かすんだ。蒸気熱と炎熱で自慢のガードは剥がさせてもらったぜ」


 ジルがこの組み合わせを選んだのは、火でも水でもなく、二つの性質を合わせてできる蒸気に着目したからだ。

 確かに火属性のコアストーンの力は攻撃に特化しており、火力でならコアストーンを貯めこんだロアにも対抗できたかもしれない。

 しかし、火属性は風属性には相性がいいとは言えず、さらにはここが森で周囲に生い茂る草木に炎が燃え広がる危険性を考慮するならば単体での使用には向かない。

 そこで水属性との組み合わせて蒸気という形で出力し、熱で風を浮かすという方法を攻撃にも防御にも転用したジルだった。


 ロアの風のバリアは確かにロアを囲むようにして展開されていた。

 しかし、そこにジルの攻撃が刺さり爆発と上記の噴射を繰り返すことで、徐々に規則正しく巡っていた風の配列は乱れていき、最終的にはガードを為さないほどに崩れてしまった。

 そうして崩れたガードを通り抜けていてジルとルカの攻撃は見事ロアに直撃したという訳だった。


「くっそぉ……力が入らない」


「無理しなくていいわよ。大人しく残りも寄こしなさい」


 手と膝を地面についたまま、ロアは顔を歪める。

 身体を起こすもふらついていて、飛行もままならないのかせいぜい少し浮くくらいしかできていない。

 そんな彼女を見下して愉悦に浸るのもルカとしては悪くないが、それよりも大切なことがある。


 ルカは堂々とロアに近寄る。

 ロアは怯えたような顔で風を巻き起こすが、コアストーンと魔力を大幅に失い威力も削がれたそれをルカはものともせず光の結界を張りながら突っ切る。

 そして、闇を纏わせた足を容赦なくロアのお腹に突き立てて蹴り上げる。


「かはっ、げほっ……! うぁっ」


 ロアの身体から弾き出された緑色と青色の輝き。

 風のコアストーン二つと水のコアストーンを取り込んだルカはどさりと地面に倒れ込んだロアを闇の重力操作で無理やり引き起こす。

 だらりと手足はぶらさがっているのに、身体は起こされ宙に浮いている。

 それはさながら操り人形(マリオネット)だ。


「ルカ……ちゃ、ん」


「無様ね。でも、あんたの力は大したもんだったわ。これで風の力を大雑把に振るうだけじゃなくて、他のコアの力も併用されたら手に負えなかったかもしれない。特に光とかね」


 ロアは追い詰められてから強い風を巻き起こすことで全てに対処しようとしていた。

 距離を取った撃ち合いでジル達を退けようとしたロアだったが、それはジルにとっても望む展開。

 光のコアストーンをルカにすべて預け防御に徹してもらい、ジル自身は火と水の力でロアの風を弱体化させることができた。

 それが可能だったのは、ロアがジルやルカに対しての接近を避けていたからだ。


 だが、ジル達が最も警戒しないといけなかったのは、高速で詰め寄られて接近戦に持ち込まれること。

 それをさせないために弾幕を用いて移動を制限したり、範囲攻撃を用いて迎撃させたりと策は巡らせたが、強行突破の線は常に拭えなかった。


 ロアもルカと同種の精霊で各種コアストーンを取り込んでいる。

 その中で気を付けなければいけなかったのは、光のコアストーンの力で防護壁を築きながら風の高速移動でジル達の張った策を強引に破るというものだったが、ロアはそれをしなかった。

 いや、できなかったというべきだろうか。


「以前ルカから聞かされてて助かったよ。各種コアストーンを取り込んだ精霊でも個人によって苦手がある。あんたは光の力の扱いが苦手なんだってな……!」


「……やるね。そこまで、考えてたなんて、びっくりだよ。でも……そっか。そうだね。ぐうの音もでないや……」


 ロアは驚いたような反応をしたがやがて納得したかのように俯いた。

 彼女が最も防護性に優れた光のコアストーンの力を使いこなせないという情報。

 それを土壇場で記憶の奥底から引っ張り出すことができたのはジルにとってはかなり大きなファインプレーだった。


 そして意気消沈したロアの身体にルカは腕を突き立て刺し込んだ。


「そ。これの力を使われたらちょっと話が変わってくるところだったけど……そうならなくて本当に助かったわ」


 刺した腕をまさぐるように動かし、何かを探す。

 目当てのものを掴みひっこ抜いた手には光のコアストーンが握られている。


「さて……と。無抵抗な相手を甚振ってると何だか悪い気がしてくるわね」


「……そんなこと言って……ちょっと楽しんでるくせに」


「そんなことないわよ。でも、苦しそうだから終わらせてあげる。せっかくだし遺言の一つでも聞いてあげようかしら?」


「そう? じゃ、腕輪のおにーさんに……」


「何だ?」


 ルカはロアからすべてのコアストーンを奪い去る前に彼女に言葉を紡ぐ猶予を与えた。

 ロアはそれを素直に受け取り、顔をジルに向ける。

 そして――――。


「ルカちゃんはおにーさんに隠してることがある。その腕輪のこと……ちゃんと聞いておかないといつか後悔することになるよ」


「……ご忠告どうも。覚えておくよ」


 彼女が告げたのは戦いの中でも口にしていたもの。

 ルカがでたらめに耳を貸すなと言っていたように、初めは動揺を誘う罠だと思っていた。

 だが、この状況で再度告げる。彼女の表情はジルを困惑させて弄んだり、ルカとの不和を煽り関係に亀裂を入れたりと画策しているものには見えない。

 むしろ、本気で身を案じてもらっているような気さえしたジルは、その言葉をスッと受け入れた。


「じゃあ……さよならね」


「あぁっ」


 ドスッと鈍い音と共に、ルカの細い腕がロアの胸を貫いた。

 ロアの背中の向こう側で再び顔を出したルカの手には、ロアが所有していた残りのコアストーンがある。

 つまり、ロアの持つコアストーンが無くなったということを意味する。


「じゃ……あ、ね」


 ロアの意志が宿る風のコアストーンが弱々しく光る。

 その淡い光がルカの握る手によって覆いつくされた時、ロアの小さな身体は魔力の粒子となり緑色の光を放って空に溶けていく。

 それは風精霊ロア・ソベリルの消滅の瞬間だった。


いつの間にか10万文字超えてました〜

もっと続けていけるように頑張ります……!

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