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異常事態と因縁の再開

 ジルの体調も回復し、コアストーンの多用により消費した魔力も戻った。

 休んでいた分を取り戻すため、張り切って依頼をこなそうと意気込むジルだったが、宿から冒険者ギルドに向かう途中で渋い顔を浮かべる。


「何か風が強いな……いてっ」


「あ、ごめんなさい」


 突風が吹き抜けて、ルカの長い髪がはためき、隣を歩くジルに往復ビンタのような形で炸裂する。

 強風の横風、向かい風に行く手を阻まれて、出鼻をくじかれる。

 早くも宿に戻って休みたいくなる気持ちを押さえつけ、何とか冒険者ギルドにたどり着く。


「ギルドも何か忙しそうだな……」


「そうね。何かあったのかしら?」


「詳しく聞いてみるか」


 到着した冒険者ギルドも普段とは異なる様子で、賑わうと言うよりは慌ただしいという表現がしっくりくる。

 そんなただならぬ雰囲気にこれまで休んでいて何も知らないジルは、手の空いたギルド職員に話を聞くことにした。


「すみません、この騒ぎ……何かあったんですか?」


「最近断続的に吹き続ける強風のせいで、周辺の魔物が活性化しています。現在は町の警備の強化、商人の護衛、原因の調査などの依頼で忙しくなってますね」


「なるほど……この風が……。ちなみに原因調査の方は?」


「北の森が強風の発生地だと予想されるのですが、魔物の活性化による影響が大きいため中々進んでいない現状です。普段なら低めの難易度に設定しているような討伐の依頼も、今回はやや高めに設定しなければいけないということで、受付対応の方もいつもと違って対応が難しいですね」


 ジル達が感じた風の影響は思ったよりも大きいようだ。

 嵐で魔物の気が立って狂暴になってしまうというのはよくあることだが、それに似た現象が起きていて、その影響を受けた魔物が人里にまで押し寄せてくる事態になっている。

 冒険者ギルドが慌ただしくしているのはその異常事態の対応に追われているからで、依頼を受ける冒険者もその影響でバタバタとしている。


「何か変な魔物でも住み着いたのか……? なんにせよ早く解決しないと」


「そうね。その調査の依頼はこいつでも受けられるのかしら?」


 そう言ってルカはジルの持つ冒険者カードをひったくって、受付嬢に見せる。

 その後、受付嬢の顔が険しいものに変わる。

 それが答えだった。


「……申し訳ありません。こちらのランクでは依頼をお受けすることはできません」


「ま、そうだよなー」


 何となくそんな予感はしていた。

 魔物の活性化と依頼難易度の上方修正。

 話を聞く中で調査が一番危険であることは明確であり、それを依頼として受けるにあたって必要になる実力。

 それを示すための冒険者パーティランクが足りないだろうというのはジルも分かっていた。


「ちっ、使えないわね。じゃあどうすんのよ」


「まぁまぁ、そんなに目くじら立てなくてもいいだろ? すみません、色々教えてくれてありがとうございます」


 見るからに不機嫌になるルカをなだめながら、ジルは事態を説明してくれた受付嬢にお礼を言いながらその場を離れ、冒険者ギルドを後にした。


「ちょっと! なんで依頼の一つも受けないまま出てきてるのよ!」


「あの様子だとこれを何とかない限りまともな依頼は受けられなさそうだしなー。ルカだって俺が森の採取依頼や討伐依頼を受けてるのは知ってるだろ?」


「それはっ……分かってるけど……」


「それに依頼として受けられないだけで、森の立ち入りを禁止されたわけじゃない。どうせ気になるんだろ?」


「……ええ」


 冒険者ギルドには冒険者ギルドのルールがある。

 ジルも冒険者として活動するならば、そのルールには従わなければいけない。

 だが、その冒険者をいう立場を置いて、ただのジルとして活動をするならば話は別だ。

 わざわざ冒険者ギルドが難易度帯を設定して依頼の受注可能を判断しているのだから、決して推奨されることではない。


 だが、それは保有するランクと実力が一致している場合。


「話を聞いた感じ依頼のランクが上がってる原因は魔物の強化というよりは狂暴化によって徒党を組んで襲ってくることを考慮したものだろう。単体なら相手できてもそれが複数相手になったら話が変わってくる」


「……でも私達ならそれくらいどうってことない……?」


「俺はそう踏んでる。依頼として受けてるわけでもないし、万が一危険になったら撤退すればいいし、そっちの方が気は楽だろ?」


「お金が手に入らないのは気に食わないけど……いいわ、それでいきましょう」


 ジルの冒険者ランクが低いのは、単純に冒険者ランクを上げるのが間に合っていないから。

 ルカと出会ってから開花したジルの精霊術師としての実力は高く、それに加えて契約精霊のルカの力も加算される。

 そのことを加味して、独自の調査も可能だと考えてジルは行動しようとしていた。


「じゃあ、さっそく…………」


「よぉ、久しぶりだな」


「……シュウか」


 ルカも納得してやるべきことが決まった。

 そうして目的の地へ向かおうとしたところで懐かしい声を耳にする。

 ジルが振り返ると、かつて所属していたパーティのリーダーであるシュウと、そのパーティメンバーであるエレンとミリアが立っていた。


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