「完結」にするの忘れてた 衣玖編
「どうしたものかしらね……」
衣玖はふと一人で過ごし、自分たちの活躍をまとめた上で小説賞に応募した作品を見直した上でそうつぶやいている。
それもそうだろう、最終章をアップしたにも関わらず、そしていい感じに締めていいような話をきっち添えて、その上でその作品「完結済み」にするのを完全に忘れていたのだ。
さて、これを完結に変更すべきなのか。それを考えてのつぶやきである。
最終部を一度削除し、もう一度同じものをアップして完結に変更するか?だがそれは難しい。既に投稿した上でもあるし、小説家になろうでは削除を極力行わない方針が取られている。
ではどうするか?適当な文をくっつけて終わらせるべきか。だがそれでは審査する方の心象にも関わってしまうのではないか。ならもう一話、真の最終話を作り上げるべきか。いやそれはありえない。今はあれほどさっくりとファーストシーズン最終回、みたいな話が作れるようなストックが無い。
衣玖は考えた。しかし衣玖はIQ百億万兆京恒河沙と4649を誇る天才ではあるが、だからこそ一般的なウケを模索出来ない。天才ゆえの世間とのズレというものである。
「だめだ……もう始まっちゃう……」
衣玖は時計を見た。もう深夜アニメが始まる時間だ。いっそなんでもない話で完結済みにするべきか。だがもしかしたら自分がそれを決めるより、例えば留音のような一般人に近い感性を持った人が展開なり締め方なりを決めるべきなのではないかと考えることにした。そのほうが一般的な締め方として良い方向に持っていかれるのではないかと。別に見たいアニメがあるから考えを放棄したわけではない。
本当に完結どうしよう。衣玖は流れてくるアニメのOPに気づいてリビングのソファに飛んでいき、ノリノリで視聴しながらそのOPの作り込みを細かに観察しているうちにこの話の事を忘れてしまうのだった。
っく……ほんとに忘れてたぁ……!




