No.071〜No,075
No,071
冴天に輝く月の光りのような微笑みに
優しさを
安らぎを
愛しさを
胸に抱く
曇天の隙間から射す陽光のような微笑に
切なさを
苛立ちを
戸惑いを
胸に憶える
側にありたい
心を包む笑みの側に
側に居たい
心を辛くする笑みを変えるために
どちらも同じ人の笑み
私が惹かれているのは
どちらの笑みなんだろう
それとも
まだ見ぬ笑みを求めているのかな
「 双笑惹側 」 (笑み二つ惹かれて側に)
No,072
一つの恋に出会い
十の愛を悟る
百の願いを掲げ
千の祈りを天に
万の絶望に打たれ
千の哀しみに泣き
百の幻を超えて
十の希望を信じる
一つの命は輝く
想いは巡る
時は巡る
人は巡る
数は巡る
巡りの先に
巡りの中に
巡りの初に
人はいつも何かを見つけている
「 人巡出見 」 (人は巡り見出す)
No,073
寝むりの前の宴が
佳境に入っている
自然の宴が
命達の舞踏会
水や風の交響曲
冬が始まるまでの
光りの宴
だんだんと光りがくすんでいく
命の輝きが消えて行く
だけど
それは失われていくんじゃない
目に見えなくなって行っても
命はそこに在る
眠りの冬が過ぎて
目覚めの春が来る日まで
命達の舞踏会
水と数の交響曲
秋の宴が幕を下ろす
「 眠前宴秋 」 (眠りの前の秋の宴)
No,074
秋の柔らかな陽光が
体を温める
冬の気配を感じさせる風が
心を冷やす
体は温もりに包まれているけど
心は冷えていく
射す日の光りに
体を包むもので
体は温もる
切なさや
憂い
哀しみに
包まれた心は
日を浴びても
風を感じても
ただ冷えていく
この心を
温めるものは
どこにあるのだろう
温もる体
冷える心
心と体が
どんどん乖離していく
「 求温心光 」 (求めてる心を温もらす光りを)
No,075
野原で
冴え渡る月夜に
臨みながら
虫達の交響曲に耳を澄ます
柔らかく凪ぐ風に
心地よさを感じ
隣にいる君の
温もりを感じ
秋の一夜を楽しむ
そっと君の横顔を覗く
涼しげな月の燐光を浴びて
柔らかに微笑みを浮かべて
月を仰ぎ見てる君に
目を奪われて
ふと思う
源氏物語に出てくる朧月夜の尚侍を
今も
昔も
どれだけ目に見える景色は違ってしまっても
降り注ぐ月の光りに
美しさを感じる心に
今昔は関係ないという事を
見つけてしまった
変わったようで変わらない
連綿と受け継がれる
美への賛歌を
「 今昔変煌 」 (今も昔も変わらぬ煌き)