始めの4月。その1。
フリーペーパーの企画会議の前で。
私が幼稚園の年中さんだった頃だ。
クラスで1番人気者な男の子が好きだった。
そんな男の子も私の事が好きだったみたいで、友達を作るのが余り得意では無かった私と一緒に遊んだり、お昼寝の時間は常に私の隣に並んで手を握ってくれたのだ。
しかし、そこは矢張り人気者。他の女の子達はその一部始終を毎日見ている訳で、やっぱり面白くない訳だ。
次第に女の子達から陰口を言われる様になり、少しずつ仲良くなって来た女の子達からも口を中々聞いて貰えなくなった。
まだその頃は4〜5歳の子供だ。そんな待遇を受けられたら悲しさしか無くて泣いてばかりだった。
しかし園庭の隅っこで泣いていると人気者な男の子は何時もサッと現れては「大丈夫?泣かないで。」と私の事を慰めてくれたのだ。
これがいけなかった。そう。女の子達は一部始終を見ているのだ。
翌日になると女の子達の嫌がらせから仲間外れとなり、シュンとしてると男の子が慰めて…。
これが1年。男の子が年長さんになる時に引越しをするので退園となる日まで負のループは続いたのだ。
年長さんになってからは女の子達も何事も無かった様に普通に接して来て、以降は普通の幼稚園生活を送った記憶がぼんやりとある。
ただ、私の人生で一番初めに学んだ事。
「女は怖い生き物である。」
4〜5歳で女の嫉妬を充分に肌で感じたのだ。
小さくても女は女。
女の私が言うのも何だけど、女って奴は恐ろしい生命体である。
何でこんな大昔の事を思い出したかって?
「………朝比奈君と…ねぇ…。」
パーテーション外から聞こえる声は明らかに女性で明らかに嫉妬も含んだ声だ。
「………彼と一緒に仕事出来るからって…ねぇ………。」
いや…私の一存じゃないんですが…。
クリーム色をしたパーテーションに囲まれた小さな会議スペースで意味無く縮こまる様に座る私。
今回が初めての企画会議なんだが、創刊まで日にちは余りないので今日中に記事の方向性と内容を決めてしまわないといけないのだ。
新創刊のフリーペーパー『Τown walk(仮)』
概要資料を見て朝比奈さんを待つ。
でも…緊張するなぁ…。
この間も少しだけ顔を合わせただけなのに…何て言うのかな?ドキドキした。
顔が整ってるって、本当に有利だよな。生きてく上で。その位に綺麗な人だった。
「あ。朝比奈さん、お疲れ様です。」
ビクッと自分の肩が驚く位に大きく動く。あの声はパーテーション外からの嫉妬声の1人だ。
「どうも〜お疲れ様です〜。」
「朝比奈さんもこれから会議で?」
「そうなんですよ。あ、そっちの企画記事は何にしました?」
「え〜やっぱりファッション?かなぁって。朝比奈さんは決まりました?」
「今日これから決めるの。他の人達と被っちゃ面白く無いからね〜。じゃあ小森さん、待たせてるから。」
今度は自分の姓を出されて肩がビクッと動いた。
大丈夫なのか?私。こんなんで1年持たないぞ。
いや多分1年もあれば慣れるかな?美人は3日で飽きると言うし…。
コンコン。
プラスチックを叩く乾いたノックで今日3度目の方を揺らしたのだった。
少し長引きそうなので一旦此処で区切りました。
とりあえず小森夏実目線で進めたいと思います。
時々、朝比奈大和目線も入れられれば。