降り出した雨
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村の外れで、幼馴染のキノと祭りの準備をしていた。
準備といってもまだ5歳の私たちにできることは限られいて、今は薪用の小枝を集めているところだ。
今日の祭りは新緑を祝うもので、毎年花が咲きほころぶ時期になると行われる村の恒例行事だ。
「キノ、枝はこのくらいで足りるかな?」
「うわ、ユーリ早いな。どんだけ楽しみにしてんだよ」
新緑の祭りはこの為に村の大人たちによって大々的に狩りが行われるため、美味しいものがお腹いっぱい食べられるので嫌いな子供はいないと思う。
「早く帰ろう!」
「急かすなって〜」
そう言われてもはやる気持ちは収まらずグイグイと腕を引っ張る。
村は祭りの準備で活気付き、昼間からお酒を飲んで酔っ払っているおじさんもいた。みんなに挨拶をしながら村長の元へ急ぐ。
__ポツリ。
うげ、と思って空を見上げた。
さっきまで見事だった青空が、灰色の雲に追い出されるかのようににじり寄られていた。
「うそぉ〜さっきまであんなにいいお天気だったのに」
そうこぼさずにはいられなかった。だって去年もこのお祭りの日に雨が降ったのだ。
そのせいで楽しみにしていた踊りができなかった。
昔から私が楽しみにしている時には決まって雨が降るのだ。
くそう、キノから手を離し空を睨む。いつだってそうだ。遠足の日だって、運動会の日だって、旅行の時だって決まって。
「旅行…?」
____ズキン
何かを思い出す、そう思った瞬間に、頭に激痛が走った。
「うぁ、」
思わず立っていられなくり、足元に集めた枝が転がる音と身体が崩れ落ちる感覚がした。
「おい、ユーリ!おい!」
身体を揺すられたけれど、私の頭の中は別のことが支配していた。
そうだ。お祭りの日も、遠足だって運動会だって、旅行の時だって。いつも雨だったじゃない。私が楽しみにしていることはいつだって。
「雨、だった」
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強くなっていく雨音を聴きながら、視界が暗くなっていくのを感じた。
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