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4頁目

12部分完結予定の4部分目。そろそろなんとなく伝わってくれるといいな〜と願いながら先を綴る甘都生です。3分の1まで来ました。あと3分の2、かなり短いですが、お読みいだけると嬉しいです!

 真っ白い部屋、天井に設置されたカーテンレール。白磁のレース生地のカーテンの隙間から窓をこっ......っそり覗けば、下一面に桜がいっぱい。暇な時にいつも眺めてる通りも、完全に春めいてる。



「うーん、今月は遅いな」



 外に出られなくなってから1年......いや、厳密に言えば外に出られないこともないんだけど......在宅とか今時あるし。でも......



「......おっ母、もう居ないもんね......他に血縁もいないし、仕方ないか」



 まあ、寂しくはない。



「ちゃんとお見舞いに来てくれる人、一人だし月一だけど...滅多に会えないし、向こうも向こうで忙しいみたいだけど...」



寂しくなんかない、



「......今月も、もう末だな...」



寂しく、なんか......



「…...ひっく、ぐすっ......うええええ、き、君が来てくれないとお、来てくれないとぉ......ひっく、うえ、ええええん......」



 もう、泣くことしかできないよ......視界全体白いだけだし、目を閉じたってほとんど変わらないし......



「うええええん、うええええ......」


(しろがね)さん、お手紙ここに置いておきますからねー......」


「ひっく、うん......?」



 ん、あれ、今誰か来た?あれ、あれ?君の声はしなかったよ?あと誰か今なんか言ったよね?わかんないや。


 あ、でも一瞬黒と肌色がぼやっと見えたし、来たんだね!



「おーい、おーい、来たんでしょ〜?来たんだよね〜?」



 ははーあ、さては隠れんぼしようって算段かな?そう思ってじっ......っくりと目を凝らしてみても、人らしき色合いのものは見つからない。


......最近、なんとなくだけど私の目が調子悪いの知っててこれか〜あ。やっぱりドライモンスターだよ、君ってやつは!


優しいけど、ちょっぴり意地悪だし......隠れるとしたら...



「んー?どこだいどこだーい?隠れたって無駄だぞー!!」



声をかけながら、ぼやけた世界を動き回って探してみる。棚の下、ベッドの下、廊下、窓の外側、



「今に元気になって......って、あれ?あれれ〜?」



棚の中、枕の下、ベッドのシーツと布団の間......


部屋中をくまなく探してみたけど、君はどこにもいない。もちろん、人の大きさ的に絶対に入らないって分かってるところも、何度も、何度も。繰り返し、繰り返し名前を呼びながら。



「ん〜......」



......う、お腹空いた...時間、どのくらい経ったんだろう...


そうこうしているうちに、肩が悲鳴を上げ始めて、お腹も何かを訴えかけるように声を上げだした。


今日の中では久しく使うことのなかった鼻が、唐突に存在感をかもし出し始める。......いい匂いだ〜!今日の晩御飯かなぁ、久しぶりにがっつりステーキとか食べたいな〜......


そんなことを考えていたら、病室のドアがコンコンコン、と誰かに叩かれて音を出して、



「......失礼します」



ガラガラ、という音と共に見慣れた顔が覗いた。



「あっ、春崎さん!!」


「璙さん、どうしました?さっきからずっと声と音が周りに......」


「え、聞こえてた!?ごめんなさい〜!!」



この人は、担当看護師の春崎 領子(はるさき れいこ)さん。優しいんだけど、何でか怖がられてる人。私にも、見舞いに来てくれるあの子にも良く接してくれる、本っ当に心優しい人なんだよ〜!!


そんな春崎さんは、私があの子を探す時に立ててた物音とか声とかを聞きつけて、来てくれたみたい。......来てくれた、って、別に呼んだわけじゃないんだけどね、いてくれるだけで嬉しいから...


そう思うと、割と真面目に謝ってるのに、何でか口角が上がっちゃう。ふふふ......



「別に構いませんよ。ところで......お手紙はもう読まれました?」


「へ?手紙?」



手紙って、なんのこと?


あまりピンと来ないで私が首を傾げてる間にも、春崎さんはテキパキと夕食の用意を進めていく。


ステーキじゃないけど、普通に美味しいご飯が目の前に並べられていって、何だかますますお腹がすいてきた。手紙について考えるのは、ご飯食べた後でもいいかな。



「はい、用意できましたよ」


「うんっ!ありがと〜!!」



目の前のベッドサイドテーブルの上には、しっかりパリパリに焼かれた、だけど脂が乗っていててかてかしてる焼き鮭と、三葉に玉ねぎに油揚げと具沢山で栄養たっぷりな味噌汁。それと、もうもうと湯気を吐き出しているあつあつの白ご飯。......美味しそう......!


それに見とれるのと並行して、横に置かれた麦茶を(よだれ)といっしょにぐいっと呷ってみる。



「にひひ、いただきます!!」



手を合わせて元気よく挨拶してから、思いっきりご飯を頬張った。




 ────────────────続──────────────────




4/12 4月30日

昼前まで泣いていたと思ったら、午後は1人でずっと騒いでいました。

他の人に害はないから拘束したりする必要は無いけれど、こちらの気分的にはいいものではないです。

あと疲れ目や肩こりの症状が現れ始めたのか、目を何回も開閉したり方を回す動作がよく見られるようになりました。

あと手紙があることに1日気づかず、まるで何も無いかのように過ごしていました。そろそろまずいのでしょうか。

最近、食欲もなくなりつつあります。2ヶ月〜半年でいなくなるのが当たり前のここですが、彼女は私のお気に入り。できるならもっといて欲しいです。まだ猶予も残されているし、大丈夫だと思いたいです。でも...

...だめですよね。いくら個人の日記だからって、こんなこと...



追記,こんな場所だからって看護師の職を捨てないようにして下さいね。ヘルパーさんや他の看護師の方と協力して、明日も頑張ること。


頑張れ、明日の私。

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