第14話『ドッキドッキング』
お互いに髪と体を洗い終えたので、僕は美来と一緒に湯船に浸かることに。湯船もとても広く、美来と2人で入ってもゆったりできている。
ただ、湯船に入ってから程なくして、美来は僕のことを抱きしめてくる。
「気持ちいいですね、智也さん」
「そうだね」
もちろん、湯加減がちょうどいいのもあるけど、一番は……美来のことを抱きしめているからだと思う。美来の髪からシャンプーの甘い匂いがして、彼女の柔らかな体が温かいから段々と眠くなってくるなぁ。
「温かいお湯に浸かることができて、智也さんと抱きしめ合って……夢のような時間を過ごしている感じがします」
「夢のようなっていうか、僕はこれが夢なんじゃないかって思ってるよ」
「……ふふっ、じゃあ……」
美来はそっと僕にキスしてくる。
「……目覚めのキスしましたけど、これで今が夢じゃないって分かりましたか?」
「……うん」
美来の唇の柔らかさがはっきりと伝わってきた。やっぱり、これは夢じゃなくて現実……実際に体験していることなんだな。
「ねえ、美来。このまま湯船に浸かっていたら、色々な意味でのぼせちゃいそうだからそろそろお風呂から出ようか」
「そうですね」
僕達は一緒に浴室から出る。
すると、このホテルにはバスローブがあるようで、美来の要望で一緒に着ることに。
「何だか、高級なホテルに来た感じがしますね」
「確かに。バスローブ姿でグラスに入ったワインなんか飲んだら、芸能人になった気分になれそうかな」
「酒入りコーヒーはありますけど」
「……残りはまた明日呑むよ」
「分かりました。じゃあ、イチャイチャしちゃいましょうか」
「そうだね」
僕と美来はベッドの上で思う存分にイチャイチャした。
部屋で色々としたいと行きの車の中で言っていたこともあってか、美来はとっても幸せそうな表情を浮かべていた。そのときの笑顔はもちろんのこと、声も、体の反応もとても可愛らしかった。
「……たくさんイチャイチャしちゃいましたね」
「そうだね。旅先でお酒も呑んだからか、いつも以上に気持ち良かったな」
「……私も気持ち良かったです。だからか、たまに大きな声も出しちゃって」
ふふっ、と美来ははにかみながら僕の腕を抱きしめる。
「ただ、いつもと違う場所でしましたから、忘れられない思い出の一つになりました」
「僕も……そうなったかな」
「それにしても、智也さんってやっぱり酔うと適度に意地悪になりますよね。いつも以上にイチャイチャしてくれて」
「……美来がどんどん可愛くなっていくからだよ。だから、もっと可愛い姿を見たくなったんだ」
「……もう」
可愛いとイチャイチャ度合いが増していくんだ。
「ふああっ……何だか眠くなってきちゃいました」
「そっか。じゃあ、今夜のアニメはいいかな」
「……はい。眠りたいときに寝た方がいいでしょうね」
「そうだね」
明日は観光をしたり、プールで遊んだりする予定なので、今夜はぐっすりと眠った方がいいかな。
「では、智也さん……おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
美来は僕にキスすると、腕枕をした状態でぐっすりと眠り始めた。今日は海でたくさん遊んだし、ついさっきまで僕と色々としていたから、疲れが溜まっていたんだな。
「僕も寝ようかな」
明日は観光をするのに、寝不足の状態で運転をしたらまずいし。何よりも眠かったら、楽しい旅行が存分に楽しめなくなる。
「まったく、恋人とたくさんイチャイチャしちゃって」
「いやぁ、美来がとても可愛かったんで……って、えっ」
女性に話しかけられたので、僕はそう答えたけど……美来は僕の横で今もぐっすりと眠っている。
というか、今の女性の声……美来の声じゃなかった。それに、美来のいる方とは逆側から声が聞こえたし。
恐る恐る、声の主の方に顔を向けると、
「うわああっ!」
ベッドのすぐ側に、浴衣姿の黒髪の女の子が笑みを浮かべながら立っていたのであった。




