追放
「ジル、お前は今日限りで追放だ。このパーティから出ていってくれ」
「は……? ちょっと待ってくれよ! 急に何言ってるんだ? 何かの冗談か?」
「これが冗談で言っているように見えるか? はっきり言ってやる。肝心な時に使えない精霊術師のお前は役立たずなんだよ、ジル」
「グッ」
精霊術師のジルは俺はパーティリーダーのシュウに追放を言い渡された。
突然のことで訳が分からず、ドッキリなどを疑ってみるも、彼らの雰囲気は至って真面目でおふざけな様子はこれぽっちもない。
シュウははっきりとジルを役立たずだと言い捨てた。
「ほら、何も言えないじゃない役立たず」
「エレン……」
「今日も肝心な時に精霊の力が借りられずに棒立ちでしたもんね。さすがに擁護できません」
「ミリアまで……」
ジルは魔術師のエレン、回復術師のミリアにも冷たい視線と言葉を投げかけられる。
だが、言い返せない。
彼らの言い分も一理あると認めてしまっているからだ。
「確かに……そうだな。ちゃんとした契約精霊のいない俺は、一時的に力を貸してくれる精霊がいなければただのお荷物だ……。今日も足を引っ張ってしまったし、そう言われるのも仕方ない……か」
精霊術師であるにもかかわらず、ちゃんとした契約精霊を持たない。
それが意味するのは、ジルが安定して力を発揮できる訳ではないということ。
本来精霊術師とは、契約を結んだ精霊の力を行使して戦う者。
裏を返せば、契約精霊がおらず精霊から力を借り受けることができなければ普通の人間と何ら変わらないということだ。
そのため、契約精霊のいないジルは微精霊などと仮契約を結んで一時的に力を貸してもらい戦うというスタイルを取っていた。
しかし、精霊が姿を見せてくれないときなどは仮契約すらできずに、何もできないときもしばしば。
こうしてジルがシュウに詰められているのも、戦闘に入った途端、精霊に力を借りられない状況になり、お荷物に成り下がってしまったから。
そのためジルも強く言い返すことができないでいる。
だが――――契約精霊ができればすべて解決する。
自分の納得できる契約を結ぶために、ジルは時間が欲しかった。
「もうちょっと待ってくれ! 必ずいい精霊と契約して役に立ってみせる……っ!」
強い精霊と契約を結ぶことができれば、安定した力を発揮できる。
だから、もう少し待ってほしいと懇願するジルだったが、シュウはそれを聞いてあきれたように首を横に振った。
「もう十分待ってやっただろう。それなのにお前はいつまでも変わらないままだ。パーティとしてこれから更なる進歩を目指しているというのに、お前だけが足並みを揃えてくれない。もううんざりなんだよ」
「これでも結構我慢してやったのよ? でももう限界」
「仲間ならどれだけ迷惑かけてもいい、そうお考えなのでしょうか?」
「……っ! それでも俺はできる限り努力はしてきたつもりだ……っ!」
「だから、何だ? 努力していたらいつまでもそうやっていていい。仲間に迷惑をかけ続けてもいい。そう言いたいのか?」
「そうは言ってないだろ!」
契約精霊がいなくても微精霊などと心を交わして情報収集などもやれた。
状況に適した力を宿す精霊の力を借りられなくとも、その場その場でできる限りのことをやってきた。
しかし、ジルのやっていたことはそれだけだ。
ジルは感情的になり声を荒げて言い返すが、シュウ達の言い分は尤もだった。
「だが、お前のやっていることはそういうことだ。いつまでも足踏みをしていて、俺達に甘え続けている。お前は以前に言っていたな。いつか強力な精霊を従えて俺達の力になってくれると」
「……ああ、言った」
「そのいつかとやらはいつなんだ? 明日か? 明後日か? それとも一か月後? あるいは一年後か? もしかしたらもっと先の話かもしれないし、そんな日は訪れないかもしれない。そんな来るかどうか分からない未来が訪れるまで、お前は俺達に待てと言えるのか……っ?」
「そんないつ来るか分からないいつかを信じて、ずっと停滞させられるなんて私はごめんなの」
「……申し訳ないですが私も同じ意見です」
ジルは三人に睨まれ責められる。
何も言い返すことができずに小さく片を震わせる。
ジルが一番悔しいと思ったのは――――彼らの言い分の方が正しいと感じてしまった自分がいる事だ。
「そういうことだ。じゃ、ほれ」
「っ……とと。これは?」
「今日の分け前、つまり手切れ金ってことだな」
「……そうか。今まで世話になった」
シュウはジルに小さな手提げ袋を投げつける。
ジルの手に収まりじゃらりと音を鳴らした袋は、彼が無意識の内に握りしめる力を強めたことで不格好に歪む。
もう仲間ではなくなるからこれが最後の分け前。まさしく手切れ金である。
それを渡されたジルはもうパーティの一員ではいられないのだと悟って、これまで世話になってきたことに対する礼を述べ頭を下げた。
そうしてから顔を上げると、元仲間たちの冷ややかな視線が集まった。
ジルもこのまま侮蔑の視線を浴び続けるのは堪えたのだろう。
これ以上言葉を交わすことなく、追放を認めてシュウのパーティの元を去った。
その心の宿すのは誰からも仲間として見てもらえていないことへの寂しさと悔しさ。
そして、彼らの言い分にどこか納得してしまった自分がいるという無力感だった。
ブクマ、ポイント評価、感想、レビュー等お待ちしております!
皆様の応援をモチベにして続きを書いておりますので、少しでも面白いと思って頂けたら応援何卒よろしくお願いしますm(_ _)m




