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モンスター  作者: 轉優夏
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始めの3月〜小森夏実の場合〜

モンスター級の仕事魔・小森夏実の視点から。

見惚れてしまった。


透き通る白い肌、整った産毛が眩いて見える。

色素が薄い瞳の上には、長過ぎる睫毛が影を落とす。

薄い唇からは静かに落ち着いた声が発せられてる。

サラサラの髪。華奢な身体。長い手足。どれを取っても引けを取らない佇まい。

正直、見惚れてしまった。



「……………そんな訳で。」

「………はひっ!」

現実に引き戻された咄嗟の返事で噛んでしまった。

「良いかな?小森さん。」

「あ。はい。承知しました。」

いそいそと手元にある書類の束を見る振りをして相手を見る。

「何かあったら社内メールで。あ、アドレス分かりますか?」

「確かフォルダー内に一覧があった筈なんで大丈夫かと。あれなら朝比奈さんの部署に伺いますので。」

「じゃあ…お手数をおかけしますが、宜しくお願いします。」

スッと立ち上がって朝比奈さんは私に軽く会釈をされる。

そのまま立ち去る姿を見つめながら終業のチャイムが鳴り響いた。



その日の帰りは真っ直ぐドラックストアに駆け込んだ。

買物カゴを手に思いつくまま評判のノンシリコンシャンプーとトリートメントを投げ入れるとスキンケアコーナーに向かった。


恐るべしモンスター。

いや、流石モンスターと称すべきか。


朝比奈さんはモンスターと一部では呼ばれている。

何故かと言うと「モンスター級の美形」なのだ。間違いなく社内一の美形である。

男女関係無く人気もあり、取引先さんのウケも抜群。物腰柔らかくて優しい雰囲気が更に引き立たせる。

ただ。ただ。




朝比奈さん。

朝比奈 大和は産まれながらの男性である。

男性であの美形さは、女の私から見たら嫉妬しかない。



スキンケアコーナーに辿り着くとスクラブタイプのクレンジングクリームをカゴに入れる。

そのままサプリメントコーナーに向かおうとした瞬間、ふと鏡の自分と目が合った。


私は小森 夏実。

ごくごく普通の、何処にでも居る様な一般女性。

最近は仕事の締め切りが立て続けて入ってたでポニーテールの髪はよく見ると枝毛だらけ、肌はくすみまくっていて目の下はクマまで出て来やがった。


「何で…こうも違うのかなぁ…。」


思わず呟くが、当たり前だけど返事は来ない。

横目で買物カゴの中身を見る。………今更…な気が急にしてきた。

とりあえずシャンプーは無かったのと前々からクレンジングクリームは欲しかったので、その2つだけは会計を済ませて店外へと出る。

もうすぐ来年度に切り替わる夜風はまだまだ冷たかった。


来年度。来月4月から1年間、朝比奈さんとは仕事上のパートナーになるのだ。

内容はフリーペーパー内の小さな記事を任されるのだけど…記事自体は自由。他にももう何組か私達と同様にランダムで組まされて活動する事になっている。

その中でも年間を通して評価が高かった組は昇級が約束される…とか何とかで。

元々、通常業務である求人広告の仕事をしながらフリーペーパーの記事を作る。

しかも相手はモンスター・朝比奈さん!キツイの言葉しか出てこないわ…。

全く、ウチの会社は一体何を考えてるやら…。


まぁ…先ずは、朝比奈さん迄とは言わないけど、連休明けの艶やかな肌位には戻しておかなきゃ…。

「慌ただしい1年間になりそうだわ。」

1人賑やかな街並みを歩きながら、明日以降の予定を考えていたのだ。

これは数年前位に何時か書けたらと思って、冒頭は決めていたけど、以降は書かなかったヤツです。

朝比奈のモデルが居まして、昔働いて居た職場に居た方。本当に可愛くて綺麗な顔立ちの殿方でしたが、他部署だったので余り関わる事も無くそのまんまだったなぁ…と、少し思い出しました。

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