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モンスター  作者: 轉優夏
4/8

始めの4月。その2。

企画会議が始まりました。

「お疲れ様です〜。少し遅れてしまって申し訳ないです。」

ひょこっと顔を出した朝比奈さんが満面の笑みを私に向けた。

やっぱり……………緊張…する。

とりあえず返事はしなくては。

「お疲れ様です。大丈夫ですよ。そうは言ってもお互いに本来の仕事もあるんですから。」

「待たせちゃったかな?」

「いえ。開始時間5分前位に来ましたから、そんなに待ってないですよ。」


……………本当は15分前から来て居たけどね。


緊張の余りに仕事がこなせなくて、わざと明日に回せる案件は明日に回したのだ。

ニコニコと屈託もなく私に色々と話掛けてくる朝比奈さん。

何でこんなに緊張しているのかしら。

だって取って喰われる訳じゃ無いんだしさ。もう1回会って話もしてるんだしさ。

自分自身でも何故に身も心もカチコチになっているのか謎に思える。


「じゃあ本題に入りますか。」

私の正面に座って朝比奈さんが数枚の用紙を私に渡してくれた。

「よろしくお願いします。」

そう始まった最初の会議では「記事の方針」を決めるのだ。

私も幾つか案は練ってきたけど…資料作りはしなかったのは失敗だったかも知れない。そう思いながら渡された用紙に目を通す。

「今回の企画選抜者に知り合いが居たから、何やるか聞いてザッとまとめてみました。」

「朝比奈さんって…顔が広いですね…。」

「まぁそうは言っても総務ですからね。知らず知らずに話す間柄になっちゃうんでね。」

この資料で初めて企画選抜者が私達以外に後4組いる事、内容を知ったわ。

そう考えたら私なんて、求人部の世界や人達が全てだから…この会社って意外と広い事を今、改めて知らされた気がした。

「グルメ、旅行、相撲…。」

「後、今さっき聞いたのがファッション。」

あぁ。パーテーション外から聞こえてきたヒソヒソ声の主ね。

「結構、みんな方向性は決まってしまったんですね…。ってか私達が動いたのが遅いくらいか。」

「仕方がないよ。小森さんの求人部だけは週刊誌だからね。中々時間取れなかったし。まぁ、上層部に確認したら企画記事は被っても構わないみたい。」

でも他人と同じって


「「それじゃあ、面白くないよね。」」


突然私達の声が重なり、お互いを見つめ合う。

ふふっと朝比奈さんが笑い出した。

「僕はこんな場合、他人と違う事をしたくなるんだよね。」

まるで悪戯っ子の様に笑う姿が可愛過ぎる。

「あ。分かります。私も天邪鬼なんで。」

「だよね〜。僕も。」

「だから私が考えたのは記事の方向性は流動的にしたら面白いかなぁと。」

「うん。」

ニコニコと悪戯っ子の笑顔のままで朝比奈さんは私を一点に見つめている。

「今回創刊されるフリーペーパーのターゲットは20〜30代の独身女性。地味に20代と30代って年齢幅が狭い様に見えてそうじゃないので、一つのカテゴリーに絞ってしまうと約1年の連載はいえ飽きが早く来てしまうと思いまして。」

黙って朝比奈さんは頷いてる。

「なので少し位はミーハーな感じで今流行りな事や物を記事にする方がウケが良いと思うんですよね。女性は移り気が激しい方ですし。まぁ、間違いなくファッションや旅行と被る月も発生するでしょうが。」

「うん。」

あ。

私、すんごい一気に喋っちまった!

私、仕事モードなせいかすんごい一気に喋っちまった!!

本当、仕事スイッチ入ると一気に喋って周囲を怖がらせてしまうから朝比奈さんには隠しておきたかったけど…。ああ…泣けるわ。


「僕は小森さん案で良いと思うよう。」

「……………はい。」

「と言うか、僕もそれを考えていたんだよね。他のチームはそれぞれ自分の雑誌で扱ってる内容を記事にしようとしているんだよね。だから絶対強いし絶対敵わない訳。」

今度は私が静かに頷く。

「でも僕達は雑誌に直接関係無い総務と求人媒体とで誰よりも分が悪い。ぶっちゃけ上層部から見ても一番期待が薄いチームだと思う。」

「確かに…私が自信を持って書けると言えば、履歴書の効果的な書き方と求人募集の時期位…。」

「それも凄いけど、ほぼほぼ今回のターゲットから外れてるでしょ。」

……………そう考えたら、私達って凄い組み合わせなんだね…逆の意味で。

「だから自由に書いてしまおうって考えた訳。だから小森さんも同じ考えで良かった。」

私に向けた笑顔が再びドキドキを呼び起こされた。平常心だ。私。

「じ…じゃあ方向性は決まりで…。初回は何を取材しましょうかね?」

「そうだね。それは僕もまだ考えてなかったや!」

「え。」

まさか自分もそこまでは考えていなかったけど…。


創刊は来月、5月の最終金曜日である。


四月はも少し続きます。

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