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アリア  作者: 桜庭かなめ
特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
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エピローグ『おみやげ』

 自宅に帰ると、まずはコーヒーや紅茶を飲んでゆっくりすることに。僕と美来が隣同士で座って、テーブルを挟んで有紗さんが僕等と向かい合う形で座っている。

 家に帰っても安心感よりも、どこか旅行の延長線上にいるような気がするのは、ここに引っ越してから、そこまで日が経っていないからなのだろうか。それとも、有紗さんと3人で帰ってきたからなのか。ただ、それでも居心地がいいというのは確かだった。


「引越しの作業が終わって、物が増えても新しい住まいは十分に広いね」

「ええ。あのときは手伝っていただきありがとうございました」


 有紗さんには、11日の山の日に引越し作業を手伝ってもらった。そのときはまだ途中だったこともあって、今よりも物が少なかったな。


「これなら、あたしが泊まっても大丈夫そうね。前のアパートのような広さもあたしは好きだったけれどね」

「私も好きでした」


 以前住んでいたところは、手を伸ばせば触れられる広さだったからな。一緒にいるという意味では良かったのかな。


「こういうところに住めるのも、大企業の社員になれたからっていうのもありそうね。隣で見ていたけど、智也君……頑張っていたものね」

「……色々と事情はあったようですが、悪いこともあればいいこともあるんだなって。何せ、美来とこうして結婚前提の交際ができて、同棲しているんですから」

「智也さん……」


 美来、嬉しいからなのか僕に腕を絡ませてくる。


「今の2人を見ていると、悔しさなんてもうこれっぽっちもないよ。あっ、そうだ……智也君から借りていたBlu-rayを返すわ。面白かったよ、ありがとう」

「いえいえ」


 どうやら、僕が貸したBlu-rayで有紗さんも楽しい夏休みを過ごせたようだ。旅行中、美来とも話をしていたようだし。


「美来ちゃんからはちょくちょく話は聞いているけど、そろそろ旅行の思い出を聞かせてくれるかな」

「分かりました!」

「……有紗さんに話していいかどうか考えながら話していこうね」

「もちろんです」


 美来が中心となって、この3日間の旅行について有紗さんに話した。

 しかし、僕が注意したにも関わらず、美来はほぼ全てのことを話す。もちろん、言葉を選んでいたのは分かったけど。


「……2人にとって、凄く楽しい旅行だったのは分かった」


 美来が話し終わってから、有紗さんが最初に発したのはそんな感想だった。そのときの有紗さんの顔はとても赤くなっていて。


「海やプールで遊んで、観光して、美味しい物を食べて、夜は花火を見て、一緒にお風呂に入って、たくさん……色々なことをして。羨ましいわね」

「ふふっ」

「でも、一番気になったのは縁結びの幽霊さんの話ね。2人から泊まるホテルの名前を聞いて、スマホで調べたら、幸運の縁結びの幽霊さんに会えるかもって書いてあるサイトがあったし。浴衣姿の女の子ってところがいいね」


 それだけを聞くといい印象だけれど、実際はのぞき見満載で、僕達なんて露天風呂も一緒に入ったからなぁ。もちろん、水代さんが悪い幽霊じゃないのは分かっているけど。


「本人曰く、自ら名乗っているのではなく、数多くのカップルから面白そうなカップルの部屋に行くのが趣味らしいですよ。それで、統計的に水代さんに出会えたカップルは結ばれる可能性が高いとのことです」


 今夜もどこかのカップルの部屋に入り込むんじゃないだろうか。


「あっ、そうだ。有紗さん。僕達からのお土産です」


 僕からホテルの売店で買った羽崎茶を使ったゴーフレットと、鍾乳洞のお土産屋さんで買ったゆるキャラのぬいぐるみを渡す。


「うわあっ、ありがとう! かわいい……」


 有紗さんは嬉しそうなゆるキャラのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。やっぱり抱きしめたか……と、僕は美来と視線を合わせて小さく頷き合った。

 美来はぬいぐるみを抱きしめている有紗さんをさりげなくスマートフォンで撮影した。あとで送ってもらおう。


「もふもふすると気持ちいいなぁ。何だか幸せな気分だよ。しばらくの間はこの子を抱きしめて寝ることにするね!」


 そう言うと、有紗さんはお土産をバッグの中に閉まった。


「う~ん……涼しい部屋でゆっくりしたから大分疲れが取れた」


 有紗さんは両腕を上げてストレッチ。そのことで、有紗さんの腋が丸見えなんですけど。白くて綺麗だな。


「そういえば、智也君……腋フェチだったんだね」

「けほっ、けほっ」


 危うくコーヒーを吹き出すところだったよ。

 急に何を言い出すかと思えば……腋フェチのことか。さっきの話の中では美来は言っていなかったのに。きっと、旅行中に美来が伝えたんだな。


「……この旅行中に美来が教えてくれたんですよ。今までそんな自覚なかったですが」

「へえ……」


 なるほど、だから有紗さん……ノースリーブのワイシャツを着ているんだ。僕に自分の腋を見せたいから。


「じゃあ、私の腋も触ってみる?」

「え、ええと……」

「じゃあ、私の腋も舐めてみる?」

「それはさすがにやりません」


 そんなことをしたら美来にどんな処罰を下されるか分からないから。チラッ、と見ると有紗さんの腋を舐めないと言ったからなのか嬉しそうだ。


「コーヒーを飲んでいるときにそんなことを言われたら、ビックリしちゃいますよね。お仕置きが必要じゃありませんか?」


 美来ったら、ニヤリとしながらそんなことを言って。

 昨日、鍾乳洞に行くとき、美来にお仕置きとして腋をくすぐったんだっけ。というか、有紗さんが腋フェチであること言った遠因は美来なんだけどね。


「えっ、お仕置きって何のこと? もしかして、昨日……私に謝る前に智也君からお仕置きでも受けたの?」

「それとは別のときですけどね」

「へえ……ねえ、智也君。先輩にお仕置きなんてできないよね?」

「そういうときに先輩後輩言うのは止めましょうよ。というか、厳密に言えば会社は違うんで元先輩ですし……」


 しょうがない。腋を触ってみるかという有紗さんにも、お仕置きが必要だという美来の気持ちに応えるにはくすぐりというお仕置きをした方がいいな。

 僕はゆっくりと椅子から立ち上がって有紗さんの横に立つ。


「えっ、な、なに? 智也君……」

「……有紗さんの腋をもっと近くで見たいと思いまして」

「もう。美来ちゃんの前で。しょうがないなぁ……って、きゃっ!」


 有紗さんが腋を見せたとき、僕は素早くくすぐり始める。


「あっ、ともや、くん……」

「さっきはビックリしたんですからね。そのお仕置きですよ」

「ご、ごめんな……さい。んっ……」


 可愛らしい喘ぎ声が聞こえたってことは、くすぐったいのを越えて何か感じちゃっているのかな? 顔も赤くなり始め、有紗さんの腋から伝わる温もりも段々と強くなる。


「車の中での私、こんな感じだったんですかね……」

「うん、そうだったよ」

「……あんっ、はうんっ、ううっ……」


 くすぐり続けたからか、有紗さんは顔を真っ赤にしていた。さすがにこれ以上するのは可哀想なのでこれで止める。


「やっと終わった……」


 そう言うと、有紗さんはテーブルの上に突っ伏してぐったり。


「智也君ってこんなにSっ気のある人だったっけ?」

「有紗さんもご存知かもしれませんが、智也さんは酔っ払うと、キスとかをするときに意地悪になるんですよ。あと、普段だったら言わないようなことも言います。ギャップ萌え注意ですね」

「……普段は優しいもんね。その反動かもしれないね。理由は知らないけど、美来ちゃんにお仕置きしたり、あたしをからかったことに叱ったり……智也君、美来ちゃんの保護者みたいな役目もきちんと果たしているのね」

「美来はまだ高校生ですから、恋人としてだけでなく、すぐ近くにいる大人としても接しているつもりです」


 僕はそんな心構えだけど、実際にそうできているかは分からない。美来も基本はしっかりしているので、彼女に助けられていることも多い。


「こうしてしっかりしているのを知ると、うちを退職させられたことが本当惜しいわね。現場のチームも智也君がいなくなったことに嘆いていたし。お客さん側という立場から同じ案件に担当してくれているから今はもう落ち着いたけど」

「そう言ってくださるのは有り難いですね」


 退職処分を受けず、今も有紗さんの横で仕事をしていたら今頃どうなっていたんだろうな。仕事に復帰して、それまでと変わらない日々を過ごしていたのかな。


「あぁ、もう夏休みも2日しかないのかぁ」

「普段なら、仕事も終わって1週間のうちで一番嬉しい時間ですけどね」

「金曜日の夕方だもんね。まあ、そう思うのも長期休暇ならではか。でも、終わりがあるからこそ、こういう時間が映えるのかもね」


 美来と同じことを言っているなぁ。この2人、最初の頃は結構違うタイプだと思っていたんだけれど、一緒に過ごしていく中で考え方とか似ている部分が意外とあるということが分かった。


「ふふっ、では残りの夏休みは是非、ここで楽しんでください。有紗さん」

「お言葉に甘えるよ、美来ちゃん。2人が旅行に行ったことが羨ましくて、また3人で週末を一緒に過ごしたいと思っていたから、美来ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しい」

「私も有紗さんと3人で一緒に週末を過ごしたいと思っていましたよ」

「……そう」


 有紗さん、嬉しそうに笑っているな。週末に一緒に過ごしたいという気持ちが美来も同じだったのが嬉しいのだろう。


「そういえば、美来ちゃん……メイド服は引っ越したから封印? あっ、さっき……ホテルの部屋で着たって言っていたっけ?」

「ええ。引越しを機に母が夏仕様のメイド服をプレゼントしてくれたのですが、メイド服を着た状態で智也さんとイチャイチャしたので、それで汚れちゃって……」

「……斜め上の理由だね」


 そう言うと、有紗さんは恥ずかしそうな表情をしながら、僕のことをチラチラと見てくる。まさか、自分だったらどうなんだろうとか考えているのかな?


「そのメイド服は明日の夜くらいにはお披露目できると思うのでお楽しみに。では……食事をするにもいい時間ですから、手軽なパスタを作りますね。智也さんと有紗さんはゆっくりしていてください」


 そう言うと、美来はキッチンの方へと向かった。


「旅行に行く前以上に、美来ちゃんの笑顔が可愛くなっているね」

「……僕もそう思っていました」


 色々とあったけど、とても楽しい3日間の旅行だった。


「あの笑顔を更に引き出すために、美来ちゃんから智也君とのお土産話……ううん、惚気話をたくさん聞き出さないと。ふふっ、凄く楽しみになってきた」


 そう言って笑っている有紗さんの笑顔も日に日に可愛くなっていると思うけど。

 もしかしたら、この旅行での何よりのお土産は、美来と有紗さんの楽しそうな笑顔なのかもしれない。そんなことを思い、2人の笑顔を見ながらコーヒーを飲むのであった。




特別編-ラブラブ!サンシャイン!!- おわり

これで、特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-は終わりです。この特別編を最後まで読んでいただきありがとうございました。


次の話からは特別編-ホームでシック-となります。この特別編は全3話となっており、特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-の数日後の話となります。特別編-ホームでシック-も楽しんでくださると嬉しく思います。

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