出会い!
1.プロローグ
「魔物がきたぞー!」
王国から少し離れた小さい村。警らを担う村人が村中に響き渡る声で叫び、警笛を鳴らす。
村の端にいた少年たちは、すぐさま避難所に駆け出した。必死に走って走って逃げ出した少年に、魔物はすぐに迫ってくる。獣のように四つ足で駆ける姿は犬のようだが、犬ではありえない熊を思わせる巨体に、唸り上げる魔物は獲物を逃すまいと恐ろしい形相だ。
「…はっ…はぁっ……!」
「もうすぐだ!止まるな!」
一番歳いく青年が、後方を走る少年へと叫ぶ。目指す先は身を隠す為に村のあちこちにある避難所。ここまで走って来た距離を思えば目と鼻の先にある。共に逃げてきた子ども達がパラパラと中へと入る。
「早くしろー!閉じるぞ!」
「滑りこめ!引っ張りいれる!」
避難所にいた男達は、ギリギリまで待つために周囲を警戒しつつ扉を閉める用意をしていた。石畳の重い頑丈な扉は一度閉めると中々開かない仕組みとなっている。
「……っ!……っはぁ!……走れっ!ライ止まるなっ……!」
「……クルス……!」
ライは先を走る青年クルスの背中に目を向ける。このまま走りきればクルスは逃げ切れるだろう。一方ライは、5歩程の距離でさえ詰めることは容易ではないことを脚の疲労から感じとる。